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大空へ飛びたて!

「とりあえずママに話はしてきたわ。けど今抜けられたら困るって怒られちゃって……」


「ほうなんだよねえ。なぜか私だけはぬけてもひひっていはれたから私は出れるんだけどお」


「汚ねえなあ、おい。食いもん食いながら喋んなよ。つうか、そんなつまみ食いしてっから抜けてもいいなんていわれんだろ」


「そういうちーくんは、口なおしたほうがいいって、この前もママいってたよ〜」


「あー、うっせえうっせえ。黙れっつーの」


「なにそのひひ方〜っ!ほんと、口悪〜いっ」


「ほらほら、喧嘩しないの、二人とも。ってことで、あーちゃんがあなた方をシエルたちのところに連れてくことになったわ」


「ほーいっ!私がガイドだよ〜っ。みんな、ちゃぁんとついてきてね」


「ほーいっなのじゃ」


大きく手をあげるあーちゃんさんに倣うように、楽しそうに手をあげるカヤ。


「じゃあ二人ともばばばーい」


「ばばばーいなのじゃ!」


「ひえー、カヤちん、可愛いなあ。ムギュってしたくなる」


そんな和やかなやり取りをみて、微笑んでいると、ふいにクーガさんが隣にやってくる。

普通の人と人との距離感ではなく、あまりに近すぎるその距離に違和感を覚える。


「あの、クーガさん、どうし」


「あーちゃんに他の男を近づけさせないでね」


「え?」


「なーんてね。あーちゃんとカヤちゃんを危険からちゃんとまもってあげてねってこ、と、よ♡」


さっきまで酷く鋭い冷め目をして男の声をだしていたクーガさんは、途端いつも通りの明るく陽気なクーガさんに戻る。

声も高くなって語尾にハートマークがついているから勘違いかとも思うけど……

でも、確かに……


「ほんっと、カマの片思いはジメジメしててうざってえなあ」


「ちー」


「ほいほい」


「えっと……?」


「アルちゃん気にしないでいいわよ」


そういうクーガさんの気迫にまけて、ただ、はい、と答える僕。


「そんじゃあ、いきましょか!」


そんなあーちゃんさんの声にそちらを見やれば、あーちゃんさんがカヤを抱っこしていた。


「出発なのじゃ!」


抱っこされてることを不服に思うかと思いきや、随分と嬉しそうにしている。


カヤを抱っこしたまま歩きだすあーちゃんさん。


そんなあーちゃんさんに続いて、僕も歩き出した……。








「ん〜と……どっちだったかなあ」


「……えっと……すみません、あーちゃんさん」


「ん?なんだい、アルフレッドくん」


「これ、道あってるんですか?というか、道ほんとにわかってるんですか?……」


「面白いこというねえ。……」


「迷ってます?もしかして」


「そんなことあるわけないじゃないか、アルフレッドくん!」


「あの……さっきからなんでそんな……わざとらしく僕の名を?」


「だって助手みたいでいいじゃない!かっくいい!」


「かっくいい?……」


「ねえ、カヤちん!カヤちんもそう思わない?」


「そうじゃのう。助手……。助手か……。大事にせねばな」


「?そだね〜」


「あの……それで、道は……」


そんな会話をしている僕たちは今どこにいるのかといえば、森の中の、どこかわからない場所。


なんでこうなったかは、案内役であるあーちゃさんにしかわからない……。


けど、正直、あーちゃんさんは話が通じないところがあるというか……なんというかで……


「あっ!そだ!あれあるじゃん、ねえ」


独り言のようにそういうと、先ほどまで羽織っていた薄いマントのようなものを脱ぎ捨てるあーちゃんさん。


それによってあらわになったのは、見たことがないくらいに肌の露出が多い服……

服なのかもわからない

下着のようにも思えてしまう。


胸囲と腰回りに布をとってつけたような格好で、よくよくみると肌があらわになっているところには試験管のようなものがいくつも取り付けられたバンドのようなものがついている。

腕や太ももについていて、その試験管の中にはなにか液体が入っているようにもみえる。


そして腰にまかれた太めのベルトには……

「注射?……」

思わず声に出してそう呟いてしまうとあーちゃんさんが、あーこれねというようにすっとその注射を手に取る。


「これ?これが珍しいのかい、アルフレッドくん」


「……まあ……はい」


「ふっふふふ〜。これはだねえ」


そこまでいうと自身の太ももにまかれたリストバンドのようなもに挟まれていた試験管の一つを手に取り、注射の針がある方とは逆の方にそれを取り付ける。

とても慣れた手つきで、表情もつい先ほどまでとは打って変わった真面目な趣で驚く。


「よしっと」


取り付け終えたらしいそれを、自身の腕の、露わになっている部分に向けるあーちゃんさん。


「えっ、あの……」


一体なにをしようとしてるのか、わからずにしどろもどろになる僕を前にして、あーちゃんさんは躊躇うことなくそれを突き刺す。


思わず目を背ける僕。


「よし……これくらいかな……」


そんな声がして、


「あの、ほんとになにを……」

そうたずねて、チラリとそちらを見やる。


「ん?これだよ、これ。ほれ、見てごらん」

そういわれて恐る恐るという感じであーちゃんさんを見る。


「え……」

「おおー!すごいのう。羽か?」


こんなこと、現実であり得るの?


呆然としながらただ、ぽつりとそう思う。


あーちゃんさんの白くか細い腕をみるみるうちに沢山の羽毛が覆っていく。


何度も目をこすって、その光景を見やる。


気づけばあーちゃんさんの腕は跡形もなく、なくなって、そこには大きな、翼があった。


それにしても、なんとも珍妙な光景だ。


人の体に顔に、そこに鳥の羽……というのは

ほんとに、見てるこちらがおかしな気持ちになってくる。


「よし、二人とも。チャンスは一回きりだよ」


「え?……」


「おお、お主、さては自身の足にわしらをつかまらせて、目的地へ行こうという算段じゃな」


「おおー!カヤちん、ほんとすごいねえ。さっすが☆」


「え?……ほんとに意味がわからないんですが……」

思わずもれでる声も意図せず冷たいものになってしまう。


「だからあ、チャンスは一回きり。私が飛び立っだ瞬間にい、足を掴んでえ」


「いや、だからそれが。というか、その前にそれは」


「よぉし、二人ともいっくよ〜。1.2.3……」


そういった、次の瞬間。


バサッ


大きな翼が、空へ羽ばたく、そんな音がして、慌ててあーちゃんさんの足に捕まる僕。


あーちゃんさんの足はもろ素肌で、本来なら女の人の素肌に抱きつくというその状況に年頃の男子らしく赤面するところだけど、そうもならない。


この珍妙で不可解な現象についていくことができず、ただただ、脳が思考停止状態になってしまう。


「おおーっ!やっぱ、上は見やすいよね」


そんな声が上から降ってきて、すぐ頭に浮かんだのは、ふざけてる、だった。


自分でも、そのことにほんの少しだけ驚く


僕って……ほんとの僕ってこんなこと思うんだ……


……ほんとの僕って?


「うわあっ!」


「えぇっ!」


「アルフレッド!」


思わず離してしまった手を、すかさず握ってくれるカヤ。


「踏ん張るのじゃ!」


「うんうん!頑張って!あともうちょいでつくからね。……多分」


「最後の言葉は聞かなかったことにしよう」


「うん……」


「んじゃあ、とばすよ!」


「いやいや!飛ばしちゃダメじゃろ!」

珍しくカヤが突っ込んだものの、その言葉は届かなかった……




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