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転移無双  作者: 天野 空
番外章 魔眼の王
101/186

魔眼の王(前編)

1人の青年が旅をしていた。

石にされた自分の育ての親代わりの姉を元に戻す為に。

そして、ついに彼は運命の出会いをする。


始まりはいつも唐突だ。


僕が旅立ってからもう何年になるだろう。

石化の魔眼を持つあの憎い相手を探して僕は旅をしている。

早くに両親を亡くした僕は5歳上の姉さんに助けてもらいながら共に生きてきた。

20歳になった姉に今までのお礼とこれからも共に生きていこうと言う為にバイトして貯めて買ったプレゼントを持って家に帰った。

しかし、そこには1人の男と驚いた顔で石になっていた姉の姿があった。

「俺の物にならないからだ」

そう言って男は僕を押し退け家から出ていった。

その後に調べた結果、その男はアイブン。

村では厄介者とされていた人物で、僕の知らない所で姉にちょっかいばかりかけていたらしい。

そして、どこから手に入れたのか魔眼を移植し姉を石化させた。

この世界は移植魔法が盛んで特に目を特殊な目に変える事がステータスとなっていた。

もちろん特殊な目は自分でモンスターから手に入れないといけないが、非合法で売っている所もあるらしい。

たぶん、そのアイブンは非合法で手に入れたんだろう。

アイブンはその後どこかに姿をくらまし、僕はそれを追っている言うわけだ。

もう何年も旅していて僕の方が姉さんより歳をとってしまった。

でも、諦める訳にはいかない。

僕はまだ姉さんにお礼が言えていないんだから。


「ちょっとそこのお兄さん用心棒はいりませんか?」

そう声をかけられたのはある町に立ち寄った時の事。

酒場で情報を収集していた時だ。

初めはどこから声がするのか分からなかったんだけど、よく見ると背の低いフードを被った人物が僕に声をかけてきていた。

「別に必要ないよ、こう見えても強いから」

そう相手に言った。

別に嘘を言っている訳ではない。

僕だって1人で旅をしているんだ、それなりの修羅場をくぐってきた。

一応、魔眼も移植している。

魔眼移植と言ってもモンスターの眼を本当に移植するのではなくその眼に宿る力を自分の眼に移植する。

僕が移植しているのはタイムワームの眼。

一応、レアモンスターで強さはそこまで強くない。

何がレアなのかと言うとその眼だ。

タイムワームは逃げる時に見た相手の時間をしばらく遅く出来る、『遅滞眼』を持っている。

僕は旅の途中、運良くタイムワームを見つけて隙をついて倒した。

この眼で旅もだいぶ楽になったからな。

「なるほど、魔眼持ちでしたか」

そうフードの人物は僕の目を見て呟く。

一瞬フードの中が見えたが、赤い鱗が見えた気がした。

「はぁ、残念です、分かりました。

もし、力を貸して欲しいようでしたら、これを地面に叩きつけてください」

そう言ってフードの人物は僕に赤い玉を渡して、店を出ていった。

なんだったんだ?

こんな変なものを?

僕は手にある赤い玉を見てみたが特に怪しい様子はない。

ま、くれたものは捨てるのは忍びないからな。

僕はポケットに赤い玉を入れ、情報収集へと戻った。


一通り情報収集が終わった僕は今日泊まる事になっている宿屋に急いだ。

かなり時間をとってしまって酒場から出たのはかなり遅くになってからだ。

「真っ暗だな」

家からの明かりもなく町は静まり返っている。

しかし、こんな静かだからこそ聞こえる音もあった。

「誰だよ、さっきから後からついてきてるのは」

そう、酒場から出て少ししてから、いくつかの足音に僕はつけられていた。

「へへへ、よく気がついたな」

見るからに悪漢ですと言わんばかりの男が4人、家の間から出てきた。

「分かるよ、あんなに足音たててたらな」

僕は振り返り、武器に手をかける。

これで逃げてくれればいいんだが。

「おいおい、そんな武器に手をおいたってなんも怖くないぜ。なぁ、おい」

悪漢の1人が家の影に声をかける。

まだ、仲間がいたのか?

