麒麟児~修行三昧~
アンが意識を取り戻して、ほぼ2年。
今日はアンにとって大事な日となる。
クロノはその準備に取りかかっていた。
「よし、このぐらいにしとくか」
「はい、お師匠さま」
先ほどまで剣の稽古をつけていたアンは木刀を下ろす。
「やっぱり、お師匠さまはやめないか?」
「なぜ?」
「なんか痒い」
「お師匠さまか父上か二択だよ」
「お師匠さまでいいです」
俺の負け宣言にアンはニコニコしながら、小屋に戻った。
アンが気がついてからもうすぐ2年。
この間、俺はアンに剣の修行や、学問、一般常識を教えていた。
さすがは『麒麟児』教えたことをスポンジのように覚え、とても教えがいがある。
剣については、基礎しか教えていない。
技を教えても良かったのだが、自分で編み出す楽しみをアンにも味わってもらいたかった。
「お師匠さま、ご飯用意しとくよ」
「ああ、頼む、ちょっと用事してから行くから、先に食べといてくれ」
「ん、待っとく」
小屋から聞こえる元気な声に答えながら、俺はある作業にかかった。
アンの基礎の修行もだいたい終わりが見えてきた。
これからは実践を交えた修行をしなくてはならない。
なら、きちんとした武器がいるだろうと、数日前からアンを助ける時に渡された剣を調べていた。
剣を『鑑定』したところ、ものすごいレアなアイテムだったのでどうするか迷ったが、やっと『打ち直し』の目処がたった。
アイテムの名前は〈天叢雲剣〉
剣の形をしているが、剣ではなく神事に使われる道具だった。
ただ、昔は神が使っていた剣らしく、この剣の本当の力を引き出す者がいなかったせいか、道具になったみたいだ。
「さて」
俺は『アイテムボックス』から道具を取り出す。
〈神鉄〉〈竜の鱗〉〈神野草〉〈竜の生き血〉
これらのアイテムと、〈天叢雲剣〉を使って『打ち直し』をする。
あれから2年だいぶ魔力も回復したから失敗はしないと思うのだが、失敗したら目も当てられないなぁ。
失敗すると確率でアイテムが消失する。
預かった物、それもレアなアイテムがなくなると目も当てられないが、
「『激運』もあるからいけるはず」
俺は『打ち直し』を発動する。
ここからは時間との戦いだ、集中して剣としてのイメージを作る。
アイテムにかざした手のひらの下で、全てのアイテムが1つになり渦を巻き始めた。
かれこれ1時間たつがまだ完成しない。
「何か足りなかったかなぁ」
「お師匠さま」
突然後ろから声をかけられる。
「あ」
集中が切れ、渦が崩れる。
「やば」
「え?」
俺の声に慌ててアンも手を重ねてきた。
「うわぁ」「きゃ」
その瞬間、渦が強い光を放ち一本の剣が現れた。
「これって」
アンの不思議そうな顔に俺は、
「本当はサプライズにするつもりだったんだけどな、これから実践もやるからその為の武器だ」
「ええ、本当に?やった~」
アンは嬉しそうに跳び跳ねた。
こういうところはまだ年相応だな。
「ま、少し『鑑定』してからだな、ほら、飯にするぞ」
「はい、お師匠さま」
俺は出来た剣を『アイテムボックス』に入れ、アンと小屋に入った。
昼御飯の後の昼寝休憩で、アンが自室に戻った後、外でさっき『打ち直し』た武器を取り出した。
『鑑定』を使う。
「なるほどね、神が使っていた武器だからか」
『鑑定』した剣には本来俺が『打ち直し』た際には付かない属性が付いていた。
『神性』その名の通り神が使う武器に付く属性だ。
この属性が付く武器はかなり威力が高いが、本当の力を出すためには使う者も『神性』を持たなくてはならない。
(アンが介入してこの属性がついたなら、アンは『神性』を持ってるということか?
