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逆鱗のハルトⅡ  作者:
86/308

助けたいと思うのです。④

途中歩いたり休憩を挟んだりしながらどれくらい走ったか……昼頃に、街へと辿り着いた。

大きな門があって、ぐるりとレンガの壁で囲われた立派な街だった。

その門は開け放たれているけど、門番らしき甲冑2人が待ち構えているのが見えて、どっと疲れが押し寄せてくる。


何となくホッとしたって言うか。


「……流石に、寝てないのはキツいな」

グランが呻く。

「そ、そうですね……とりあえずトレージャハンター協会に行きましょうか……そしたら、宿へ……」

ディティアも肩を落として、ふらふらしている。


「……止まれ」

門番のひとりが、こちらにやって来る。

甲冑はシンプルなもので、装飾は殆ど無い艶消し銀。

腰に下げているのは長剣で、もう1本、短剣を装備していた。

この街の騎士……とかなのかも。


「お前達、何処から来た?」

「えぇ?もちろん砂漠から山脈越えて来たけど……どうかしたの~?お兄さん」

ボーザックが眼を擦りながら、ふわふわと答える。


俺も、男性っぽい声のお姉さんだったらどうするんだろう、とか、変なことを考えるくらいには頭が働いていないみたいだ。


門番は律儀に兜まで被っていたけど、もうひとりと顔を合わせてから答えてくれた。

「平原に魔物が出るようになった為、こちら側は現在通行禁止令が出ていてな……」


……え?


一拍遅れて、俺は言われたことを理解する。


「……はあ!?まさか、通れないのか?」

思わず大声で言うと、甲冑2人は慌てて手を振った。

「ああ、悪い、そうじゃあない。そっちから入るのは勿論かまわない。中から出ることに許可が必要なんだ。……ただ、魔物の情報が欲しくてな」

俺達は顔を見合わせた。


「……知りたいのは、赤い蛇の魔物のことか?」

顎髭を摩りながらグランが言う。

甲冑2人は、がちゃりと鎧を鳴らした。

「知っているのか!?」

「その前にひとつ、教えてくれ。俺達の前に、3人組は来たか?」

「……む……」

門番達は何かを思案するように、お互いを見遣る。

グランが、眉をひそめた。


「途中まで一緒にいたんだ。……そいつらを先に逃がすために、俺達は魔物と戦った」

俺が付け足すと、門番達は少し俯いた。


かちゃり、と、甲冑が鳴る。


「来たんだが……ひとり、子供が背負われていてな。……あまり良くないように見えた」

「…………」

アマルス達、ちゃんと辿り着いてたんだな。

皆とお互いに頷いてから、俺は言葉を続ける。

「そいつら、何処に行ったかわかるか?」

「ああ。この街には治療所があるから、そこに。ここを真っ直ぐで、突き当たりを左だ。看板がある」

それを聞いて、グランが言った。

「わかった。魔物の話は後でいいな?俺達はパーティー白薔薇。治療所で魔物の話ってのは気が引けるしな……またここに来るんでいいか」

彼等はそれを聞くと、すぐに頷いてくれた。


「我々はここ、ヤルヴィに常駐している帝国兵だ。もしここに私達が居なかったら、兵舎がある。アーマンを呼んでくれれば、私が行く」

「ありがとうございます」

ディティアが丁寧に頭を下げる。


それを見て、彼等は俺達を門の中に促しながら、ひと言、付け足した。


「……トレージャーハンターは、パーティーという言葉は基本的に使わない。この国には、アイシャを良く思わない奴等もいる。……気を付けて行くといい」


「あ……そう、なんですね。……わかりました、気を付けます」

「忠告、恩に着るわ。また後で必ず」

ディティアがしっかりと頷き、ファルーアが妖艶な笑みを溢すと、甲冑の兜の中で、彼等は表情を緩めただろうと思う。


俺達は、ヤルヴィと彼等が呼んだ街の中へと、漸く踏み入れたのだった。


******


街はかなりの賑わいを見せていた。

レンガ造りの街並みで、何処にこんなに人がいたのかってくらいたくさんの人がいる。

ここまで来る途中で誰ともすれ違わなかったから、不思議だったんだけど……まさか通行禁止になってたとは。


兎型の魔物、ガリラヤ狩りも、一時的に中断しているんだろう。


門から伸びていたのは広い通りで、左右には店がずらりと並んでいた。

装飾品、ドレスのような煌びやかな服、小さな鞄、帽子等々……どうやら、冒険者にとってはあまり立ち寄ることの無い類のものばかりだ。

そういえば、歩いてる人もトレージャーハンターっぽい服装はしてないな……。


通りもレンガを敷き詰めて造られていて、全体的に赤茶色が多い街並だった。


「あれが治療所のようね」

ファルーアが金色の髪を肩からはらって前を見る。


街並を眺めていた俺は、視線を移した。


「本当だ、看板があるよ。あれは……薬瓶かな」

入口の上に掲げられた看板には、薬瓶らしき画が描かれている。

ボーザックが言って、あふーっと大きな欠伸をした。


……早くアマルス達に会って、エニルの無事を確認したい。

それで安心したら、休もう……。


「行こう」

俺はそう言って、皆と一緒に診療所へと歩を進めたのだった。


******


診療所の中では、色々な人がごった返している。

普通の服の人、冒険してますって感じの服の人。

その中でアマルス達を探すけど、見付けられないでいた。


そこに、怒声が響き渡る。


「どうしてこんなになるまで放っておいた!!おい、手の空いたヒーラー達は俺を手伝え!!」

思わず首を竦めて振り返ると……そこには。


怒鳴られているアマルス達と、怒声を上げたらしき、つるつる頭のお兄さん?が……いた。


4日分です!

いつもありがとうございます。

寒くなるようですので皆様ご自愛くださいませ!

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