表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルトⅡ  作者:
89/308

貴方のことは嫌いです。②

「気になること?」

聞き返すと、アーマンはゆったり掛けていた身体を起こし、テーブルに肘を突いてこっちを見た。


きらり、と蒼い眼が光っている。


「そうだ。入れ、リューン」

がちゃり。

アーマンの声と殆ど同時に応接間の扉が開く。


入ってきたのは、真っ赤な長い髪を首の後ろで緩く束ねた女性。

黒い革鎧を見るに、兵の中でも斥候とかそういう立ち位置なのかも。


見ていると、眼が合った。

可愛らしい……と言うには少しキツメの顔立ちだけど、きっと美人な方だろう。

ディティアは可愛いから、どっちかというとこの女性はファルーア寄りかな。


そう考えてる間も、視線はまだ交錯している。

紅い眼には長い睫毛が掛かっているけど、しっかりとした意思を感じた。


……うん、何か……敵意?


「彼女はトレージャーハンターだ。今回、私達帝国兵がトレージャーハンター協会を通して出した仕事を請け負ってもらっていたんでね。ちょっとした報告が彼女からあった」


リューンと呼ばれた女性はアーマンの隣まで来ると、その場で立ったまま腕組みして俺達を見回す。


「……片目を潰したのは誰だい?」


「……ッ!!お前!!」

俺は、その声に。

ガタンと椅子を鳴らして立ち上がっていた。

頭がかっと熱くなって、歯を食いしばる。


「まあ、まずは話を」

アーマンはその瞬間には右手を俺に向けていて、制止していた。


「お前……エニルを斬った奴の仲間……あの時のバッファーだろ!?」

俺はそれを無視して、そのまま女性を睨み付ける。

リューンと呼ばれた女性は俺を見て微動だにしない。

つまらなそうにしているだけだ。


それが余計に神経を逆なでした。


「ハルト君……」

隣に座っていたディティアが、そっと俺の袖を引く。


「……ッ」

俺は、ガタンッと派手に座り直す。

不安そうにこっちを見ている彼女を少し見て、俺は深く息を吐き出した。

「……大丈夫、ディティア」


グランも、ボーザックも、ファルーアも。

足元に座っているフェンも、少し緊張した空気を滲ませている。


そして、ディティアが俺にしっかりと頷いて、言葉を紡いだ。

「……片目を潰したのは私です。貴女は……いいえ、貴方達は、裏ハンターですか?」

凛とした空気。


しっかりとした声が、自然と皆の気持ちを奮い立たせるような。

疾風のディティアは、リューンと呼ばれた女性を、座ったまま静かに見据えた。


「……リューン」

「ああ、わかってるよ。……思ったより骨のある奴等だったようだね」

「ふん、あんだけ大口叩いて仕留められねぇとは滑稽だな」

グランが言う。

リューンは漸く椅子を引き、どかりと座った。

腕を組んだまま、こっちに不躾な視線を這わせている。

「あたしらに必要なのは情報だけだったからね。それが受けた仕事さ。元より討伐するつもりはまだ無かったんだよ。それをスレイの奴が勝手に……ったく。で?あの坊主は生きてんの?」

「それは、斬り伏せた方々にお答えする必要はありません」

ぴしゃりとディティアが『拒否』する。

空気が、ぴんと張り詰めて……俺は自分が怒っていることも忘れて身を固くした。


「はあ……これだから困るんだよねお子様は。おい大盾。あんたはずっと問い掛けてきてたね。教えな、あの坊主とその仲間、どうした」

ディティアがそれに驚いた顔をする。

グランは顎髭をいつもよりじっくりと撫でた。

「答えてやってもいい。だが、此奴らは子供じゃねぇし強えぞ。それに、先に答えるのはあんただろう?裏ハンターなのか?お前達は」

「……もう、本当に面倒な奴等だね。そうだよ!あたしもガルニアもスレイも裏ハンターさ。ほらよ」

リューンは、胸元からポイと何かを投げた。

……平べったく加工された宝石……のような、透明な丸い石だ。


「これが、その証だ。あたしを認めた帝都の審査官から貰った」

「……」

何となく、そうじゃないかとは思ってたさ。

けど、納得はしたくなくて。


俺はじっと、その石ころを見ていた。


これが、証じゃない確率だってあるかもしれないじゃないか、と。


グランはそれをまじまじと見詰めて、低い声で俺を呼んだ。

「ハルト」

「……わかったよ」

「ディティアも、いいな」

「……はい」

しゅんと肩を落として、ディティアも頷く。


「子供は何とか治療をしている。連れの2人も一緒だ。それで?何故お前らは彼奴らを攻撃した?」

グランはそう言うと、リューンではなくアーマンを見た。

「アーマン。俺達はそこの女とその仲間が、子供を斬り伏せたのを見た。門で見た背負われていた子供がそれだ。……俺達に何を言いたい、何が聞きたい?」

「ちょいと、あたしを無視して……」

「リューン」

「……ちっ」

アーマンは優しそうな顔でにっこりすると、ゆったりと腰かけ直した。



本日分の投稿です!

いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