そして現れる1人の人物。

格好から魔術師か?

厄介な相手だ、特に魔法は遠くから攻撃される。

僕の『遅滞眼』では魔法は遅くできない。

「へへへ。さぁ、大人しく死んでもらおうか」

「いきなりだな、なぜ僕を狙う」

そう、この悪漢達に恨みをかうような事はしていない。

「そりゃ、依頼されたからに決まってるだろ」

悪漢の言葉に僕はやっと見つけたと確信した。

「あいつがここにいるんだな」

そう言った僕に悪漢のリーダーと思わしき人物は薄ら笑いをする。

「なら、余計に逃げれない。

ここでお前達を倒して、あいつの居場所を聞き出してやる」

「できるならやってみな」

そうして、僕の戦いが始まった。


結論から言おう。

僕は今床に倒れている。

かろうじて体は起こせるくらいの力は残っているが、悪漢達は思ったより強かった。

『遅滞眼』を使ったがこの眼の弱点である見ている相手にしか効かない事を相手は知っていて、常に複数で攻撃された。

僕をなぶり殺しにするつもりなのか、武器には手をかけず素手で攻撃してきたから、なんとかもっている。

「どうした?さっきまでの威勢わよぉ」

3人の悪漢に囲まれ、奥にいるリーダーと魔術師はこちらを見て笑っている。

くそう、こんなところでやられたら、姉さんを救う事ができなくなる。

僕は何かないかポケットの中を探った。

ポケットの中で手に当たったそれはあのフードの人物がくれたボール。

僕はなんとか座り込みながらボールを取り出した。

「おいおいどうした?

