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逆鱗のハルトⅡ  作者:
94/308

大蛇討伐です。①

「紹介しましょう。彼等はトレージャーハンターで、リューン、ガルニア、スレイ。リューンはヒーラーでもあります」

席に落ち着いた彼等を紹介してくれたのは、支部長のストーだった。


今日も首の後ろで紅髪を束ねているリューンは、あまり見えてないんだろうけど、ファルーアが気になるらしく、ちらと見ては視線を逸らしている。


……ファルーア、恐がられてるぞ……。


ガルニアに至ってはどうもグランがお気に入りらしく、何て言うか……獲物を狙う獰猛な魔物の雰囲気を隠すこともなくさらけ出していた。


ここじゃなかったら、俺は間違いなく双剣を抜いてたと思う。

本当に、異常なくらいの威圧感だ。


そしてスレイ。

こいつに関しては本当にわからない。


わざわざエニルを見に来たんだから、もしかしたら俺達に近い考えだったり……いや、どうだろうなあ。


顔すら隠しているし、分かることと言ったら白髪のある黒い髪ってこと、明るい茶色の眼ってことくらいだ。

布越しの声はくぐもって聞こえるけど、さぞや良い声してんだろうなぁって感じ。

いくら考えてもそれだけで、あとは謎のままだった。


「……今更だ、全部話す。俺達はパーティー白薔薇。アイシャから渡ってきた冒険者で、裏ハンターだ」

「ほう……」

グランの言葉に面白そうに呟いたのはスレイ。

彼はそれ以上は何も言わなかったんで、グランは続けた。


「俺は豪傑のグラン。隣は光炎のファルーア。その向こうが不屈のボーザックと銀風のフェン。こっちは疾風のディティアと、逆鱗のハルトだ」

「豪傑の!!くははっ、おい大盾!面白ぇあだ名が付いてるじゃねぇか!」

「あだ名じゃねぇよ、2つ名だ。これはアイシャの全ての国の王から賜ったんだ、愚弄するのは許さねぇぞ。トールシャには無いんだろうがな」

「4国の王から……?やるじゃないか」

スレイの言葉に、グランはふんと鼻を鳴らす。

「俺だけじゃねぇぞ。俺達は皆、すげぇ奴等からの2つ名を貰ってる」

「……俺は不本意だけどなー」

思わず茶々を入れたら、グランから睨まれた。


はい、黙ってます。


両手を上げてみせる。


「ふん、2つ名でも何でもかまわないさ!そんだけ自信満々なんだ、ヤンヌバルシャも楽勝なんだろうね?」

そこでリューンが左手をぴらぴらさせて、馬鹿にするような視線を投げてきた。

それには、ファルーアが応える。

「そうね、貴女達が有用な情報を持っているかどうかによるわね?まさか無いなんて言わないでしょう?」

「……ちっ」

リューンは舌打ちをすると、そっぽを向いてしまう。


ガルニアは未だぎらぎらした空気を纏ったまま、グランを見ているだけ。


話は一向に進む気配を見せない。


……本当に大丈夫なのか?こいつら……。

思わず呆れていると、見かねたのか支部長のストーが話し始めた。


「彼等の報告では、ヤンヌバルシャは山脈に突然現れたようです。今までこの辺では話を聞かなかった魔物ですし、恐らくは広大な山脈の何処かにいたんでしょう。……餌が無くなるとか、縄張り争いに負けたとか……そう言った理由で移動してきたと思われます。……実は最近、帝国の彼方此方でそういった現象が確認されています。そして!地殻変動のようなものも関わっている可能性があると、私は思っていますが……それは」


熱の籠もった語り口調に思わず半身を引くと、ファルーアがぶった切る。


「そう言えば、砂漠でも流砂の位置が変わってたみたいだったわね」

「魔物が移動するのと似たようなこと、樹海でも聞かなかったっけ?……樹海の死者は普段もっと奥地にいるーとかそんな話」


ボーザックがさらに広げると、ストーはぱあっと笑顔になった。


「本当ですか!?……これでまた1つ事例が……!そうするとやはり……」


「あー、ストールトレンブリッジ。申し訳ないが、ヤンヌバルシャ討伐についての説明を早く進めたいのだが」

甲冑の置物さながらだったアーマンが、ここで軌道修正。


ストーははっとすると、ばつが悪そうな顔であははと笑った。

「あ、そうでしたね。……ではこの話は後でお願いしますね」


……あー、後でするんだ、この話。


リューンが「はぁーあ」と、盛大にため息をついたのだった。


******


それから色々話があって、俺達は漸く、ヤンヌバルシャ討伐についての詳細を決定した。


……ヤンヌバルシャ。

彼の大蛇は表皮が硬く、普段は地中に穴を掘って、そこで生活している。

その穴はかなりの広範囲に、迷路のように入り組んで広がっていることが多い。


体長は龍の如く、数メートルから十数メートルに及び、太さは人間が両手を広げて囲んでも数人必要になる場合があるらしい。


ヤンヌバルシャの顔の1番先端、鼻の辺りは硬い土などもろともしない強度を誇り、地中を掘り進むことが可能だ。

口の中にびっしりと生えた牙は、どんな獲物も噛み砕くことが出来た。


そのヤンヌバルシャを狩るとなると、確実なのは『蒸し焼き』にすることだ。

生半可な魔法や剣ではダメージにならないためである。


ただし、その方法をとる場合、ヤンヌバルシャを袋小路に追い込んで閉じ込め、さらに外からひたすら熱する必要があるので、それに適した環境を探すところから始まる。

つまり、かなりの時間と手間が掛かってしまうというわけだ。


そこで。


今回は、ある作戦が実行されることになった。


ざっくり言えば、ヤンヌバルシャの口の中にファルーアの魔法をありったけぶち込む作戦だ。

そのためには、ヤンヌバルシャの口を開きっぱなしにさせる必要があるけど、それはグランとガルニアが受け持つ。


……そう。

俺達は、彼等と共闘しなければならないのであった。



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