生け贄の少女
どこかの国のどこかの町。
ここは数年前から魔物がはびこるようになった。
その中の悪魔と呼ばれる魔物がある1人の少女を生け贄にするように言ってきた。
もし従わなければ町を襲う。
少女の義母は町を救う為に、少女を生け贄にする事を決めた。
果たして、少女の運命は
「どうぞ、セリエお嬢様」
「ありがとう、セバスチャン」
私は、1人の老紳士が入れてくれた紅茶を口に運んだ。
そして、鉄格子の付いた窓から外の様子を眺める。
空は今日もまたどんよりとした厚い雲に覆われていた。
「いつもこんな感じなのですか?」
セバスチャンが不思議そうに外を眺める。
「ええ、数年前この町の北に悪魔が住み着いてからずっとこう」
「なるほど、こんな天気では気分も晴れませんな」
「本当にね」
嫌そうな顔を見せるセバスチャンに思わず笑ってしまった。
「ん?何か可笑しかったですか?」
「いえ、私が知ってる執事ってそこまで表情を出さなかったから」
「それはそれは、失礼しました」
そう言ってにぃっと歯を見せて笑うセバスチャン。
「もう、笑わせないで」
この場所に半監禁状態の私にとても尽くしてくれ、笑顔まで思い出させてくれて本当に感謝してる。
「ありがとう、セバスチャン」
「ん?何をおっしゃいます、助けていただいたのは私の方ですから」
そう、セバスチャンと出会ったのは私が唯一外に出られる礼拝の日。
道端に座り込んでいる彼にパンと水を渡したのがきっかけだった。
それから、数日後、お義母様から紹介された新しい執事が彼だったのだ。
今までは、とても若く美男子な執事ばかりで、どうにかお義母様に取り入ろうとしている人達ばかりだったけど、彼は違った。
本当に私を大事にしてくれる。
もうすぐ生け贄にされる私の事を。
「セリエ、セリエはきちんといるのでしょうね?」
ドアの外からお義母様の大きな声が聞こえた。
「はい、います」
「そう、ならいいわ、貴女は狙われているのだから、勝手に外には出ないように」
「はい、お義母様」
「それにセバスチャン、あなたは屋敷の掃除は終わったのさっさと済ませてしまいなさい」
「分かりました、奥様」
私達の返事を聞いて満足したのか、複数の足跡が扉の前から消えていった。
「まさに金魚のフンですな」
足音が去った後、セバスチャンはお義母様の執事達の事を不愉快そうに言っていた。
「セバスチャン、掃除はいいの?」
もう少しいてほしいが、お義母様に怒られるのは忍びない。
「ま、すぐに終わりますよ、このぐらいの屋敷なら」
「すぐって」
たまにおかしな事をいうセバスチャン。
この屋敷は町一番大きな建物、1人でやるとなると1日では絶対に終わらない。
「他に手伝ってくれる人いる?」
「いえ、ほぼ毎日私1人でやっておりますし、奥様に怒られたこともありませんよ」
私を心配させないようにこうやってたまに嘘をつくセバスチャン。
「そう、セバスチャンが怒られないならいいの」
「はい、では、失礼して掃除に行って参ります」
セバスチャンは静かに部屋を出ていった。
セバスチャンが外に出るとカチリと魔法で鍵がかかる扉。
また、私は1人、外を見る。
どうしてこうなってしまったの?
お母様が生きておられた時は、魔物も来ない静かな町だった。
数年前にお母様が急な病に倒れて以来、町に魔物が来るようになった。
そして、領主であるお父様は町から魔物を守れるように、ある国軍の隊長の次女と名乗る女性と結婚した。
それが今のお義母様。
確かに、その日から魔物が出る頻度は少なくなったけど、町に活気もなくなってきたように思う。
前は町に出たら、みんな笑顔で生活していた。
でも、今はみんなの顔から笑顔が消えてしまっている。
そして、もう1つ変わった事が起き始めた。
私が何者かに襲われるようになった。
そのせいで、こんな場所に半監禁状態になるなんて。
でも、不幸はそれでは、終わらなかった。
北に悪魔が住み着き、私を生け贄にするように言ってきた。
始めはお父様が守ってくれていたけど、先日、王都に呼ばれたまま帰って来ない。
亡くなったなんて話もある。
それでお義母様は、私を生け贄にする事を決めてしまった。
「失礼します、お嬢様」
「え?」
「お食事をもって参りました」
「セバスチャン、もう終わったの?」
「いえ、まだ半分ぐらい終わっただけです」
半分ぐらいって、それでもまだ、1時間もたってない。
「私にすれば終わらなかったのが悔しいですな、しかし、お嬢様のご飯の方が私には大事なので」
「ありがとう、セバスチャン」
セバスチャンの作ってくれた食事をいただく。
「でも、セバスチャンが来てからご飯が少し豪華になった気がする」
前は肉なんてなかったのに。
「そうですか?私には分かりかねますが」
そう言いながら紅茶を入れてくれるセバスチャン。
「本当に不思議な人ね、もしかして、魔法使いだったりする?」
「かもしれませんな」
いたずらっぽく笑うセバスチャン。
「魔法使いなら、私を外に連れ出してもらえないかなぁ、なんて」
叶わぬ願いを少し言ってみる。
「いいですよ?」
「え?」
驚いた顔でセバスチャン見ると、セバスチャンはいつものように笑っていた。
セリエの叶わぬ願いを、簡単に答えるセバスチャン。
彼は何者なのか、本当にセリエは外に出ることが出来るのか、もしくは、悪魔の罠なのか。
それでは、次回をお楽しみに。