じいさんみたいによろよろじゃないか」

悪漢は僕を見て大声で笑った。

「く」

僕は足元に赤いボールを叩きつけた。

ボールは簡単に割れて赤い煙が辺りを包む。

「くそう、煙玉か」

悪漢どもが狼狽える。

しかし、僕にはこの場から逃げる程、力は残っていなかった。

そして、霧が晴れる。

「おいおい、煙幕焚いたくせに逃げれてねぇのかよ」

「ふざけやがって、ぶっ殺してやる」

悪漢は笑ったり、バカにされたと思ったのか顔を赤くして怒っていた。

「遊びはお仕舞いだ、そいつをやれ」

「ああ、それじゃぁな、あの世で姉さんと仲良くやりな」

悪漢の振りかぶった剣が月明かりに怪しく光る。

「くそう」

僕は眼をつぶった。

「待ちなさい!」

甲高い声が夜の町に響く。

「な、なにもんだ」

悪漢達が一斉に後ろに振り向いた。

僕も眼を開けそちらを見た。

そこには月光に照らされた。1人の女性とフードの小柄な人物が立っていた。


「やはり必要になったでしょう」

小柄なフードが僕に言った。

「さて、その人がやられちゃうと私、困っちゃうだけどなぁ」

女性は一歩前に出る。

その姿は海の近い町で聞いた海賊の衣装。

背中に2本の海賊旗を背負っていた。

「うるせぇ、お前には関係ないだろう」

そう言って剣を振り上げていた悪漢が僕の方に振り向く。

しかし、そこにはもう僕はいない。

さっきのやり取りの一瞬の間に僕は小柄なフードに助けられ、女性の後ろの方にいた。

「ウミさん、ターゲットは助けましたので大丈夫ですよ」

そう言ってフードを外す小柄な人物の顔はトカゲだった。

「トカゲが喋った」

「失礼な私はトカゲではなくサラマンダーです」

僕の言葉に少しムッとして答えるサラマンダー。

「私はアカトゲって呼んでるよ」

女性は僕の方に振り返り笑う。

とても笑顔が素敵な女性だ。

右目には眼帯を着けていた。

「じゃ、後はあの悪者を倒しちゃえば良いわけね」

ウミと呼ばれた女性は悪漢達の方にむく。

「ええ、交渉はその後に」

「オッケー」

ウミは腕組みしたまま、悪漢の方に無造作に歩いていく。

「なめやがってやってやれ」

リーダー格は後ろに下がりながら悪漢3人に声をかける。

「へへへ、よく見りゃ良い体してる、ねぇちゃんじゃねえか」

3人は下品な笑い声でウミに近づいていく。

「ほら、大人しくしろ、可愛がってやるからよ~」

3人の悪漢は同時にウミに飛びかかる。

「残念だけどさぁ、あんた達みたいな奴らに触らせる体はもってないのよねぇ」

3人をヒラリと軽々避けるウミ、そして。

「くらえ、○○の実で得たこの力を」

そう言いながら3人を殴り飛ばすウミ。

「ウミさん、ウミさん」

「ん?」

殴り飛ばしたウミにアカトゲが話しかける。

「ちょっと、それヤバイですから。

それにそんな危ない物、ウミさん食べてませんし」

「え?そうなの?」

「自分の事なんですから分かるでしょ」

呆れながら言うアカトゲにあははと笑うウミ。

悪漢のリーダーはそれを見て顔を真っ赤にしていた。

「ばかにしやがって、先生お願いします」

リーダー格の横の魔術師が前に出る。

「滅せよ、ファイヤーボール」

魔術師の手のひらから放たれる炎の玉が僕達に襲いかかる。

しかし、ウミはまた腕組みしたままその炎の玉の前にたった。

そして、ウミにぶつかった炎の玉は爆発する。

「ウミ!」

僕は思わず叫んでしまった。

「ま、これくらいでは大丈夫なんだけどね」

爆発の晴れたその場に平気な顔のウミが平然と立っていた。

「な、なに~!」

悪漢どもは一斉に声をあげる。

魔術師も驚いているようだ。

「な、なら、これでどうだ。ウィンドカッター」

風の刃がウミを狙う。

でもやっぱり無傷。

服さえも切れていない。

「な、くそう、アイスランス。

サンダーボール」

次々とくる魔法を腕組みしたまま平然と受けるウミ。

「すごいな」

思わず声が出る。

「ま、あのぐらいの下級魔法ならウミさんには効かないですね。

ま、水の魔法ならヤバイかもですが」

何やら本を読みながらアカトゲがそう言ったのが聞こえたのか、魔術師はニヤリと笑い「ウォーターカッター」水の刃をウミに放った。

「こら~アカトゲ何言ってくれてんのよ」

本当に水が弱点なのか初めて魔法をかわすウミ。

というか、海賊なのに水苦手なのってどうなん?と心で呟いてしまった。

「ははは、弱点が分かれば怖くはない」

「野郎共、今だ、やってしまえ」

悪漢達は勢いづいて武器を手に取る。

「あらら?

