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転移無双  作者: 天野 空
第二十章 銀麗姫と灰色狼
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銀姫麗と灰色狼

銀姫麗が吸血王の部屋にたどり着く少し前。

グレーとクロノは先に吸血王の城に突入しようとしていた。

「ここが吸血王ヴァイスの城?」

「そうだな」

俺は見上げるように目の前の城を見る。

俺達は今、この城の裏側に来ていた。

「表から行かないのか?」

「ああ、正面はもう1人が使うだろうから、その騒ぎの間に俺達は最上階に行く」

「その1人って?」

「もちろん、グレーの探している相手だ」

「だったら、助けに行かないと」

俺は正面に回ろうとした。

「止めとけ。

それは銀姫麗の邪魔になるたけだよ」

クロノは肩を軽く上げてから、城の壁に手を当てた。

そして、キンっと高い音がなった後、ゆっくりと壁をこちらに引っ張る。

壁は丸くくり貫かれていた。

「な、何を」

俺は驚く。

「ん?

別に『斬鉄剣』のスキルを使っただけだけど?」

「ス、スキル?」

「ああ、ほら、こんな事で驚いてないで行くぞ」

クロノは開けた穴から城へと入る。

「わ、分かった」

俺もその後に続いて中へと入った。

中は思っていたより静かだった。

「本当にここが四天王の1人がいる城?

あまりにも敵がいない」

「そりゃそうだろう。

魔族の天敵である白銀を生み出す姫がここに来たんだ。

そっちに躍起になってるさ。

ほら、神狼になって一気に最上階に行くぞ」

「あ、ああ」

俺はクロノに言われて狼へと変わる。

クロノを背に乗せ、俺は最上階へと向かった。

途中出会った魔族は難なく倒し、俺達は最上階の部屋の前へ来ていた。

「ここか?」

俺は『神狼化』を解いてクロノに聞く。

「ああ、この奥からさっきまでとは明らかに違う力を感じる」

俺はクロノに頷き、中へと入った。


「ほう、予想とは違う登場人物だな」

広間の奥で豪華な椅子に座った男性がこちらを見ながら笑っていた。

「お前がヴァイスか?」

「いかにも」

ゆっくりとヴァイスは立ち上がる。

「それで、無謀な勇者気取りはここに何しに来た?

これから私は大事な客を迎えなくてはいけないのだが?」

(白銀姫の事か?)

「ああ、それはいいや。

俺達がやるから」

クロノがそう言って俺の横に立った。

「?

何を言っている?

ここで死んでいくお前達ができるわけないだろう」

「そうかな!」

完全にバカにした態度のヴァイスにクロノが、巨大な氷の塊を生み出し放った。

氷塊は凄い音をたてて、ヴァイスとその背後の壁をぶち抜く。

しかし

「で?」

ヴァイスは何事もなかったように立っていた。

「さすが、魔族上位クラスが持つスキル『白銀以外無効』だな」

クロノはじっとヴァイスを視て言った。

「ほう、私のスキルを視たのか?」

「ま、そういう力もあるので」

ヴァイスの問いにクロノは軽く肩を上げて答えた。

「どうするんだ?」

俺はクロノに聞く。

白銀以外の攻撃が効かないとなると、こちらにはあの吸血王にダメージを与える方法がない。

「ま、なるようになるさ」

そう言ってクロノは笑う。

「どうした?

そっちの攻撃はそれで終わりか?」

「ま、そう焦んなよ」

クロノのがそう答えた瞬間、姿が消えた。

「え?」

「なに?」

驚く俺とヴァイス。

そして、俺はヴァイスの後ろを凝視した。

それに気づき振り返るヴァイス。

トン

いつの間にか背後に回ったクロノがヴァイスの額に手を当てた。

「ば、ばかにしているのか!」

すごい怒声をあげて、ヴァイスがクロノに向かって腕を薙ぐ。

しかし、そこにはもうクロノの姿はない。

「ばかにはしてないさ」

「え?」

いつの間にか俺の横へと戻ってきているクロノ。

「く、変なスキルを使いよって」

ヴァイスは忌々しくクロノを睨む。

確かにクロノは俺も知らないスキルをたくさん持っている。

「?

