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逆鱗のハルトⅡ  作者:
98/308

大蛇討伐です。⑤

「おおおりゃあぁぁ――っ!!」


ザンッ


先が突き刺さった大剣をボーザックがなぎ払う。

その瞬間、ボーザックをぐるりと囲うように首を回したヤンヌバルシャが後ろから牙を剥いた。

「ボーザック!」

ディティアが声を上げる。


「オオオッ!!」

ドゴオッ!!


それを、飛び込んできたガルニアが横から大剣で斬り……いや、叩き伏せる。

その後ろから、フェンが飛び出してヤンヌバルシャの目元の傷に牙を立てた。


「ギャアアァ――ッ!!!」


ヤンヌバルシャが堪らず仰け反る。

その勢いを利用して跳んだフェンは離れた場所に着地した。


しかし、すぐに長い胴体がずるりと動き、ヤンヌバルシャは予想外の攻撃に出る。


頭を上へと伸ばすようにして、勢いを付けてジャンプし、胴体から尾の先までを、まるで鞭のようにしならせたのである!


「っうおお!?」

「くっ!!……うぐっ!」

「オオッ!?」


近くにいたグラン、ボーザック、ガルニアが巻き込まれ、跳ね飛ばされた。


3人とも己の武器を構えて受けたけど、ボーザックだけがかなりの距離を飛ばされて、地面に叩きつけられ、転がる。


「う……げほっ」

「ボーザック!」

ディティアが風のように駆け寄ったところで……。

「っ!ディティア!!まだ来るぞ!!」

俺は声を上げる。


好機と見たのか、大蛇がボーザックへと尾を振り上げたのである。


守るために、ディティアが、無謀にもボーザックの前に立つ。

ボーザックはそんなディティアを見て、腹を抱えながらよろよろと起き上がった。


俺とファルーア、リューンはヤンヌバルシャを挟んだ反対側。

グランとガルニアは別々の場所に転がってしまったため、助けるには間に合わない。


「……っ!」

何とかしないと、と、そう思う。


瞬間、影が視界に入って、俺は咄嗟にバフを投げた。


「脚力アップ!!」


「うん、いい判断だ、バッファー」


それは、スレイだった。

彼は恐らく、ボーザックが跳ね飛ばされる時には行動を開始していたんだろう。

迫る尾より速く、身を低くして一直線にボーザックとディティアの元へと走っていく。


俺のバフもあったけど、それだけじゃない。


……速い。


彼はそのままボーザックとディティアの腹に片腕を差し入れるようにして抱きかかえ、一気に踏み切った。

ヤンヌバルシャが尾を振り上げてから、ほんの一瞬だったはずだけど、その動きの鮮やかさに、俺は息を呑んだ。


ブオオォンッ!!ゴガアァッ!!


真っ赤な尾が地面を打ち、砕けた土や石が跳んでくる。

ヤンヌバルシャは彼等を見失ったのか、ドシン、ドシンと何度も尾を叩きつけた。


その間にはグランもガルニアも起き上がり、構え直す。


飛び散る泥や石の向こう、スレイに下ろされたボーザックが、地面に崩れたのが見えた。

ディティアが咄嗟に支えるけど、ボーザックの表情は苦痛に歪んでいる。

かなり強く弾かれたんだ、骨が折れてるかもしれない。


「ちっ……」

リューンが走り出す。

その腕の水晶が光った。

「ヒール!気張りなくそガキ!!」


「ハルト、とりあえずこっちに気を引くわ、いいわね」

「わかった」

ファルーアが俺の横で杖をかざす。

俺は双剣を構えた。


「燃えなさい!!」

ゴオッ!!


ファルーアの造り出した炎の球がぐるぐると回りながら突き進み、ヤンヌバルシャに直撃。


「おおおらあぁっ!!」

瞬間、立て直したグランが胴体をぶん殴った。


「シャアァ――ッ!!」

口を開け、激しく嘶くヤンヌバルシャ。


けど、その位置は……完璧に、俺の正面だ。


「絶好の位置!!グラン!粘れ!……五感アップ!五感アップ!!五感アップッ!!」

「任せろ!!オラァッ!!」

グランは、ヤンヌバルシャがまた跳び上がろうとしたのを察知して、頭を真正面からぶん殴った。


俺の投げたバフが、ヤンヌバルシャの口に入ったところで、ガルニアが真っ黒な大剣を振り上げる。

「ハッハアァー!!いいぞ!このヒリヒリする感覚!!」


ズドオオォッ!!


ヤンヌバルシャの胴体に叩きつけられた真っ黒な大剣。


「――ッッ!!」


五感アップを重ねた大蛇は、甲高い声を発してのたうち回った。


「うおっ、あぶっ……危ねぇ!」

その下で、グランが大盾を構えながら後退してくる。

「そうだ!来い!はっ、ハハハァッ!!」

ガルニアはそれすら楽しんでいる様子で、何度も何度も大剣を振るう。


「やれやれ……あれは早々に疲れるだろうな」

そこに、ローブの男が軽い足取りで戻ってきた。

ディティアも一緒だ。

ボーザックの近くにリューンがいて、どうやらあっちは回復に徹しているらしい。

傍にはフェンも駆け付けてくれている。


あれなら安心だろう。


「スレイ……助かった、ありがとう」

言うと、スレイは肩を竦める。

「いや、流石にバフが無ければ間に合わなかったさ。……ところで、メイジの娘さんは、あの蛇の口がどの程度開いていたら魔法が撃ちこめる?」

ファルーアはそれを聞いて、肩に掛かった金の髪をさらりとはらった。

「そうね、貴方の双剣の長さがあれば十分よ」

「うん、いいだろう。……では、タイミングは任せても?」

「もちろん」

「よし。……さて、双剣使いの娘さん。お手並み拝見といきたいがどうかな」

「…………えっ、あ、はい!」

何故か呆けていたディティアは、その声にしゃんと背筋を伸ばした。

「よし。では行くとしようか。その前に……バッファー」

「任せろ。肉体強化、速度アップ、脚力アップ、腕力アップ」

呼ばれて、俺は迷いなく4重にバフをかける。


スレイにも、ディティアにも、反応速度アップはいらないだろうと判断したから、腕力アップを追加しておいた。


「いい仲間を持っているじゃないか」

「……はい」

ディティアが、はにかんでから大蛇に向き直るのが見える。


……ん、あれ。


俺は何かもやっとした気持ちを覚えた。

何だろう、何か引っかかる。


「ハルト、威力アップくれるかしら」

「あ、悪い。わかった!」

俺は首を振った。


とりあえず、集中だ。



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