魔眼の王(後編)
やっと宿敵アイブンの居場所を見つけ、宿に戻った一行。
一悶着あると見せかけ何もない夜を過ごした後、彼らは決戦の地に赴くのだった。
「おはようございます」
ソファで寝そべっている僕をアカトゲが起こしにきた。
「あまり、寝られなかったみたいですね」
「まぁね」
ウミが部屋の外から声をかけてきた後、なかなか眠れず起きていたが、いつの間にか寝ていた。
でも、かなり遅くまでは起きてた気がする。
「ウミさんは出た後、私を起こしてから酒の相手をさせられて、その後寝ましたよ」
ため息混じりでそう言いいながら、部屋を出ていった。
僕も出発の準備をして部屋を出る。
「あ、おはよう」
もう準備万端で椅子に座っているウミ。
「それじゃ、朝ごはん食べてから目的地に行こう」
ウミの提案に賛成して、1階にある食堂へ。
簡単な朝食を食べながら、ふと昨日疑問に思った事を聞いてみた。
「そう言えば、ウミって水が弱点なんだよね?」
「ん?まぁね」
「昨日、シャワー浴びてたけどそれは大丈夫なのか?」
そう、水が弱点と言っていたのに普通にシャワー浴びてたから疑問だった。
「ま、弱点って言っても水の魔法とか水を使った攻撃がダメで、その他は大丈夫。
普通にお風呂も入るし、水も飲むよ」
「苦手になった理由が風呂場で酒を飲み過ぎて酔っぱらって溺れかけたのが原因ですがね」
パンをかじりながらアカトゲが言う。
「アカトゲ~それはいらない情報だよ」
そう言いながらウミはアカトゲを睨んだ。
はは、致命傷になるような弱点じゃなくてよかったよ。
「それで、これからなんだけど」
僕は2人に話をきりだす。
2人はこっちを向いた。
「食事が終わったら、アイブンのアジトに向かおうと思う。
昨日手に入れた情報だとアイブンはこの町の近くにある山小屋に住んでいるという事だった」
「そうですね、たまに町に来て傍若無人な振る舞いでいろいろ店から食料等を奪っていってるみたいですね」
「それはお仕置きしないといけないね」
「僕もあいつの命まではとろうとは思ってないんだ、ただ、この紙であいつの目の力を奪い取ろうと思う」
僕は胸ポケットから1枚の紙を出すと机の上に置いた。
剥奪シートと呼ばれる紙だ。
この紙を手に入れるのもかなり苦労したが、効果は絶大。
魔眼限定だが、この紙を能力を魔眼の上に数分間乗せておくとこの紙が魔眼の力を吸いとってしまう。
もちろん、目を閉じていても有効だ。
ただ、数分間乗せておくとのが条件なので、奪いたい相手を戦闘不能にしておく必要があった。
紙の説明を2人にする。
「なら、大丈夫だね、私がいたら余裕だよ」
そう言ってウミは笑った。
「じゃ、出発しようか」
朝食を食べ終わり、僕達はアイブンのアジトへと向かった。
道中特に何もなく山道を進んだ。
ただ、気になるのは山道を歩いていると、所々で石になった木がある事だ。
「大丈夫ですよ」
アカトゲが隣に来て僕の背中を叩いた。
安心させようと背中を叩いてくれたんだな。
「ありがとう」
僕はお礼を言った。
「見えてきた、あれじゃない?」
ウミの言葉に前を見ると、山道が開け小さな広場になっている。
その奥に山小屋も見えた。
僕達は広場には入らず、山道を外れ草影に身を潜めた。
「さて、これからどうするの?」
「今、あの小屋にあいつがいるかどうか分からないから、迂闊にはいけないよ」
「なら、私がどうにかしましょうか?」
アカトゲがすくっと立つ。
そして、アカトゲの目がキラリと光った。
「小屋にいますね」
「え?あれで分かるの?」
「はい、一応『千里眼』というスキル持ってますので。
あ、ここでは魔眼でしたか」
「それじゃ、突入しちゃう?」
ウミは嬉しそうに僕に聞いてくる。
僕は彼女に頷き部屋に突入した。
「な、なんだお前ら。
な、お前生きていたのか」
部屋の中、椅子にもたれながらアイブンは酒を飲んでいた。
「姉さんを元に戻してもらうぞ」
僕は剣を抜き、アイブンに向ける。
ウミとアカトゲは僕の後ろに控えていた。
「はは、何かと思えばまだそんな事で追いかけてきてたのか」
「そんな事だと」
「そうだろ?いつの話をしている、あれからどれだけたってると思ってる」
アイブンはゆっくりと立ち上がる。
「なんならお前もあいつと同じようにしてやるよ」
しまった相手の言葉に腹をたててずっと見ていた。
くそ。
僕は目を瞑る。
「な、なんだ?」
アイブンの言葉に目を開ける。
石になってない?
