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逆鱗のハルトⅡ  作者:
6/308

海は広いです。⑥

奇蹟の船ジャンバック。


この大型商船は、2つの航路を交互に回る。

1回3ヶ月程の航海で、年に2回ずつだ。


ひとつは、俺達のいた大陸アイシャとまだ見ぬ巨大大陸トールシャを結ぶ航路……今は、その真っ只中だ。

そして、もうひとつはトールシャの大きな港を3箇所結ぶ航路。


アイシャとトールシャを往復する時は商人や荷物、そして冒険者達を乗せ、トールシャだけ回るときは荷物だけ載せているらしい。


その話をしてから、船医のお婆さんはため息をついた。


「あんたら、飛龍を倒したんだったね。そういう人は何か居るって気が付くもんなのかい?」

「……うん?俺達のこと知ってたの先生?」

ボーザックが言うと、お婆さんは頷く。

「ラナンクロストのギルド長がこの船の乗船券を探してる時に、しっかり情報をもらったのさ」

「わぁおギルド長……」

苦笑いを浮かべるボーザックに、お婆さんも苦笑した。


「……この船の守護神は、海龍さ。船の下にいるのも彼だろうさ。討伐なんざ考えないでおくれ。さっき話したとおり、トールシャだけを回る時は荷物以外載せてないのさ。それは、年に2回、海龍に感謝の供物を渡してるからなんだ」


「……く、供物?」

ボーザックが恐る恐る口にする。


「はっはぁ、そう身構えなさんな。魚とかね、要するに食べ物さ」


******


「海龍だってさ」

船室に戻る頃には日はとっぷり暮れていた。

お婆さんと話をして、夕飯もそこでそのまま食べたからだ。


船内灯がゆらゆらと光っている。


そんな中、俺がぽつんと言うと。


「海龍だってな」

「海龍ね」

「海龍ですね」

「わふ」


ボーザック以外が応えた。


「何年も一緒みたいだし、心配無さそうだねぇ」

ボーザックもほっとしたような顔で、フェンを撫でた。

「フェンも頭良いし、海龍も優しいのかな……」

「そうなのかもなぁ」

海龍のことは、船員以外にはわざわざ報せていないそうだ。

まあ、混乱するだけかもしれないし。

船長は、療養中の本物が戻る予定なので知らされていないこともわかった。


つまり。

船が魔物に襲われなくて、時間も遅れないのは、海龍が船を支えて泳いでいるからなのだ。


ただ、そんな話をしてから、ふと気付く。


「あれ?じゃあ船長は何を隠してた?」

「……おお、そういやそうだな」

「あそこまで言って放っておくのも微妙な気がしますね」

俺の疑問に、グランとディティアが答えてくれる。


「よし、船長んとこ行くぞ。気のせいでしたーとでも言うしかねぇだろ」

「そうね。ボーザック、居場所はわかるのかしら?」

「この時間は船長室じゃないかなー、行こう」

グランの判断にファルーアが頷き、ボーザックが答えて、俺達は船長室へと赴くことにした。


…………

……


コンコン。


ノックの音が細い廊下に消えていく。

磨き上げられてつるつるの樹の扉には、扉の外に掛けられた船内灯が造る影が揺らめいていた。


少し待ったけど返事が無いから、俺達は顔を見合わせる。


「あれ?おかしいな-。この時間は日誌か何かを書くって言ってたのに……船長-?」


ボーザックがノックしながらノブを捻る。

がちゃ。


「ありゃ、開いちゃった」

「開いちゃったって、お前…………な?」


ぎい、と扉が開き、見えた室内。


俺は、息を飲んだ。


散乱する、本、本、本。

本棚という本棚から引っ張り出された分厚い本達が、そこら中に散らばっていたのである!


明らかに、誰かが家捜しをしたような状態だ。


「な、何だよこれ!?」

「船長、おい、いねぇのか!?」

グランが咄嗟に呼びかけてくれる。

扉の横にある本を見ると、どうやら航海日誌のようだった。


「ボーザック!フェン!副船長か船員か、誰でもいい、連れてこい!」

「わ、わかった!」

「がうっ」

ボーザック達が、弾かれたように走り出そうとした時。



それは、始まった。



ぐわぁん……!!



「うおっ」

「きゃ……!」

グランとファルーアが声を上げる。

大きく浮き上がったような感覚と同時に、今度はぶわっと落ちる感覚が訪れる。

「うわっ!」

俺は思わず、掴まれるような突起も無いのに廊下の壁に張り付いた。

そして、すぐに次の波が。

「っ、は、反応速度アップ!!」

咄嗟に、バフを投げた。

「フェン!……反応速度アップ!」

フェンはひらりと受け取って、揺れる廊下に難なく着地すると、ぐるる、と唸る。


「ハルト!五感アップして!」

「ハルト君!五感アップ!!」

ボーザックとディティアに言われて、すぐにバフを広げた。


すると。


「…………嘘だろ!?」

動いている。


俺達の足の下、ずっと深い位置にいたはずの、巨大な気配が。


…………近付いてくる!!


ぐわあぁんっ!!


揺れる船。

何処かで悲鳴が上がるのが、強化された聴力ではっきりと聞き取れた。


「甲板だ!行くぞ!」

「うん!」

グランの指示に、ボーザックがいち早く駆け出す。


俺達は、甲板までの道程を走り抜けた。


そして。


〈くおおおぉぉぉんん〉


「う、わ」

飛びだした先、闇の中で、そいつはここっちに顔を向けていた。


シャアンッ

ディティアが、いち早く双剣を構える。


「何があるかわからねぇ!全員臨戦態勢!!」

グランに怒鳴られて、俺もボーザックもすぐさま剣を取った。


……甲板には、夜の闇を照らすいくつもの灯りが踊っている。

充ちる潮の香りに、五感アップを消した。


何人かの船員と、恐らくは商人。

そして、俺達と、冒険者。


船の目の前で雄叫びを上げたそいつは、じっとこちらを見ている。


……龍だった。


飛龍とも、災厄の黒龍とも違う、ぬらぬらとした皮膚。

蒼く煌めくヒレがたくさんあって、鼻先から長い髭が左右一本ずつ生えている。


そして、さらに驚愕したのは、その海龍の真ん前。


「姿を現したか魔物め!!船はやらせん!!」


……この船の現在の船長が、大剣とも違う、反りのある大きな剣を携えて、雄々しく立っていた。





本日分の投稿です。

21時から24時を目安に、基本的に毎日更新予定です。


初めましてのかたもそうでないかたも、

ありがとうございます!


今日もよろしくお願いします。

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