でも、初めてステータスを確認した時には見なかったけど)
属性は生まれ持ったもので特殊なスキルになる。
さすがの『コピー』でもこれだけは写しとる事はできない。
「ま、よく似た事はできるんだけど」
『神力』を発動、剣が淡く光ると同時に俺の魔力が刃を覆った。
「なるほどね、魔力で切れ味を上げれるわけだ」
しかし、名前も変わるとはこのアイテムは本来の姿に戻らないように封印されてたのかもな。
「お師匠さま」
「お、おはよう」
「その剣、大丈夫だった?」
俺が手に持つ剣を覗きこむアン。
「ああ、大丈夫だったよ。
これはアンを助けた時に、一緒に拾った物だから、アンが使うのがいいと思う」
そう言ってアンに剣を渡す。
この剣がアンにとってどういう物か分からないが、アンと同じ場所から来たものだ、アンが使うのが1番いいだろう。
それに、今のアンは『神性』を持っていない、この剣の本来の力は発揮されないがちょうどいいだろう。
「草薙剣って言うんだ、その剣」
「草薙剣、なんかしっくりくる」
「そうか、アンに縁がある物だからだろうな」
「うん」
アンは剣を懐かしそうに見ていた。
「アン、その剣は基礎修行の卒業祝いに渡そうと思ってたんだ。
だから、今から卒業試験するぞ」
アンはにこっと笑うと元気に返事した。
「それじゃ、今から卒業試験を行う。
卒業試験の内容は覚えてるか?」
「自分で4つの技を使えるようにする」
「そうだ、自分で考えてもいいし、渡した本を参考にしてもいい。
ま、要するに自分で技を覚えるって事だな」
うなずくアン。
「じゃ、相手は俺にしてもらうか」
そう言って俺は自分の体に手を当て『コピー』を使った。
俺の横に俺が現れる。
自分の魔力を使って自分を『コピー』した。
ただ劣化の『コピー』なので、喋れないし強さも強くはない。
防御力だけは強くしてるけどね。
「それじゃ、始めようか」
アンとコピーが向かい合う。
アンは左手をコピーに向け半身になり、剣先をコピーに向けたまま肩に担ぐように構えた。
「壱の太刀 一角」
アンが勢いよく剣を突き出す。
そして、離れて立っていたコピーは崩れ落ち消え去った。
「あ」
思ってた以上の威力だったのか、やった本人が驚いている。
大丈夫だぞアン、心配そうに見なくても。
すぐさま新しいコピーが、アンの前に立った。
剣先に力を込めて、突くと同時に打ち出す技みたいだな。
コピーに持たせていた盾を見ると本物の剣を使うことで力が集中したのか、剣の幅くらいの鋭い穴が開いてる。
「じゃ、次だな」
「えっと、お師匠さま、やっぱりお師匠さまだとやりづらいかなぁ」
「ああ、大丈夫、さっきみたいにはならないようにするから、本気でやってみ」
いまいち信じられないような顔をしながらも、アンは正眼に構えコピーに近づいた。
あと一歩入れば打ち込める。
「弐の太刀 牙」
ガガン!
踏み込むと同時にほとんど1つの打ち込み音、その後すぐにアンはコピーとの距離を取り正眼に構えた。
技で倒せなかった時に距離を取り次に備える、きちんと基本を覚えている。
「今度は倒れなかっただろ」
「うん、さすがお師匠さま」
「でも、少し手加減してたな」
アンはばれたという顔でチロっと舌をだす。
さっきの技は両方の肩にほぼ同時に袈裟斬りを放つ技か、ほぼ同時になってるのがよくできてる。
「次いこうか」
無言でうなずくアン。
次も間合いの一歩外、正眼から、
「参の太刀 爪」
そして、間合いから出て正眼に。
今度もほぼ同時に右上からの袈裟斬り。
先ほどと違うのは3回同時に切っている。
「最後」
「いきます」
最後もやはり間合いの一歩外から正眼。
「四の太刀 顎門」
今度は4つか、自分が育てた子どもの成長に嬉しさがわく。
両肩への袈裟斬りと両脇への下から上への斬上げ。
それをほぼ同時に斬り付ける、まるで何かに噛みつかれるような感じに見える。
「合格」
俺の満面の笑みに、アンは満面の笑みで返した。
「あと、いくつ技があるんだ?」
「あと、四つかな。でも、まだ未完成」
「そっか、ま、さっきの4つがあれば今は敵無しだろう、卒業おめでとう、その剣はアンの物だ」
「ありがとう、お師匠さま」
「よし、今夜は豪勢にいくか」
「やった~」
俺は『コピー』を解除して魔力を戻した後、アンと共に小屋に戻った。
今日は腕によりをかけて、料理を作ってやらないとな。
今回は長々と技や武器説明を書いてますので、途中で飽きてしまわれたらすいません。
これからの物語で、アンが使う技になりますのでどんな技?ってなった時に、調べるように見ていただければありがたいです。
では、次のお話で。