自分の手を見るが何も変わっていない。
「今のあなたは石にはなりませんよ」
後ろからアカトゲが声をかけてきた。
「なぜ?」
「そうですね、そういうまじないをしておきました」
なんか胡散臭いが助かる。
「くそう、ならこっちだ」
アイブンはそう言って左目を開ける。
まさかもう1つ魔眼を移植してたのか?
「は、は~
昔のままじゃないんだよ」
アイブンの開いた眼から煙が出る。
そして、家を破壊し巨大な巨人が現れた。
「ランプの魔神ならぬ、瞳の魔神ですか」
アカトゲは本を開き面白いものを見るように魔神を見ている。
その横で何も変わらずウミは腕組みをして立っていた。
「起きてます?ウミさん」
「え、あ、ごめん。昨日遅くまで飲んでて」
目を開けて寝てたのか?
「ばかにしやがって行け、魔神」
アイブンの言葉に魔神が突撃してきた。
狙いはウミ!
「やらせるか」
僕は咄嗟に剣を構えウミの前に出た。
「がは」
剣で防御したが、魔神のパンチは強力だった。
僕はその場に膝をつく。
「だ、大丈夫?」
ウミが近くに来て、背中を擦ってくれる。
「無理しないでいいのに」
「かもしれないけど、やっぱり女性は守らないと」
「本当にもぅ、そんな事聞くとお姉さん頑張らないといけないね」
ウミは立ち上がる。
「アカトゲお願い」
「分かりました、ウミさん」
僕を軽々持ち上げ後ろに下がるアカトゲ。
そして、ウミが一歩前に出る。
「今度は姉ちゃんがお相手か?」
アイブンはウミを見る。
「残念だけど眼は見ないよ」
いつの間にか顔の前にフラッグハルバートを構えるウミ。
「なら、魔神にやられろ」
しかし、アイブンの思いどおりにはならなかった。
ウミはアイブンを見ずに魔神の攻撃を次から次へと避ける。
「なぜ当たらない」
「経験値の差かな」
僕から見てもその力は圧倒的にウミが上だった。
「さて、そろそろ私も約束があるから終わりにするね」
ウミはフラッグハルバートを左右に突き立てる。
右目の眼帯に手を当てるウミ。
そして、ウミは眼帯を取った。
瞳が開かれる。
その眼は綺麗な黄金だった。
「さぁ、行こう『エンペラータイム』」
「また、そんな決め台詞言って」
巨大なオーラに包まれながら進むウミを横から見ながらアカトゲが苦笑する。
「彼女の眼は『皇帝眼』です。
唯一無二の瞳で一定時間全ての攻撃を無効にします。
いわば無敵ですね」
「な、なんだお前は」
アイブンの絶叫に両手にフラッグハルバートを構え前進する。
その間も魔神がウミを殴り続けているが、オーラに阻まれて攻撃は届かない。
「うるさい」
ウミのフラッグハルバートが華麗に舞う。
魔神は最後まで声を出さずに霧散した。
「さて、あとはあんただけだよね」
今、ウミは腰が抜けて座り込んでいるアイブンを見下ろしている。
顔を見ているがウミは石には変わらなかった。
これも『皇帝眼』の力なのか?
そして、まっすぐにフラッグハルバートを振り上げるウミ。
そして、振り下ろす。
ドカ
顔面にハルバートの柄が当たりアイブンは気絶した。
「終わったよ」
にこやかに笑うウミの言葉に僕は頷き、アイブンの石化の魔眼に紙を置いた。
これでしばらく待てば終わる。
やっと、ここまでこれた。
僕は安堵と疲れでその場から立ち上がれなかった。
「お疲れ様」
横にウミとアカトゲも座ってきた。
「ありがとう、本当に助かったよ」
「いえいえ、お礼はアカトゲに言えばいいよぉ」
そうなんだ?
「ありがとう、アカトゲ」
「いえいえ、ここで助けないといろいろ都合が悪くて」
「え?」
「こちらの話です」
アカトゲは罰悪そうに本を読む。
いつも何を読んでるんだろう。
それから、アイブンから石化の魔眼を奪い取った後、町の警備隊に渡した。
町でも悪さをしていたアイブンはすぐさま牢に入れられた。
もう1つの魔眼はウミが魔神を倒した為、機能は停止していた。
そして、別れの日。
僕は故郷に帰る為に船に乗ろうとしていた。
「報酬はどうしたらいい?」
故郷に帰って姉さんの石化を解いた後、報酬を支払う事になっていた為、ウミについて来てもらうつもりだったが、どうしても約束があり一緒に行けないかった。
「仕方ないよ、今回はサービスしとく」
ウミは笑う。
「お姉さんと仲良く」
アカトゲも共にここに残るようだった。
「ありがとう2人ともまたいつか」
2人に別れを告げ、僕は姉さんの待つ故郷へと向かった。
この後、いつもと違っておまけが続きこの章は終わりとなります。
もうしばらくこのお話にお付き合いくださいませ。