何を言ってる?

少し速く動いてみただけだよ」

不思議そうな顔でクロノは答えた。

「く、死ねぇ!」

ヴァイスは怒り狂った顔で、こちらに真っ黒な弾を放つ。

「!!」

俺はその攻撃に嫌な感じがして咄嗟に避けた。

しかし、クロノは動かない。

「クロノ!」

クロノはこちらに笑顔を向けたまま、その黒弾に当たった。

黒弾はクロノに当たると同時に大きく膨れ上がり、クロノの全身を包み込み、そして消えた。

「な、に?」

「へぇ、このスキルなかなかすごいじゃないか」

そこには何もなかったようにクロノが立っている。

「な、なぜ、魔法は当たったはずだぞ」

「ああ、空間を喰らう魔法だな。

当たった。

だけど、『白銀以外無効』のスキルには効かなかったみまいだな」

「な、なんだと!

なぜ、こいつが…」

驚くヴァイス。

俺も驚いている。

(なぜ、魔族のそれも上位クラスしか持ってないはずのスキルをクロノが持ってるんだ?)

「ま、このスキルがどこまで耐性があるか調べてもいいけど、この世界の事にあまり首をつっこむと怒られるからな」

クロノはふぅとため息をつく。

そして、こちらを見るクロノ。

「ちょっと剣を出してくれるか?」

「あ、ああ」

なにやらぶつぶつ言っているヴァイスをよそに、クロノが俺に言う。

俺は自分の持つ剣をクロノに渡す。

「よ」

クロノはその剣で躊躇なく自分の体を刺した。

「な、何をやって!」

「大丈夫だって」

体を剣で刺しているのに笑って答えるクロノ。

そして、クロノはその剣を自分の体から抜く。

「ほら」

抜いた剣をこちらに投げるクロノ。

俺は慌てたその剣を受け取った。

「な、何をした!

おまえは何をしたんだ!」

いつの間にかこちらを見ていたヴァイスが目を見開いて怒鳴る。

「別に武器を『白銀化』しただけだが?」

「え?」

クロノの言葉に俺は自分の持つ剣を見る。

確かに武器の輝きが違う。

(なんで?)

「なぜだ。

そのスキルはこの世界に1人だけが持つ唯一のスキルの筈だ」

ヴァイスが喚く。

「ああ、この世界ではな」

「クロノ、これって…」

「説明は後だ。

その武器ならやつも倒せる。

さっさと終わらせるぞ。

そろそろ来る」

クロノが入り口の方を見る。

「わ、分かった」

俺は『神狼化』の第一形態に変わる。

「な、お前のその姿、まさか神狼の眷属」

俺は一瞬でヴァイスとの間合いを詰めて白銀の剣を一閃した。

「ガ」

ヴァイスは短く唸った後、その場に倒れた。

「やったのか?」

「ああ、一撃だ」

ゆっくりと歩いて来たクロノは、倒れたヴァイスを見下ろす。

「『白銀以外無効』のスキルはかなり強力なスキルだけど、白銀の武器で急所に一撃を入れられればそれで終わりだ。

ま、普通は上位魔族の急所に簡単に一撃なんて入れれないけどな」

クロノは笑った。

「それより、なんでクロノが『白銀錬成(体)』のスキルを…」

「来たぞ」

「え?」

クロノの声に俺は入り口の方を見る。

そこには美しい1人の女性が立っていた。


ギャン!

