ナナホシテントウ
12歳になったナナヤ。
明日、成人の義を控え、長男であるフタミに呼び出されていた。
ある日僕はフタミ兄さんに呼ばれ、兄さんが経営している鍛冶屋に来ていた。
「お、きたな」
フタミ兄さんに手招きされ僕は兄さんの後について工房に向かう。
工房で、兄さんは1本の刀を台の上に置いた。
抜かれているその刀には7つの宝石が埋め込まれていた。
「七星天刀と命名した刀だ」
「完成したんだね」
「ああ、先日王都にいる姉御から戻ってきた」
フタミ兄さんがいうにはこの刀にはフタミ兄さんが長年夢見てきた理想の刀になったらしい。
「最高の素材を使って誰かの為に一生懸命に造る。
ワシは今まで誰かの為に刀を打った事がなかったからな、まさかここにワシが求める神髄があったとはな」
そう言いながらフタミ兄さんは笑う。
この刀に付いている宝石にはそれぞれ魔法が付与されている。
この世界にある7つの属性。
火、水、土、風、光、闇、無。
それぞれ適正の強い宝石が埋め込まれていて、王都にいるイチル姉さんが魔法を付与してくれたらしい。
「これはナナヤ専用の刀だ。
明日成人の義だったな。
これを持って行くがいいさ」
「ありがとう、フタミ兄さん」
「すまんな、大変な使命をナナヤだけに背負わせて」
フタミ兄さんは悲しそうな顔をする。
「大丈夫だよ、姉さんや兄さんはその為に僕にいろいろと教えてくれたんでしょ?
それに僕にはこの刀にメタルもついてるし」
肩に乗るメタルスライムが伸び縮みしている。
「ああ、お前は俺達の自慢の弟だ」
「任せて」
「そうだ、姉御から手紙も一緒に送られてきた。
帰って読んでみるといい」
僕はフタミ兄さんから手紙と刀を受け取り屋敷に戻った。
夜ご飯はムツキ姉さんのお手製の料理だった。
晩ご飯での話題はもちろん明日行われる僕の成人の義の話だった。
母さん達や父さんも心配していたが、僕は胸を叩きながら「任せて」と答えた。
その後風呂に入り、自室に戻る。
メタルを専用のベッド(ツボ)に入れた後、イチル姉さんからの手紙を読む。
内容は明日の成人の義の事だった。
普通、成人の義は屋敷の近くにあるダンジョンに潜り、最深部にあるオーブを取ってくるという物だ。
しかし今回は少し問題があるらしい。
イチル姉さんは王都で力をつけることで神様と話が出来るようになったそうだ。
そこで元父親に話を聞いたところ、僕が取ってくるそのオーブにある思念が宿っており、それが僕が成人の義を行う明日に実体化するらしい。
その思念は破壊神の思念。
イチル姉さんが神だった時の弟である破壊神が、姉を気にしすぎるあまり毎日この世界を見ていたらしい。
その姉を心配する気持ちがいつも押さえ込んでいる破壊神の力と一緒に成人の義が行われる洞窟に溜まり込んでいるそうだ。
もともと、あのダンジョンは神と交信する場所で神の力を集めやすい性質もあるのだという。
破壊神の思念はその性質通り世界を破壊しつくそうとするらしい。
僕はそれを消滅させる為にこの世界に転生されたみたいだ。
確かに神様も焦るよな、自分達のせいで世界を破滅させてしまうかもしれないって分かれば。
それにその世界には自分の子どもが転生してるんだし。
僕はベッドを下りて窓から外を見る。
空には月が神々しく光っていた。
もし、明日負ければこの景色もなくなるのか。
そうはさせない。
この世界にはたくさん思い出があるしこれからもたくさんしたい事がある。
必ず倒してみせるさ。
僕はそう心の中で家族に誓った。
「頑張ってね」
屋敷の入り口にはムツキ姉さん達家族が総出で見送ってくれた。
ムツキ姉さんからお弁当を受け取り、僕はコルクと共に成人の義が行われるダンジョンに向かった。
それからしばらく馬車に揺られダンジョンの前に着く。
「着きましたよ、ナナヤ様」
コルクが馬車のドアを開けてくれる。
僕は馬車を下りてダンジョンの前に立つ。
「気をつけて行ってきてください」
そう言ってコルクに背中を叩かれる。
「痛いなぁ」
緊張が吹き飛んだがかなり痛い。
「はは、緊張している坊っちゃんに私からのギフトですよ」
そう言ってコルクは笑う。
「何者なんだいコルクって」
僕は今まで誰もしなかっただろう質問をコルクにする。
教育係として今まで僕達の世話をしてくれていたコルク。
母さん達や父さんには聞こえていない念話の内容を知っているふしがあったり、僕達のわがままにも付き合ってくれた不思議な人物。
「今はただの使用人ですよ」
そう笑顔で答えるコルク。
「そっか、勝てると思うかい?」
僕はさりげなく聞いてみる。
「坊っちゃんでしたら他の方と同じように笑いながらオーブを持って出てこられますよ」
「なら、大丈夫だね」
僕はフタミ兄さんから受け取った刀を腰に着ける。
肩に乗るメタル。
そして、ムツキ姉さんの弁当。
準備は万端だ。
「行ってくる」
僕はコルクにそう言ってダンジョンの中へと出発した。
「行ったんですね」
ダンジョンの外に立つコルクの横に1人の女性が立つ。
「はい、必ずや坊っちゃんならやりとげられますよ、イチル様」
コルクの横に立つイチルはゆっくりと頷いた。
魔法でこの場所に転移してきたのだ。
「元女神である私には自分と属性が同じ破壊神に手を出す事が出来ないのです。
そのせいでナナヤには苦労をかけてしまう」
「弟妹の方達も十分この為に準備されてます、大丈夫ですよ。
それに、もしもの時は私も行きますので」
「ありがとう、あなたがここに来てたのはこの為だったんですか?」
「いえ、ただの偶然ですよ」
イチルの問いかけにコルクは笑う。
2人はナナヤの入った洞窟を見つめる。
その目には無事に帰ってくるように願いが込められていた。




