迅雷は元気です。①
流砂を避けるようにぐるりと迂回してオアシスへと向かう。
途中、巨大な魚型の魔物『ザナラオ』に遭遇し、有り難くいただいた。
うん、やっぱり旨かった。
ふわふわの白身が口の中でほろほろと崩れるのが最高なんだよなぁ……。
もしかしてこれも特産とかになるんじゃないか?
さて……俺達が同行させてもらっているベテラン達は、砂漠の街ザングリのトレージャーハンター協会支部をよく利用するそうだ。
何故なら、ゴードとアーラと同じ、ダルマニって村の出身だったからだ。
ダルマニは小さすぎてトレージャーハンター協会の支部が無く、やはりある程度の年齢になった頃に村を出たらしい。
俺達の出身大陸であるアイシャでは、殆どの街や村に冒険者ギルドがあったんで、意外なんだよなぁ。
それだけ、トレージャーハンターの数が少ないとも言えるんだろうけど。
******
オアシスへと辿り着いた頃には、俺達は同行させてもらっているパーティーとだいぶ打ち解けていた。
4人パーティーの彼等は全員男で、ダルマニに家族がいるんだって。
暫く仕事を請け負ってお金を貯め、ダルマニに帰るところだったのだ。
出稼ぎ、ってやつだな。
全員、模様の違う布をベルトにしていて、黒髪黒眼。
さすがに肌は白くなく、しっかりと焼けた小麦色である。
なみなみと水を湛える湖、ザングリにもあった背の高い木や膨らんだ葉の下草がたくさん茂るその畔にテントを張り、俺達は彼等と一緒に火を囲んでいた。
空は夕暮れ時特有の美しい茜色で、東の方はうっすらと蒼くなっている。
空を眺めていた俺は、ふと彼等に眼をやって、気になっていたことを聞いてみた。
「そういえば、皆さんはアイシャへ渡った同胞がいるとか聞いたことあります?」
すると、リーダーであるサルーヤさんが、グランみたいに顎を擦った。
「アイシャへ?……ああ、いるぞ」
……ちなみに、背は俺とボーザックの中間あたりで中肉中背、顎髭はきちんと剃られていてつるつるである。
「ああ、ナーラんとこの赤眼のお嬢か。跳ねっ返りのじゃじゃ牛のな」
「ははっ、本当に怒った砂牛みたいな奴だったなぁ」
「そりゃあジャーラんとこの娘の子だぞ、当然だろう」
残りの3人も胡座をかいた膝を叩きながら話し出す。
……うん、なんか色んな名前が聞こえたぞ……。
しかも、砂牛扱いされてるんだけど……。
俺が眉を寄せていると、ボーザックがからからと笑った。
「え?それってもしかしてナーガって名前じゃない?」
「おお、知ってるのかボーザック」
サルーヤさんはぱっと笑顔になって応える。
「えっ……わあ、まさか本当にナーガ?……迅雷のナーガ??」
ボーザックはそのまま眼をぱちぱち。
「あー!知ってるぞ、それ、2つ名とか言うんだろう!?」
1番背の小さい、ころころとしたお腹のラーダさんが丸鼻を親指でごしごしする。
俺達は顔を見合わせた。
こんな所で、本当に不思議なもんだ。
…………
……
聞けば、ナーガはやはりダルマニ出身なのだとか。
迅雷のナーガ。
長めの黒髪を後ろで束ねたスタイルのいい女性。
ちょっと恐そうな紅いつり目で、所属するパーティー、グロリアスのシュヴァリエを崇拝している奴である。
アーラと同じように左肩から斜めに太い布がかけてあり、ベルトに結んであったのは覚えていたんだけど、凄い偶然もあったもんだ。
彼女は黒髪黒眼の民族の間で、たまに生まれる紅眼なんだとか。
紅眼を持って生まれた者は才に溢れていて、ナーガもとても強くなったんだってさ。
あまり戦うところは見たことないけど、あのシュヴァリエが連れているんだから、相当強いんだろう。
癪な言い方だけどな!
「……」
俺は爽やかな空気を感じた気がして、無言で両腕を擦った。
「あいつの父親はナーラと言ってな、俺達とはかなり古い付き合いだ。じゃじゃ牛はたまに手紙を送ってくるから、聞いてみるといい」
「いや、別に……むぐ!?」
サルーヤさんに言われて、俺は瞬時に答えたけど、グランに口を塞がれた。
「おもしれぇじゃねぇか、アイシャの話も聞けるかもしれねぇしな。黙っとけーハルトー」
「むぐぐ……」
俺とグランを見て、ディティアが笑っている。
俺は口を塞がれたまま、肩を竦めて見せたのだった。
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