ロボミさんは何もしなくても動かなくなるなんてないはず
終末回避用決戦兵器typeHuman。
ロボミさんの夢に出てきたソレはロボミさん本人の記憶だったのだろうか?
全てはまだ謎に包まれながら彼女の活動限界が近づいていた。
「やっぱりいくの?」
「ええ」
町の入り口でビオラとロボミさんは別れを言っていた。
とは言ってもロボミさんが町長から依頼を受け調査に向かうだけなのだが。
事は数日前にさかのぼる。
町が独自で行っている【津波】発生場所の特定調査である事が分かったらしい。
ロボミさんとビオラは町長の家に呼ばれ訪れていた。
久しぶりに会う親子だったがどこかよそよそしい感じがあったが話はスムーズに進んだ。
今まで数百回起こっている【津波】陸、水、空がある一点から発生しているのではないかと調査で分かったらしい。
場所はここから数百キロにある洞窟らしい。
先日、町の調査団が町で今雇っている傭兵に助けられ帰還し持ち帰った情報だ。
洞窟の入り口は巨大であの【津波】が十分通れるくらいだと言う。
そこで、ロボミさんと町で雇った傭兵でその洞窟の調査をしてもらいたいと言うことだった。
今の町なら1、2回の【津波】なら耐えられる防壁は築けている。
何としても現況を解明してほしいという、町全体からの願いだった。
「僕も一緒に行く」
「だめだよ、ビオラにはここに残りサポートしたもらわないと」
ビオラの申し出をやんわりと断るロボミさん。
ロボミさんとしてはどんな危険があるか分からない場所にビオラを連れていきたくないのだろう。
それに、ロボミさんの装備を転送するにはサポート室から操作しないといけない。
「分かった」
しょんぼり返事をするビオラをロボミさんはぎゅっと抱きしめた。
「そりじゃ、頼んだわ」
「分かった」
町長も傭兵に何かを伝えているようだ。
「それじゃ、言ってくるね。
サポートが必要な時は連絡するからそれ以外の時は食事と睡眠をきちんととってね。
いざって時に倒れたら私も困るから」
「うん、わかったよ」
ロボミさんの言葉に笑顔で答えるビオラ。
それを見てロボミさんも笑った。
「さ、乗れ」
傭兵はサイドカー付のバイクに乗って待っていた。
「よくこんな物が残ってたわね」
「私物だ」
ロボミさんはサイドカーに乗り込む。
そして、2人は問題の洞窟へとバイクを走らせた。
「だいたいこのスピードなら明日の昼には着く」
バイクで走り始めて約30分ぐらいたって、傭兵は口を開く。
「そう」
「ま、途中何もなければだがな」
「それよりあなた誰なの?
ほぼ動きが制限されていたモンスターだとしてもあんな簡単に討伐はできない。
それもその腰に着けてる剣でなんて」
ロボミさんは傭兵が腰に下げているブロードソードを見る。
一見普通の武器に見える。
「これはちょっと特殊でな。
俺が始めて使った武器だ」
「普通のブロードソードに見えるけど」
「ああ、見た目はな。
ま、色々と時間をかけていじってるから見た目とはぜんぜん違う」
「あなた案外喋るんだね」
「ん?
別に喋らないとは言ってない」
「確かにそうだけど」
ロボミさんは前を向く。
ほぼ広野だが所々森のような場所もあり草原もある。
ただ、これだけ広い場所なのに生物が1体もいない。
「不思議だな、これだけ広大なら生き物がいても不思議じゃないのに何もいない。
小さい昆虫もだ」
傭兵もロボミさんと同じ事を考えていたらしい。
「俺も調査団を助けてあの町まで行ったがそれまで生物にはあっていない」
「なら、調査団は何に襲われたの?」
「【津波】だ」
「え?」
「【津波】はあの町に向かってだけ発生してる訳ではないみたいでな。
別の【津波】に鉢合わせたらしい」
「それで、あなた1人で退けたの?」
「まぁな」
それを聞いてロボミさんこの傭兵を警戒した。
普通の人ならあの【津波】に対抗する事はできない。
それをこの傭兵はやったと言うのだ。
「そう警戒するな。
あんたなら教えてもいいか」
傭兵はフードを取る。
黒髪のショートカット。
「俺はこの世界とは違う場所から来た異世界人だよ」
「違う世界?」
頭を押さえるロボミさん。
異世界人と聞いたとたん激しい頭痛に襲われた。
「やっぱりあんたも関係はしてるみたいだな」
「何?この痛み」
「真実を知りたいか?」
「え?」
ロボミさんは傭兵を見る。
傭兵は真っ直ぐ前を見て運転している。
「知ったらあんたは変わるかもしれない。
それでも真実を知りたいなら教えてやる」
「真実?」
ロボミさんはあの靄のかかった夢を思い出す。
「教えて、私は知らないといけない」
ロボミさんはあの夢が現実なのかはっきりさせたかった。
「俺が知るのはこの世界の記憶だ。
だから、実際見たわけじゃない。
だか、これは真実だ」
それから傭兵は語り出す。
この世界の真実を。
今から数百年前。
この世界の文明は今より遥かに進んでいた。
人も今より数万倍。
仮初めとはいえ平和な世界。
そんなゆっくりと衰退に進んでいた世界だった。
ある日そんな世界にどこから来たのか異世界人が現れた。
異世界人はその世界では考えられない高度な技術を持っていた。
