麒麟児~人と狩り行こうぜ~
あれから月日は流れ、アンも大きくなっていた。
剣の腕もクロノを驚かせるほどになり、今日は2人で狩りに出掛けるのであった。
楽しい時間はたつのが早い。
誰かが言っていた言葉、時間があまり関係のない俺はその意味があまり理解出来なかった。
しかし、今はよく分かる。
教えれば教えるほど覚えるアンを見て、どんどん大人になっていくアンを見て、時間の存在を認識していた。
あの卒業試験を終えてから6年がたっていた。
「それじゃ、いくよ」
今日もいつもの日課の打ち合いから始める。
このところ、防御の上から崩されそうになることもしばしば出てきた。
「四の太刀 顎門」
木刀と『生命の盾』を使い防ぐ。
が、すぐさま打ち込んでくる。
「五の太刀 雪崩」
上段から振り下ろされる5つの刃。
剣だけを5つに実分身した5連擊。
飛び退いて避ける。
アンの持つ剣が淡く光を帯びていた。
最近、剣が本来の力を取り戻してきている。
さすがに本来の力を取り戻しつつある神装武器をまともに防御するには部が悪い。
「ここまでにしようか」
一旦間合いをとったところで俺が言うと、アンはゆっくりと武器をしまった。
「今日も一本取れなかった」
アンが残念そうに言う。
「いや、実剣で一本取られたら死ぬよ」
「お師匠さまは死ぬの?」
不思議そうに言う。
「俺をなんだと思ってるんだよ」
後ろ頭をかきながらアンは笑った。
ま、死なないけど痛いからなぁ、黙ってよう。
「ほら、今日の晩飯狩りに行くぞ」
「は~い」
アンと共に、森の奥へと向かう。
「今日は何狩るの?」
「そうだな、グレートグリズリーかな」
「おお、熊肉だね」
「そうだな、熊肉のシチューがいいか」
「よ~し、頑張るか」
二人で話しながら奥に進んでいると、大木が不自然に倒れているところがあった。
「近いのかな?」
アンがゆっくりと剣を抜く。
近くで大きな咆哮が聞こえた。
「それじゃ、アンに任せるよ」
俺は近くに生えているキノコや山菜を取り始める。
「了解」
アンが咆哮の聞こえた方に向かうのを後ろから見守る。
前方に巨大な影。
推定で5mほどかな。
アンの気配に気づいたのか、その影はゆっくりとこちらを向いた。
お目当ての相手、グレートグリズリーこの周辺の森では最強の部類に入るモンスターだ。
あの大きさなら、相当戦ってきているだろう。
『鑑定』を使う。
レベル的には、アンより上。
体の約半分くらいの大きな腕が特徴で、鋭い爪もある。
そして、なにより所持しているスキルが『凶暴化』で、戦闘になると敵、味方関係なしに暴れる。
その性でこの周辺の森に住むモンスターは近づこうとしなかった。
グレートグリズリーがもう一度大きく吠える。
アンを敵と認識しスキルを発動させた。
目の色が赤に変わる。
巨大な腕と鋭い爪がアンに振り下ろされた。
しかし、アンは最小限の動きでこれを避けていた。
『凶暴化』の性で理性もなく法則性もない闇雲だが的確に狙ってくる攻撃をアンが避けれるのは、俺が3年前『コピー』したスキルを上手く使えているということだ。
3年前、初めて1人で狩りをする時に俺はアンに『危険察知』のスキルをコピーした。
『危険察知』は自らの危険を何となくだが分かるというスキル。
『カリスマ』で悪いものを引き付けたとしても、このスキルがあればもう引っ掛かることはないだろうと思い『コピー』したのだ。
アンが幾度かの攻撃を避けた後、両手をだらんと下げたまま、相手の懐に入った。
「八の太刀 八艘」
その言葉と同時にアンがその場から消え、次に相手の周りに5人のアンが各々剣を構えた状態で現れた。
そして、次々と剣で攻撃しては消え、最後の1人が斬り抜いた後、グレートグリズリーはゆっくりとその巨体を横たえるのだった。
だいぶとびとびですが、アンを助けてから8年が立ちました。
そろそろこの世界ではアンは一人前の大人になります。
次回、2人は町に出る事になりますのでお楽しみに。




