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逆鱗のハルトⅡ  作者:
91/308

貴方のことは嫌いです。④

「……それじゃあ、続きだ」

アーマンは笑いを堪えながら、そう言った。


リューンはフンッと鼻を鳴らしてしっかり座り直すと、コツコツと指先でテーブルを叩く。

ファルーアはそれをじーっと見ながら、優雅にお茶を飲んだ。


リューンに対し、余計な口を挟まないことね?……とでも言いたげな空気に、両隣のボーザックとグランが何とも言えない顔をしている。


こわ……。


「私達はトレージャーハンター協会とは繋がりが深い。法に背くのであれば裏ハンターに協力することも辞さないつもりだ。……君達は彼等の仲間ではないのだね?」

アーマンは、もう確信しているんだろう。

口調はとても好意的で、敵意の欠片も無かった。


グランはその優しそうな微笑みを正面から見据えながら、しっかりと答えた。


「ああ、違う。たまたま、彼奴らが『襲われている』ところに遭遇しただけだ。彼奴らはガリラヤを倒した奴等が既に亡くなっていると思っていたし、そのことも、明日トレージャーハンター協会に報告に行く約束だ」


「はあ?だから襲ってたわけじゃなく、無法者を裁く……」

「……あら?言い訳が出来る立場かしら?」

「……ちっ、何なんだよ」

リューンが身を乗り出すところを、ファルーアがにっこりと笑うことで阻止する。


……背中がこう……ひやってなるよな。


それを見ながら、アーマンは楽しそうだ。

「では、彼等のことは私達に任せてもらえるね?悪いようにはしない。彼等がガリラヤを返すのであればこの話はそこで終わるのでな」


ふうー、と、グランが息を吐く。

俺も、皆も、たぶん同じ気持ちだって思った。


一瞬の目配せ。

そして。


「断る」


静寂。

にこにこしたままのアーマンはそのまま固まり、不機嫌そうだったリューンですら眼を見開いてぽかんと口を開けた。


「え、な、何故だね?……別に、君達が庇うこともないだろう?」

「はっ!何だよ、やっぱりあんたらも仲間……」


ことん。


グランは、大切にしまっていた『それ』をテーブルに置いた。

奇しくも、リューンが置いた平たい石と同じくらいだ。


蒼くて平たい手のひらくらいの大きさ、見る角度によっては虹色に煌めく薄い板のような。


それは、美しい鱗だった。


「これは奇蹟の船ジャンバック船長から賜った、俺達の『裏ハンターの証』だ。リューンとか言ったな?お前達のやり方は気に入らねぇ、一歩間違ってたらあの子供は殺されていたぞ」

「……っ!あんたらが、裏ハンター……!?」


リューンはそれに顔を近付けて、俺達の『証』をまじまじ見ながら声を絞り出した。


アーマンに至っては、苦笑している。

右手でもみあげの辺りを触っていて、髪を触る癖があるのかもしれないなとどうでもいいことを思った。


「ははあ、そうだったか。……いや、申し訳ない。君達は君達で動いていたと言うことだね」

「そうだ。悪いが、この件は寧ろ俺達が受け持つべきだと思う。アーマン、有り難い話だが、動くのは結果を見てからにしてくれないか」


アーマンは手を下ろすと、ふう、と息を吐く。

「いや、とんでもない。こちらから出しゃばる話ではなかったようだね。……しかし、そうなると一つ問題があるんだが」

「問題って……何ですか?」

ディティアが眉をひそめる。

アーマンは彼女に片目をつぶって見せた。

「この案件をこちらで協力し、あまり大事にしない代わりに、君達に大蛇の魔物……『ヤンヌバルシャ』を討伐する仕事を頼みたかったんだ」


******


大蛇の様子や片目を潰した時の話をし、元々倒すつもりだったと告げれば、アーマンは流石に驚いたらしく口を半開きにした。


リューンに至っては「あんたら馬鹿じゃないか?」と声を発して、ファルーアの妖艶な笑みを真っ向から浴びせられている。

視線を泳がせているあたり、よく見えなくても、空気は感じるんだろうな……。

 

俺達は明日アマルス達とトレージャーハンター協会ヤルヴィ支部へと赴くことを約束し、治療所に戻ることにした。


…………

……


「と、言うわけ。明日は頼んだからな、アマルス、ヤヌ」

エニルの眠る部屋にいたアマルス達に一通り話すと、彼等は呆れ返った。


「いや、あんたらよぉ……俺達が逃げちまったらそれ……」

「まあ、その時は追い掛けますよ、何処まででも」

アマルスに、ディティアがはにかんでそう言ったけど、それ、彼等には脅し以外の何でもないと思うぞ……。


「まあ、でも。貴方達には感謝している、そのくらいは安いものだろう。リューンとかいう女達に捕まっていたら、本当に生きた心地がしなかったはずだ」

ヤヌもそう言って、エニルの前髪をはらった。


その表情は穏やかで、俺は何となくほっとする。


「そう言えば、所長さんは?……エニルはいつ移動させるの?」

そこでボーザックが聞くとアマルスは肩を竦めた。


「俺達がトレージャーハンター協会へ行ってる間はここに置いておいてくれるらしいぜ。何だかんだあのハゲ頭は中々……」


「ほう……ハゲ頭」


「ぶ」


タイミングのいいことに所長が戻ってきて、ボーザックは噴き出しかけた口元を両手で押さえて後ろを向く。

所長はその背中に一瞥をくれて、アマルスに向き直った。


「……なあ、すぐ出ていくか?言っておくが、これは敢えての髪型だ」


アマルスはすんませんでしたと頭を下げるのだった。


本日分の投稿です。

いつもありがとうございます。


街の中が長くなってきたので、そろそろ大蛇討伐に出発したいところです。


よろしくお願いします!

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