2人の剣が合わさり音を鳴らす。

「どうして魔族が白銀の武器に触れているの」

「魔族ではないので」

見た目が人狼なので確かにグレーは魔族と間違えられても仕方ない。

「く」

力任せに押されてグレーは間合いを取る。

剣を構える銀麗姫シルビヤ。

そして、グレーとの間合いを詰める。

白銀の剣をシルビヤはグレーの体に突き刺した。

「ぐ…」

「なんで」

驚くシルビヤ。

相手は何も抵抗せず剣を受け入れたのに驚く。

「はは、これで俺も…」

グレーはやっと死ねると心の中で安堵した。

これで親達のところにいけると。

しかし、グレーは死ぬ事ができなかった。

「な、なぜ」

「そりゃ、まだ条件が達成されてないからさ」

2人の方にゆっくりとクロノが歩いて近づいた。


剣を納めた2人とクロノはその場に座っている。

魔族の城だが、主を倒したお陰で他の魔族達はどこかに逃げてしまった。

「条件ってなんなんだ?」

グレーはクロノに聞いた。

「グレーは眷属をしてるだろ?

その主従関係を解消しないかぎり死ねない」

「なんだって、じゃ、白銀の武器は意味ないじゃないか」

「いや、神狼フェンリルに効く唯一の武器でもある」

グレーとクロノの話を静かに聞きながら、シルビヤはじっとクロノを見ていた。

そして「まさかクロ?」

そうシルビヤはクロノを見て言った。

「久しぶりだな、シルビヤ」

クロノはシルビヤの方を見る。

「やっぱり。

でも、全然変わってない」

「ま、見た目はな」

「いや、そういう問題じゃない。

あなたが私に会ったのは私が子どもの頃」

そうクロノがシルビヤに会ったのは、シルビヤが自分のスキルが発覚した後の地下の牢屋だった。

その頃、クロノはシルビヤの世話係としてその国にいたのだ。

「でも、戦争が始まる前にどこかに行ったから」

「まぁ、いろいろとあってな」

実は国の情報を隣国に流していたのはクロノであり、シルビヤをどうにか逃がす為に動いていた。

その戦争も城への被害は甚大だったが、近くの村や城の近くの町への被害は最小限だったのも、クロノがそう手配し守っていた。

「あれからどうしてたの?」

「シルビヤのスキルをどうにかしようと思っていろいろ探っていた」

クロノの持つスキルを使えばシルビヤのスキルをどうにかはできるが、クロノがこの世界からいなくなればスキルの効果が切れる。

なので、クロノは他の方法を探した。

そして、行き着いたのが「神狼フェンリルだ」

クロノは2人に話し始めた。

神狼フェンリルの心臓を使えばシルビヤのスキルを無効化する事ができるらしい。

それを知ったクロノはフェンリルを探していた時にグレーに出会った。

グレーも望まぬ眷属になり苦しんでいた。

そこでクロノは目的が同じである2人を会わせる事にした。

「ま、シルビヤの動向は影ながら知っていたから」

そして、今回行動した。

「じゃ、これから俺はどうしたらいい?」

「それはグレーが決めればいい。

今グレーは白銀の剣を持ってる。

1人でフェンリルと戦ってもダメージは与えられるだろうさ。

ただ、俺としてはシルビヤと共に旅してほしいな。

これはシルビヤにも言える事だけどな」

シルビヤは黙って聞いている。

「それに2人とも似た者同士だろ?

眷属になって死ねない者とスキルのせいで死ねない者」

「だが、今日初めて会った相手だ」

「それは誰に会ったとしてもそうだ。

自分以外はみんな初めて会う相手だよ。

ただ、そこから合うか合わないか決めるのは自分だ」

「分かりました」

シルビヤが答える。

「それにもう時間がないのでしょ?」

シルビヤはクロノを見る。

「ま、そういう事でもある、かな」

クロノは笑って答えた。

「時間って?」

グレーはクロノを見た。

クロノは答えず笑顔で立ち上がる。

そして、2人の背中を軽く叩いた。

「俺からの贈り物だ。

これから長い旅になる。

がんばれよ」

「っおい、クロノ」

グレーは振り返ったが、そこには誰もいなかった。

これにてこのお話は終わりになります。

この後は恒例のあの場所へ

ああ、夏バテが早くも辛い…

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