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転移無双  作者: 天野 空
第三章 生け贄の聖女
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生け贄の少女

どこかの国のどこかの町。

ここは数年前から魔物がはびこるようになった。

その中の悪魔と呼ばれる魔物がある1人の少女を生け贄にするように言ってきた。

もし従わなければ町を襲う。

少女の義母は町を救う為に、少女を生け贄にする事を決めた。

果たして、少女の運命は

「どうぞ、セリエお嬢様」

「ありがとう、セバスチャン」

私は、1人の老紳士が入れてくれた紅茶を口に運んだ。

そして、鉄格子の付いた窓から外の様子を眺める。

空は今日もまたどんよりとした厚い雲に覆われていた。

「いつもこんな感じなのですか?」

セバスチャンが不思議そうに外を眺める。

「ええ、数年前この町の北に悪魔が住み着いてからずっとこう」

「なるほど、こんな天気では気分も晴れませんな」

「本当にね」

嫌そうな顔を見せるセバスチャンに思わず笑ってしまった。

「ん?何か可笑しかったですか?」

「いえ、私が知ってる執事ってそこまで表情を出さなかったから」

「それはそれは、失礼しました」

そう言ってにぃっと歯を見せて笑うセバスチャン。

「もう、笑わせないで」

この場所に半監禁状態の私にとても尽くしてくれ、笑顔まで思い出させてくれて本当に感謝してる。

「ありがとう、セバスチャン」

「ん?何をおっしゃいます、助けていただいたのは私の方ですから」

そう、セバスチャンと出会ったのは私が唯一外に出られる礼拝の日。

道端に座り込んでいる彼にパンと水を渡したのがきっかけだった。

それから、数日後、お義母様から紹介された新しい執事が彼だったのだ。

今までは、とても若く美男子な執事ばかりで、どうにかお義母様に取り入ろうとしている人達ばかりだったけど、彼は違った。

本当に私を大事にしてくれる。

もうすぐ生け贄にされる私の事を。


「セリエ、セリエはきちんといるのでしょうね?」

ドアの外からお義母様の大きな声が聞こえた。

「はい、います」

「そう、ならいいわ、貴女は狙われているのだから、勝手に外には出ないように」

「はい、お義母様」

「それにセバスチャン、あなたは屋敷の掃除は終わったのさっさと済ませてしまいなさい」

「分かりました、奥様」

私達の返事を聞いて満足したのか、複数の足跡が扉の前から消えていった。

「まさに金魚のフンですな」

足音が去った後、セバスチャンはお義母様の執事達の事を不愉快そうに言っていた。

「セバスチャン、掃除はいいの?」

もう少しいてほしいが、お義母様に怒られるのは忍びない。

「ま、すぐに終わりますよ、このぐらいの屋敷なら」

「すぐって」

たまにおかしな事をいうセバスチャン。

この屋敷は町一番大きな建物、1人でやるとなると1日では絶対に終わらない。

「他に手伝ってくれる人いる?」

「いえ、ほぼ毎日私1人でやっておりますし、奥様に怒られたこともありませんよ」

私を心配させないようにこうやってたまに嘘をつくセバスチャン。

「そう、セバスチャンが怒られないならいいの」

「はい、では、失礼して掃除に行って参ります」

セバスチャンは静かに部屋を出ていった。

セバスチャンが外に出るとカチリと魔法で鍵がかかる扉。

また、私は1人、外を見る。

どうしてこうなってしまったの?


お母様が生きておられた時は、魔物も来ない静かな町だった。

数年前にお母様が急な病に倒れて以来、町に魔物が来るようになった。

そして、領主であるお父様は町から魔物を守れるように、ある国軍の隊長の次女と名乗る女性と結婚した。

それが今のお義母様。

確かに、その日から魔物が出る頻度は少なくなったけど、町に活気もなくなってきたように思う。

前は町に出たら、みんな笑顔で生活していた。

でも、今はみんなの顔から笑顔が消えてしまっている。

そして、もう1つ変わった事が起き始めた。

私が何者かに襲われるようになった。

そのせいで、こんな場所に半監禁状態になるなんて。

でも、不幸はそれでは、終わらなかった。

北に悪魔が住み着き、私を生け贄にするように言ってきた。

始めはお父様が守ってくれていたけど、先日、王都に呼ばれたまま帰って来ない。

亡くなったなんて話もある。

それでお義母様は、私を生け贄にする事を決めてしまった。

「失礼します、お嬢様」

「え?」

「お食事をもって参りました」

「セバスチャン、もう終わったの?」

「いえ、まだ半分ぐらい終わっただけです」

半分ぐらいって、それでもまだ、1時間もたってない。

「私にすれば終わらなかったのが悔しいですな、しかし、お嬢様のご飯の方が私には大事なので」

「ありがとう、セバスチャン」

セバスチャンの作ってくれた食事をいただく。

「でも、セバスチャンが来てからご飯が少し豪華になった気がする」

前は肉なんてなかったのに。

「そうですか?私には分かりかねますが」

そう言いながら紅茶を入れてくれるセバスチャン。

「本当に不思議な人ね、もしかして、魔法使いだったりする?」

「かもしれませんな」

いたずらっぽく笑うセバスチャン。

「魔法使いなら、私を外に連れ出してもらえないかなぁ、なんて」

叶わぬ願いを少し言ってみる。

「いいですよ?」

「え?」

驚いた顔でセバスチャン見ると、セバスチャンはいつものように笑っていた。

セリエの叶わぬ願いを、簡単に答えるセバスチャン。

彼は何者なのか、本当にセリエは外に出ることが出来るのか、もしくは、悪魔の罠なのか。

それでは、次回をお楽しみに。

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