魔王と女勇者達
そこは中世に近い、どこかの世界。
勇者ユリスと仲間達は、ようやく魔王と呼ばれるものと対峙していた。
ここまで、過ごしてきた仲間達とユリスは最後の戦いを始める。
果たして、ユリスは魔王を倒すことができるのか?
「おい、起きろ、こんなところで寝てたら死んでしまうぞ」
耳元で大きな声がした。
「かはぁ」
その声で私の意識は覚醒する。
「ご、ごめん、不意をつかれた」
ゆっくりと立ち上がりながら声の主に笑顔を向ける。
「そんな弱々しい笑顔を向けられても、こっちが困る」
声の主、アーランドは苦笑いしながら大盾を構えた。
「ユリスさんこっちに、回復魔法かけますから」
そういって大盾の影から、小柄で可愛らしい女の子が声をかけてきた。
「ありがとう、スー、お願い」
私はスーの回復魔法を受けながら、自分達の倒す相手を見る。
この世界で魔王と呼ばれているそれは、腕が六本ある巨大な大猿だった。
その相手を1人牽制しているクロ。
長年使っているように見えるブロードソード1本で、相手の攻撃を押さえていた。
「もしかして、私が気絶してからずっと押さえてくれてたの?」
「ああ、クロがユリスを助けてやってくれってな、時間を稼ぐからといってずっとああしてくれてる」
「本当に凄いです、途中から仲間になってくれましたけどすごく助かります」
「だね、それじゃ、私もいいところ見せないと」
スーの回復魔法のおかげで、だいぶ力は戻ってきた。
「行くよ、アーランド、スー」
「おう」「わかりました」
『光よ、舞え』
スーの手から光の玉が魔王に向かって飛び出す。
「クロ、目~」
私の声に一瞬こちらを見たクロは、笑顔を向け魔王から飛び退いた。
もちろん、右手で目を隠しながら。
光弾が魔王の顔に当たった瞬間、激しく光る。
「ガァァ~」
視力が奪われた魔王は、自らの周りを豪腕で殴り続ける。
一緒に走り出している、アーランドに向かって目で合図した。
アーランドは無言で頷き、大盾を構える。
『ブロックシールド』
アーランドのスキルが発動する。
ランダムで大地を穿つ豪腕を、そのスキルでことごとく防いでくれた。
(いける)
私は伝説の勇者の遺物、光の剣を握りしめ、魔王との間合いを詰めていった。
「だめだ、避けろ」
「え、くぁ」
突然横からクロが体当たりをしてきた。
その後、私がいた場所を一筋の光線が通りすぎる。
「くそ、まだあんなかくし球があるのか」
アーランドの声が分かるのか、魔王はお腹にできた大きな口で笑ったように見えた。
「ありがとう、クロ」
「いや、なんか嫌な予感がしたから」
「でも、どうしよう、あの光線と六本の腕があったら間合いに入れない」
「よっと」
アーランドは大盾を構えたまま、私達の前に立った。
「目潰しもダメですね、何か胸のところに目みたいなのがありますし」
少しふくれてスーが言った、怒った顔も可愛いなぁ、スーは。
「何、にやにやしてるんですかユリスさん、真面目にしてください」
怒られた。
「ま、ユリスが持つ剣なら、間合いはあまり関係はないんだけどなぁ」
そう言いながら、光の剣を見るクロ。
クロが何か少し考えた後、私の背中を叩く。
「痛いよ」
不満な顔をしてクロを軽く睨む。
「気合い気合い、俺からのギフトだよ」
そう言ってクロは笑った。
「それじゃ、俺がなんとかあいつの攻撃を捌くから、ユリスは後ろから来てくれ」
「アーランドはスーを守って、スーはありったけの補助魔法と撹乱魔法を頼む」
「うん」「わかった」「任せてください」
クロの真剣な顔、何か作戦があるんだ。
今までも、この表情の時に出る作戦で助けられたから。
「ユリス、君にはその剣を持つにふさわしい力があるから、何があってもその剣と仲間と自分の力を信じてな」
クロは真剣な顔を魔王に向けたまま私に言った。
「もちろん、アーランドもスーも、クロも信じてるから」
私も魔王を見ながら言った。
一瞬、こちらを見たクロは笑顔を向けて、魔王に走り出す。
私とクロの体を淡い光が包み込んだ。
スーの補助魔法。
そして、多数の光弾が魔王の向かって放たれた。
魔王は光弾が受けながらも、その腕を振り下ろす。
しかし、クロはそれを全て防いでくれていた。
正直に凄いと、私はクロの後ろを走りながら思った。
もう、魔王は目の前まできている。
私は光の剣を強く握りしめた。
何かいつもと違う、握りしめた光の剣から力を感じる。
そう思った瞬間、目の前で魔王の腹の口が大きく開いた。
(だめだ、間に合わない)
「自分を信じて、その剣を振り抜くんだ」
「え?」
こちらを振り向いたクロは笑顔のままだった。
「ダメ、避けて」
私の声が出ると同時に、クロは光線をその身に浴びていた。
「やれるから、ユリスなら」
「ダメ、クロ死んじゃう」
その背に光線を浴びながら、クロは笑顔を浮かべていた。
「振り抜け~」
クロは私に大きな声で叫びながら、全ての光線を浴び姿をけ
初めてのお話投稿です。
いろいろと読み苦しいところがあると思いますが、よろしくお願いします。
さて、次のお話は後日談的なものです。
お楽しみに