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逆鱗のハルトⅡ  作者:
79/308

正義とは何です。④

身体中の血が、かっと熱くなったような気がした。


……俺は、ボーザックに五感アップがかかったままであることに気付く。

研ぎ澄まされた感覚で、左腕はかなりの激痛だったはずだ。

……不甲斐なかった。


同時に、何かが、俺の中で燃え上がる。


「……肉体強化」

バフを、広げた。


「肉体強化、肉体硬化」

ボーザックは治癒活性と合わせて4重、グラン、俺、アマルスとヤヌには3重。


「速度アップ」

ディティアは肉体強化をひとつ速度アップにした3重にする。


「威力アップ、肉体硬化、反応速度アップ」

ファルーアにもバフを投げて、俺も腰を落とし、双剣を構えた。

彼奴は、危険だ。


それを見た黒鎧の男は、眉をひそめる。


グランが、白薔薇の大盾を構えたまま、ゆっくりと口を開いた。

「……答えろ。お前達は、何者だ?残りの2人はどうした」


「ふん、答えてやる必要もねぇだろう?…………俺を楽しませろ!!」

「……ッ!!」


ガゴオオオッ!!


グランの大盾に、黒鎧の男の大剣がぶつかる。

「おおおっらあ!!」


グランがその大剣を弾き上げ、そのまま殴り付ける。

直ぐさま引き戻された大剣でガードし、男はその勢いを利用して間合いを取った。


「ひ……ああ……」

それを見て腰を抜かしたのか、アマルスがへたり込む。

ヤヌは辛うじて盾を構え、震えていた。

「しっかりなさいアマルス。……ヤヌ、エニルを背負っていて。……最悪、貴方達を逃がすことくらいは何とかするわ」

「ガオウッ」

ファルーアとフェンが空洞の入口で構えてくれる。


……後ろは大丈夫だ。

俺はファルーアに頷いて、前を向く。


「は、ハハハァッ!そりゃあ何だ!バフが重ねられるのか!?それだけじゃねぇ、その盾は何だ?堅ぇじゃねぇか!!」

眼を見開き、男の口から笑いが漏れる。

心底面白い、楽しいとでも言いたげな口調に、俺の怒りはさらに燃え上がる。


「ハルト、ティア」

その時、ボーザックが小さく囁いた。

「どうした」

「はい」

応えると、ボーザックは前を見据えたまま、続ける。


「彼奴の気配じゃない、何か変なのが別にあったんだ。……もしかしたらあとの2人はそっちを追ってるのかもしれない」

「……それなら、私達であの人を止められれば……」

「アマルス達は逃がせる、ってことだな」

ボーザックは頷くと、左腕をゆっくり持ち上げて、大剣に添えた。


「まだ無理するなよ?俺のバフ……そこまで万能じゃないからな、ボーザック」

思わず眉をひそめると、ボーザックは口元ににやりと笑みを浮かべる。

「平気、無理はしないよ。カバーしてくれるんでしょ、逆鱗のハルト?」

「……言ってくれるな。……任せろ、不屈のボーザック」

俺達は、そっと拳を突き合わせた。


「なら、先陣は私が行きます」

疾風のディティアはそこに自分の拳を割り込ませ、さらりと言うと、再びぶつかるグランと男を見据えた。


俺とボーザックは顔を見合わせて、苦笑する。

格好良く決めてるっていうのに、流石と言うか何と言うか。


悔しいけど、ディティアの方が余程格好良かった。


******


「ハハハァッ!いいぞ、中々やるな大盾!」

「うるっせぇんだよ!……さっさと聞かせろ!戦う意味がねぇかもしれねぇだろ!?……っらあ!!」


ガキィンッ!!


ギシギシと鬩ぎ合う、力。

盾越しに男を睨む。

男は、大剣越しにこちらを値踏みしているようだった。


……まるで、猛獣。

こいつは、命のやり取りに躊躇いが無い。

さっさと宥めねぇとヤバイかもしれねぇな。


グランは歯を食いしばり、鼻を鳴らした。

「おい、答えろ……お前達はっ……裏ハンター、かっ!?それとも……ただの……!」

言いながら足を踏ん張る。

バフがかかった身体は、人ひとりの力になど押し負けるはずがない。

グランは、そう信じていた。


言ってもわからねぇなら、まずはねじ伏せるしかなさそうだ!


……しかし、その瞬間。


「ちっ……!」


男は舌打ちすると後ろに跳んだ。

盾を振り抜いたが、空を切る。


同時に、グランの横を一陣の風が吹き抜けた。


「はあぁっ!!」

「くそっ、邪魔するな小娘!!」

疾風のディティアだ。


彼女は臆することなく、黒鎧の男に肉迫すると、踊るような剣戟を繰り出す。


「この!……!?」

「……ティアだけにかまけてると後悔するよ!」


ガキイッ!!


ディティアがくるりと後方に下がる。

横薙ぎに振られた大剣を、入れ替わりに飛び出したボーザックが大剣で受け止めた。

「ハルト!!」

ボーザックが呼ぶ。


「おおおっ!!」

その大剣の死角。

隠れるように身を低くしていたハルトが踏み切る。


「……お前がっ……誰でも!!俺は!!」


双剣が、男の脇腹へと振り抜かれる。

入りが少し甘いのは、恐らく致命傷になるのを避けているからだ。

グランはそれを読み取って、見届けることを選んだ。


「あんなっ……行いは……!!許せないんだよ―――ッ!!」


「ちぃっ……!」

「言い訳は後で聞いてあげるよ」

剣を引こうとする男を、ボーザックが更に間合いを詰めて阻止する。


……仕留めた……!!


グランは、頼もしい仲間に息を呑んだ。



本日分の投稿です。

21時から24時を目安に毎日更新予定です!


いつもありがとうございます。

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