こっちはせっかく手を抜いているというのに、そっちはそんなん出すのぁ」

ウミはそういうと背中に背負う2本の旗を抜く。

よく見ると海賊旗が付いている反対側は斧になっていた。

「改造ハルバートですね、ウミさんの主力武器ですよ」

アカトゲが説明してくれる。

武器を取り出したウミを見て悪漢達が少し狼狽える。

「な、そんな長物を2本も女が使えるんけがねぇ、怯まずやってやれ」

リーダー格が怒声をあげる。

「使えないかどうか試してみたらぁ?」

左右に1本ずつ持つウミが一歩前に出た。

「うおぉ~」

そして、ウミ対悪漢達の戦いが始まった。


結論から言うと、ウミの圧勝だった。

武器を持つ悪漢達を、まるで旗を持つダンサーのように踊りながら倒していった。

戦う間、1度も旗を畳むことなくはためかせ敵を圧倒した。

特に驚いたのは苦手な水の魔法を、2つのハルバートの柄を合わせて1つにし目の前で回すことで防いだ事だ。

まさか、合体するとは思わなかった。

そうして、悪漢を倒したウミは2本のハルバートを地面に突き立てこう言った。

「峰打ちだから安心するように」と。

確かに刃の部分では一切攻撃してないけど、鉄の棒で思い切り叩かれたらかなり痛い気もする。

でも、本当に見惚れる程すごい戦いだったな。

2本の旗を回しながら元のように背中に戻すウミ。

こちらに振り返り「惚れるなよ、少年」とニコッと笑った。


あれからなぜかウミ達は僕の宿屋の部屋にいる。

ウミが倒した悪漢から黒幕の情報を聞き出した。

やはり、アイブンの仕業だった。

この町に僕が入った時から目をつけ、機会を伺っていたらしい。

悪漢達はアイブンの仲間ではなく雇われたようだった。

ただ、情報を聞き出した後はこの町にはいられないと一目散に町から出ていった。

それほどアイブンは強くなっているのだろう。

その後、宿屋に戻る僕に、泊まる所を決めてないとウミ達がついてきた。

そして、今の状況だ。

ベッドの上にはウミが足を組んで座っている。

フラッグハルバートは部屋の角に置かれていた。

アカトゲはその横でまた本を読んでいる。

僕はと言うと机のところにある椅子に座っていた。

「えっと、ウミ達は部屋取らないの?」

「これからの事を話さないとね」

「これから?」

「そう、一応今回はサービスで助けたけど、次は報酬をもらわないとね」

「そっか」

確かにウミ達も命の危険があるんだし当然か。

「いくら用意すればいいんだい?」

「ん~こっちの相場が分からないから、そうだねこの袋に一杯の宝石もらえれば嬉しいかな」

そう言ってウミは小さな布袋を出す。

小さなと言ってもこの袋一杯の宝石となるとかなりの額になるが、僕がこれまでクエストで貯めたお金を使えば払えない額ではないか。

「分かった、無事に姉さんを助けられたら払うよ」

「交渉成立だね」

「でも、どうして宝石なんだい?」

「ま、あっちに戻った時に換金しやすいかなぁっと思ってね」

「そっか」

あまり理解できなかったが、ウミが力を貸してくれるなら百人力だ。

「それじゃ、シャワー浴びてくるね」

「分かったってええ?」

手を振りながらシャワー室に入ろうとするウミを止める。

「ん?何?」

さも当然な事をしているのに止められてびっくりするウミ。

「いや、当然じゃないから、ここ僕の部屋だよ」

「ごめん、こっちに来てまもなくてさ、お金ないのよ」

「ええ」

「という事で宿屋のおかみさんには話を通してるから」

そう言ってシャワー室に入っていった。

「ま、そう言うわけですからよろしくです」

そう言ってアカトゲはそのまま床に丸まった。

「ええ~」

状況が理解出来ないまま椅子から立つ。

「あと、お姉さんの体覗きにこないようにねぇ」

シャワー室から声がする。

「覗かないよ」

僕はそうシャワー室に向かって叫んだ後、となりの部屋のソファーに向かった。

そのまま、ソファーに寝転ぶ。

はぁ、いきなりなんだよ、この状況。

今日は寝れそうにないなぁ。

そう、思いながら僕は眠れそうにない夜を過ごそうとしていた。

前回の後書きで書いた通り、最近はまっている所に出てくるキャラクターに即発されてこの物語を書いております。

あるキャラクターの察しがついている方には、この作品の登場人物はそのキャラクターとはまったく関わりがございませんとご案内させていただきます。

察しがつかない方は、このキャラクターを楽しんでいただいて、どこかでよく似たキャラクターがいたら、応援していただければ嬉しいです。

それでは、次は後編に続きます。

最後に僕も彼女達をとても応援しております。

すごく楽しい掛け合いをいつも楽しませていただいております。

これからも頑張ってください。

では、次回をお楽しみに。

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