まずは情報です。①
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「トールシャ上陸~!!」
ぱあっと笑顔を広げて、ボーザックが桟橋に降り立った。
船酔いから開放された大剣使いは、久しぶりの陸地に感動したらしく、しゃがみ込んで地面をさわさわする。
「ずっと船にいたから、何だかふわふわするね」
隣にいたディティアが笑ったから、
「ディティアもふわふわしてるよな」
と頭をぽんぽんしたら怒られた。
「は、ハルト君!!そういうことは、あんまり言わないように!あと頭ぽんぽんするのも!」
はは。やっぱりディティアは可愛いなあ。
「相変わらずあんたは……だからボコボコにされるのよ?」
ファルーアには、呆れ顔でぴしゃりと一蹴される。
……確かに、ボッコボコにされたんだけどな。
そうそう、気になってたんだけど、街から一定の距離まで来ると、海龍は一旦船から離れるそうだ。
あとは人力で船を港に着けるだけである。
これで、時間に正確で遅れない、魔物にも襲われない、奇蹟の船の出来上がりというわけだ。
「海都オルドーアよりでかそうだな」
物珍しそうに後から降りてきたグラン。
入れ替わるようにして、ひょろっこい青年がすれ違う。
ふわふわの金髪だけど、全体的に肌が黒くアンバランスだったから目立っていて、思わず眼で追ってしまった。
「……そうだな」
グランに頷きながら尚も見ていると、青年はそのままジャンバックに駆け上がっていく。
あんな人乗ってたか?
首を傾げていると、すぐに上から声が降ってきた。
「船長!?身体は大丈夫なんすか!」
「おー!お前達会いたかったぞ!さすが俺の奇蹟の船!定刻通りだ!」
「馬鹿者!客人に報せず何が奇蹟の船ですかな!?散々でしたぞ!!」
「おおー親父!!いや、親父船長!!今回は助かったよ、病気はもう大丈夫だ!」
「今はそんなこと聞いておりませんぞ、馬鹿者ーー!!」
「はっはぁ!やっぱりあんたらは親子さね!」
あー、ってことは、あれが本来の船長か……。
賑やかな船上に、思わず苦笑。
「人間、見た目じゃねぇな」
同じ事を思ったようで、グランが船を見上げて、ぼやいた。
…………
……
トールシャの玄関港、ライバッハ。
砂と岩を固めて作った四角い建物が並び、全体的に薄い橙色の街が、俺達の記念すべき新大陸の第1歩になった。
頭にバンダナを巻いた屈強な男達が、両手に木箱を担ぎ上げて闊歩する。
あれは船乗り達だろう。
ところどころに露店があり、魚を焼いたり肉を焼いたり……とにかく色々な匂いが混ざっていた。
その他にも、軽装備の冒険者……あー、ここだともうトレージャーハンターかもしれないな……が、行き来している。
活気もあって、規模も大きそうだ。
「はぁー、なんか、すっごい広そう」
地面を堪能し終えたボーザックが、今度は手でひさしを作りながら辺りを見回す。
俺達も隣に行って、同じようにぐるりと見渡した。
「とりあえずギルドからだな。フェン、混んでるから気を付けろよ」
グランが荷物を担ぎ直して言う。
「がうっ」
フェンは楽しそうに答えた。
……これだけ広そうだと、ギルドを探すのも骨が折れそうだ。
そうしている内に、顔馴染みのようになっていた商人や冒険者達が、次々に人混みに消えていく。
冒険は一期一会である。
……すると。
「ねぇ、グラン」
ファルーアがグランに眼を向けずに名前を呼んだ。
「どうした?」
「迎えの話なんてあったかしら?」
「あ?…………おぉ?」
俺もファルーアとグランの目線を追う。
視界に入ってきたのは……うん。
『ようこそ白薔薇』
大きいけど軽そうな看板を掲げ、すっかり顔が隠れている青年(だと思われる)の姿だった。
「聞いてないですねぇ……」
ディティアも首を傾げる。
「俺達以外にも白薔薇っているのかな?」
ボーザックも言いながら頭を掻いた。
「どうする?グラン」
「奇蹟の船だしなぁ、連絡が行ってりゃあ、ああやって待つこともできるだろうが……」
「あー、確かに」
放っておくのも何となく気が引けて、俺達は、とりあえず声を掛けることにした。
「こんにちはー」
まずは安定のボーザック。
青年は、その声に顔の前にあった『ようこそ白薔薇』を下ろすと、ボーザックを眺めて困った顔をした。
「ああ、ええと。こんにちは……?」
大分訝しげである。
「ねえ、その看板なんだけど」
「これ?……その、人を待ってるから」
ツンツンした紅い髪。
眼は切れ長のつり目。
線は細くて……そうだな、華奢な女性みたいな奴だった。
背は、ボーザックよりちょっと高いくらい。
ベージュのパンツに白いシャツ、首には赤いスカーフが巻かれて、前で結ばれている。
青年は、少しおどおどして見えた。
「君が待ってるのはどんな白薔薇?」
ボーザックは困惑する青年を余所に、どんどん話を進めていく。
正直、俺達を見て反応無いところを見ると、本当に別の白薔薇がいるんじゃないか?と思った。
「……屈強な戦士達らしい。僕も、見たことは無いんだ……」
「へえ、何をした人達なのかしら?」
「龍を、倒したみたい」
「龍ねぇ。どんな龍だ?」
「え、ひ、飛龍……だったと思う」
可哀想に、ファルーアとグランにも話し掛けられて、青年はますますおどおどし始める。
俺は、後ろにいた銀のもふもふを前に出してあげた。
「その屈強な戦士達は、銀色の魔物を連れてたりはしない?」
……青年の切れ長の眼が、見開かれた。
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