警官覚醒
異世界から転生したナナヤ。
転生先で待っている邪悪なモノとの戦いに彼はどう立ち向かうのか。
僕が自分の意識を取り戻したのがまだ一歳になってない時だった。
喋れないし、自由に動けないもどかしさでいつも泣いていた。
すると、母さんがおっぱいをくれて妙な安心感が生まれる。
そんなある日、僕を覗き込む1人の女の子がいた。
母さんは「イチルちゃん」と呼んでいた気がするが、耳もよく聞こえないからきちんとは聞き取れなかった。
僕を覗き込んだ女の子と目が合うと何故か驚いた顔をしていた。
それから、しばらく女の子は母さんと話した後、ベビーベットに寝かされた僕を覗き込みながらお腹をトントンと優しく叩いてくれた。
母さんはそれを見て部屋から出ていったみたいだ。
(えっと、はじめまして、まさか覚醒してますか?)
ふいに頭の中で声が響く。
「う、うわぁ~ん」
「あ、ごめんなさい。驚かせて」
びっくりして泣いた僕を慌てて抱き上げてあやしてくれる女の子。
ふぅ、少し落ち着いてきた。
(だ、大丈夫かな?)
また、声が響くが今度は大丈夫。
(えっと、これでいいんですか?)
頭の中で会話するのは初めてだったのでどうすればいいか分からなかったが、頭の中で言いたい事を考えてみた。
(はい、そうです。
まさか、もう覚醒してるなんて思わなかった。
私はあなたの一番上の姉でイチルと言います)
(僕はナナヤと言います。
それで、覚醒するのって僕早いんですか?)
(そうですね、早い時は私みたいに生まれて直ぐの時もありますし、3歳まで覚醒しなかった子もいますね)
(そうなんだ)
イチル姉さんに抱っこされながら念話?する。
(ちなみにナナヤは7人姉弟の末っ子になります)
(7人姉弟?)
それはまた多いなぁ。
(ええ、母親は全部違いますけどね。
私が長女。
次に長男のフタミ。
次男のサンワ。
次女のヨツバ。
三男のイツズ。
三女のムツキ。
そして、四男のナナヤになりますね)
(末っ子かぁ)
イチル姉さんが笑う。
(すごく賑やかでいいですよ。
また、後で紹介しますね。
それで、ナナヤはお父様に何か言われましたか?)
(お父様?)
(えっとごめんなさいね、私達のパパ様ではなくて何て言ったら分かるかなぁ、神様で分かりますか?)
(あ、ここに転生してくれた巨人の人?)
(はい、そうです)
(なんでイチル姉さんの父さん何ですか?)
僕の疑問に罰が悪そうに笑うイチル姉さん。
(実は私は元女神なんです。
それも転生を司る女神で、たくさんの人を転生していたら転生されるのってどんな感じか気になってしまって自分もお父様に転生してもらったんですよ)
なかなか好奇心満載の姉さんだった。
(ははは)
笑っても誤魔化しきれてませんよ、イチル姉さん。
(僕が神様に言われたのはこの近くなんだと思いますが邪悪なモノが現れるからそれを退治して欲しいと言うお願いでした)
(邪悪なモノですか?)
(はい、それが何時なのかは分からないんですけど)
(ナナヤがその邪悪なモノと戦う使命をおっているなら、たぶん、ナナヤがきちんと戦えるぐらいの年齢になってから現れるのだと思います。
そして、その時に邪悪なモノと戦えるのはナナヤだけなんでしょう。
姉弟には戦闘系の子達も何人かいますけど、その時にはどこかに出掛けてたりして直ぐに帰ってこれないんだと思います)
(そんな事まで分かるんですか?)
(ええ、神には予知する力があります。
ただし、予知が出来たとしても介入する事が出来ないので、誰かを転生したり助言を与えたりするんです)
(そうなんですね)
(それで、ナナヤは異世界の人ですよね?)
(え?はい、そうです。
でも、どうして分かったんですか?)
(ナナヤの持つスキルが少し強力だったのでそうかなと思ったんです)
(なるほど)
(でも、お父様は異世界から転生者を連れてくる事はあまり乗り気じゃなかった。
それを破ってまでこの子を転生したという事は余程急がないといけない事だったのでしょうか?)
(ふぁ~)
段々と眠くなり思わずあくびをしてしまう。
(あ、ごめんなさいね。
そろそろおねむの時間ですね)
そう言ってイチル姉さんは僕をベッドに寝かしつけてくれる。
(おやすみなさい、これからよろしくお願いしますね)
イチル姉さんが胸の部分をとんとんと優しく叩いてくれる。
僕はゆっくりと目を閉じた。
邪悪なモノを倒すという使命はあるが、これから楽しい生活になりそうだ。
それから僕は父さん、母さん達、姉さん、兄さんと使用人の方達と暮らしていた。
イチル姉さんからは僕の持つスキルの事を教えてもらった。
僕の持つスキルは2つ。
『万能』と『正義感』のスキル。
『万能』はほぼ全ての事に適正を持つ事が出来るスキル。
『正義感』は自分の信じる正義を貫き通す時、自分の能力を数十倍にするスキル。
ただ、このスキルは危ういらしく、使い方を間違えば、多くの人に被害が出るらしい。
イチル姉さんは僕なら上手く使えるでしょうと言われた。
それから僕が1歳になる前にイチル姉さんは試練の義を無事に達成し、王都にある学校に行く為に家を出る事になった。
家を出発する日、イチル姉さんからフタミ兄さんが作ったペンダントをもらった。
このペンダントには念話の魔法が付与されており、イチル姉さんがいなくても他の兄姉達と念話する事が出来るという事だった。
2歳になると僕はイツズ兄さんと一緒に剣術を学びたいと父さんに伝え学ぶ事になった。
『万能』のスキルのお陰でスムーズに学習できた。
稽古が終わった後はイツズ兄さんに独自で編み出した剣術の技を教えてもらった。
3歳になる頃には、イツズ兄さんが持つ技をほぼ覚える事が出来た。
そして、3歳になって少したってから、僕はサンワ兄さんとヨツバ姉さんそれと僕達の教育係のコルクと共にダンジョン探索に行けるようになった。
サンワ兄さんとヨツバ姉さんも成人の義を達成して直ぐにダンジョン探索をしたかったみたいでコルクと3人で1ヶ月もたたない内にもういくつものダンジョンを制覇したみたいだ。
今回僕も探索に行けたのは2人のお陰で、事情を知るサンワ兄さんが僕にトラップに関する知識を学ばせたいという意味合いもあったらしい。
それから、2年間は4人でダンジョンに挑みながら僕は様々な知識を学んだ。
僕が6歳になる頃、サンワ兄さん、ヨツバ姉さん、イツズ兄さんはそれぞれ自分の目的の為に家を出る事になった。
3人が家から出発する時にヨツバ姉さんから1匹のモンスターを渡された。
必ず僕の役にたつと渡されたモンスター。
メタルスライムだった。
これでこの町にいるのは町で職人協会で会長をしながら鍛冶屋をしているフタミ兄さんとムツキ姉さんと僕になった。
イチル姉さんが言ったように邪悪なものが現れるのはもしかしたらこういう時かもしれない。
僕は毎日の鍛練を続けながら運命の日を待っていた。
戦闘系の兄姉が旅立つ中、運命の日は着々と近づいていた。