異世界人を各国は奪い合い、ある大国が異世界人を手に入れた。
その国は異世界人から多くの技術を習得し世界をまとめる程の力を持った。
喜んだその国のトップに異世界人はポツリと呟く。
この世界はそう遠くない未来終末を向かえると。
トップはその言葉に恐怖した。
せっかく手に入れた全てが無になってしまう。
恐れたトップは異世界人に終末を回避する方法を聞く。
それが終末回避用決戦兵器の開発だった。
異世界人の言うとおり、トップは世界のあちらこちらにtypeの違う終末回避用決戦兵器を開発待機させた。
そして、終末が訪れる。
異世界人がある日突然世界から姿を消した。
それを境に終末回避用決戦兵器が全て動き出す。
終末を起こすであろう害悪をこの世界から消す為に。
たくさんの命が亡くなった。
善も悪もなく全てを等しく切り捨てる。
そんな兵器が世界を蹂躙した。
「それが私」
ロボミさんは傭兵の言葉を聞いて下を向く。
「いや、俺は一言もあんたをソレとは言ってない」
「え?」
顔をあげ傭兵を見る。
「あんたは終末回避用決戦兵器typeHumanのプロトタイプだ」
「プロトタイプ?」
「ああ、だから、記憶のフィードバックがあってやってない事を自分がやったように夢に見る。
プロトタイプの為にかなり頑丈に作られているが機能的には劣ってる。
自分1人で転送も出来ないだろ?」
「確かにそうだけど、あなたはどこまで知ってるの?」
「世界が知ってる事は知ってる」
「それって全てじゃ?」
「いや、人の意思や感情は分からないさ。
俺の前に来た異世界人の目的とかな」
「前にいた人は全ていなくなってしまったの?」
「ああ」
「なら、今生きている人は何?」
「あの人達は異世界人が残した自分の遺伝子で作られた人間の子孫だよ」
「え?」
「言うなればこの世界にいるのは異世界人の子孫達って事だな。
この世界は異世界人に侵略されたって事だ」
事実に黙るロボミさん。
この傭兵が真実を言っているか分からない。
しかし、ロボミさんが誰にも伝えてない終末回避用決戦兵器の名を知っていた。
「ま、異世界人の子孫かどうかはこの際どうでも良い」
「な」
「そうだろ?
あんたが守りたいのは今を生きてる人だろ?」
バイクを止めロボミさんを見る。
「複雑そうな顔をするなよ。
それにこれをどうにかしないとその守りたい人も守れないぞ」
また走り出すバイク。
その後、傭兵は何も言わずバイクを走らせた。
次の日の昼には2人は洞窟の前へと着いていた。
ロボミさんはビオラに通信、決戦用アーマーと1本の刀を転送した。
そして、2人は洞窟へと入っていく。
道中は特に何もなかった。
巨大なモンスターもいなければ生物もいない。
「本当にここが【津波】の発生源?」
ロボミさんは傭兵に聞く。
「そうだ、それは間違いない」
「こんな生物もいないのに」
「それはまだエネルギーが貯まってないんだろうな」
下に降りて10階に着く。
「ここが発生源だ」
そこはとてつもなく広い場所だった。
真ん中には1つの縦長のクリスタルが宙を浮きゆっくりと回っていた。
「これは?」
「終末回避用決戦兵器typebeastMaster。
クリスタルにエネルギーが貯まると生物を生成、ダンジョン外に排出した後、ただ真っ直ぐに行進し始める。
それもその大きさを数十倍にしながらな」
「それが【津波】の正体?」
「ああ、ただ生成された生物は長くは生きられないから数週間で死ぬがな」
「それじゃ、これで終わりにできるね」
ロボミさんはクリスタルに突撃する。
刀を振りかぶりクリスタルに斬りつける。
その瞬間クリスタルの中に人がいた。
いや、あれは私?
ザン
一刀両断。
クリスタルは2つに斬られ上下にずれ、砕け弾けた。
チャ
刀を納める。
「躊躇しなかったな」
「知ってたんだね、あのクリスタルの中に何があるのか」
「ああ、あれはあんたの量産型だ。
感情も何もない、只の部品だよ」
「そう。
でも、これで全て終った」
「いや、ここから始まりさ」
「え?」
「あれが壊された事でもう1つの終末兵器が動き始める」
「な、なんで教えてくれなかったの」
「どちらにせよ、その2つを潰さない限りあの町に平和はない」
「く」
「もう1つの兵器はtypeMeteor。
宇宙にある巨大な岩を落とす兵器だ」
「そんなのもう、終末回避じゃない」
「いや、この星を残すならそれも終末回避になるさ。
この星の終末は回避できる」
「私は何をすればいい?」
「俺は今から下に降りてその兵器を壊す。
あんたは宇宙から来る岩を破壊しろ。
これはこの世界に生きるあんた達の仕事だ」
「分かったわ」
バシ
傭兵は彼女の背中を叩く。
「これは俺からのギフトだ。
全てが終わったら生まれ変わった気分で過ごせばいい。
この世界を楽しめ」
傭兵がどういう意味で言ったのかはロボミさんには分からなかったがロボミさんは頷き、外に向かって走った。
その後ろ姿を見て傭兵はロボミさんと逆、地下へと走り始めた。
ロボミさんの活動限界まで後1回。
次で最終話です。
その後、いつものお話、その後、キャラ紹介と続きます。
お楽しみに




