完全殺害
今日も体に電流が流れるような痺れが走る。
また、やらないといけないのか。
もう、飽き飽きしてきてる。
何回俺は○を○さないといけないんだ。
頼む、俺をほっておいてくれ。
俺はこの世界で普通に生きていたいんだ。
「ご苦労様です」
ビルの路地の入り口にパトカーが数台止まってる。
バリケードテープの前にいる1人の警官が、パトカーから降りてきた1人の私服警官に挨拶した。
「ご苦労さん」
私服警官はそう挨拶して、バリケードテープをくぐる。
薄暗い路地ではもう調査が始まっていた。
「お、遅かったな」
路地の奥で先に来ていた私服警官が手をあげる。
「非番にいきなり呼び出されたらそりゃ直ぐにはこれないだろう」
「ま、そう愚痴るな。
うちも人が少ないからなぁ」
「で、またいつものか?」
後から来た私服警官は路地奥を見る。
そこにはもう遺体はなかった。
彼に連絡が来たのは1時間くらい前、夕飯を食べている時にかかってきた。
ビルの路地奥で人が死んでいる。
そう、連絡がきたのだ。
彼は電話で事件を聴きながら思った。
またか、と。
「そうだ、殺された手口は違うがな。
今回は後ろから鋭利な刃物で心臓をひとつきらしい」
「前回は確か」
「絞殺だ」
「そうだったな背後から首を縄でだったな」
「ああ」
「それで遺体は?」
「解剖するのにもう運ばれたよ」
「じゃ、いつものとこか?」
「そうだ」
「わかった、それじゃ、後は任せるよ。
俺はそっちに向かう」
「だろうな、いつもの感じなら証拠もでないんだろうしな」
「ああ、なんせ全てなくなるんだからな」
後から来た私服警官は路地奥を後にする。
乗ってきたパトカーで遺体を解剖しているいつもの場所に向かった。
彼は車を降り、建物の中に入る。
そして、解剖してくれているであろういつもの先生の部屋へ向かった。
「あ、いらっしゃい」
部屋に来ると白衣を来た女性が出迎えてくれた。
「今、先生はお仕事中ですので中で待っててください」
白衣の女性に言われ、警官は部屋に入り適当な椅子に座る。
「えっと?コーヒーでよかったですか?」
「ああ、ありがとう」
警官は入れてもらったコーヒーを飲みながら先生を待った。
その間、女性は忙しく資料の整理をしていた。
「今回もこの前のと同じなんですか?」
資料整理しながら女性は刑事に聞いた。
「分からん、しかし、そうだろうさ。
こんな田舎町で殺人なんぞ、そんなに起きるはずないしな」
「これで15回目ですもんね」
「ああ、そのくせ誰も騒がない」
「仕方ないですよ、なくなるんですから」
ガチャ
2人が話していると扉が開いた。
「お、待たせたみたいだな」
「いや、コーヒー飲んでゆっくりさせてもらったよ」
警官はコーヒーを机に置いた。
「それで、どうだった?」
「ま、見た通り、背後から出刃包丁みたいな物でひとつきだったな。
他には特に何もない、争った形跡もなし」
「普通、人って争いもせずあんな路地裏で後ろから綺麗に刺されるか?」
「さぁな、それはわしの知るところではない」
医者も椅子に座る。
女性がコーヒーを持ってきた。
「ありがとう」
「それで先生、今回も今までと同じだと思うか?」
「さぁな、写真と映像は残してあるが、果たしてどうなるかだな」
「遺体に見覚えは?」
「さぁな、前に解剖したような気もするが違うような気もする」
「やっぱり曖昧になってるのか?」
「お前さんも見ておくか?」
医者は刑事に写真を渡した。
歳は二十歳前後。
よく町で見かけるような感じの男性でこれといって特徴はない。
ま、美男子だと言われればそうかもしれないが。
「さ、結果は明日だろ」
「そうだな。
それじゃ、また明日に来るよ」
警官は医者にそういうと一旦警察署に戻った。
事件現場にいた刑事も戻ってきていた。
やはり、証拠はでていない。
「それじゃ、俺は帰らしてもらうよ。
どうせ明日には結論が出るだろ」
警官はそう同僚に伝えると家路についた。
「はぁ、前は何もなかった平和な町だったんだがな」
帰りの車の中、警官はボツりと運転しながら呟いていた。
翌朝。
起きて準備をした警官は昨日の建物に向かった。
「おはよう」
ドアをノックして部屋に入ると、医者が椅子に深く持たれかけて天井を見ていた。
「やっぱりか?」
警官は医者に聞く。
「ああ、跡形もなくだな」
そう言って医者は姿勢をただしてから、小さなテレビをつけた。
「昨日、遺体をベッドに寝かしたままにしておいた。
ま、普通はそんな事しないがもしもがあるからな」
テレビに写っているのは監視カメラの映像だ。
「先生、なんかぼやけてないか?」
「ああ、今日来て見たらこうなってた」
警官が言うように遺体だけが鮮明に映っていなかった。
「ま、これからだ」
医者は早送りし始める。
11時59分で早送りを止めた。
そして、12時ちょうどに遺体がベッドから消えた。
まるでビデオテープを切ってある部分を抜いたような感じの消え方だった。
「これで16回目になるのか?」
「そうだ、遺体が忽然と消える、謎の殺し事件が増えた」
「それで他の資料は?」
「昨日撮ったビデオに写真も全て消えているな」
「そうか」
「もちろん、採取した血液もだ」
「どうなってるんだ」
医者と警官は資料を見ながら不思議な連続殺人が本当にあった事なのか分からなくなってきていた。
1つのゲームがそれとなく流行っていた。
誰が作ったか分からない同人アプリゲーム。
【美男子の大冒険】
なんでそんな名前のゲームがひそかに流行っているかというと、そのゲームの内容だった。
主人公は美男子、なのだが普通にどこにでもいるような男性で美男子と言われたらそうかなぁって感じのキャラだ。
美男子が出るようなゲームだし恋愛ゲームか?と思いきや、横スクロールアクション。
美男子が武器も持たず、普段着で洞窟を探索するゲームだ。
なぜ洞窟探索?
武器は?
道具は?
といろいろ突っ込みどころ満載だが一切それも説明がなく、いきなり洞窟探索が始まる。
そして、これが一番の流行った理由。
めちゃくちゃ難易度が高いのだ。
そして、セーブ機能もない。
某有名ゲーマーがこのゲームを配信したところ、結局8時間やってクリア出来なかった。
それを見た人がクリアしてやると躍起になってこのゲームがひそかに流行り始めたのだ。
配信から3年目。
未だにこのゲームをクリアした人はいない。




