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逆鱗のハルトⅡ  作者:
290/308

志を抱くもの。①

「……拠点に行く。そっから来たんだろ? 先導してくれアイザック」

油断なく構えるシュヴァリエに答えず、わざわざアイザックに言うと、横目でちらりとこっちを見た嫌味な男は、ふ、と笑った。


なんだよ、笑うところじゃないだろ……。


当のアイザックは肩をすくめてなにも言わない。


顔を顰めると、シュヴァリエは口元に笑みを浮かべたまま言った。


「拠点は確かに後方だが、君が来た方向から察するに、一度通り越したのだろう? ああ、それとも迷子だったかい? 逆鱗の」

「うぐ……」


こいつなら「地図は僕の頭のなかで、完璧に再現されているからね」とか言いそうなので、俺は口を引き結んで鼻を鳴らす。


本当に嫌味な奴である。


災厄は突然現れた彼らを不審に思っているのか、こちらを窺っていて動かないまま。

砂の双剣を構え、ときおり表面がざらり、と流れた。


なんか……完全に緊張感が崩壊したな……。


「ほっほ。元気じゃのう」

そこに、長く伸ばした白髭を撫でながら、だぼついた黒ローブの爺さんがすたすたとやって来る。


――爆炎のガルフ。


ファルーアに『光炎』という二つ名を付けたメイジであり、爆風のガイルディアとともに地龍グレイドスを屠った、伝説の『爆の冒険者』のひとりである。


彼らの活躍は爆の物語として、アイシャだけでなく、この大陸……トールシャでも語られているそうな。


「……ふむ。魔力が洞窟内に満ちているからわかりにくいが……どうやらその砂の魔物には核があるようじゃの」

そんなガルフが言うので、俺はシュヴァリエそっちのけで向き直った。

「核?」

「腹の真ん中あたりじゃな。魔力の塊があるのぉ」

「へぇ、さすがだな。ファルーアはそんなこと言ってなかった気がする」


俺が言うと、ガルフは肩を揺らしてほっほ、と笑う。

「まだまだじゃの、光炎の娘ッ子は」


それがどことなく嬉しそうで、俺もちょっと嬉しくなった。


「おい、爺さん。暢気に喋っている場合じゃないだろう。……とりあえず行くぞ、逆鱗」

爆風が軌道修正し、俺は我に返って頷く。

「あ、お、おう」


けれど、歩き出そうとして、ふと思う。

災厄は俺たちに素直に付いてくるだろうか?


警戒されていることを考えれば、引かれてしまうかもしれない。


立ち止まる俺に、爆風が不思議そうな顔をする。

「どうした、逆鱗」

「いや、あいつが素直に付いてくるかなぁ、って……」

「それなら問題なさそうだね、逆鱗の」

「……」

さらりと返ってきた爽やかな空気を纏う声に、思わずむっとする。


くそ、なんか調子狂うなあ。


ところが、どういうことかと聞く前に、その気合いっぱいの声が洞窟にこだました。


「――はああぁっ!」


刃を蒼く煌めかせた双剣が、後ろから災厄の砂塵を斬り刻む。

それはまさに、疾風。


すぐに反応した砂の魔物は、双剣……三本あるけど……を振るって応戦したけど、双剣で『彼女』の相手をするなんて愚の骨頂だ。


ガガガッ! キィンッ!


こちらからは隠れて見えないが、『彼女』の双剣がそれを受け流しているさまがありありと想像できる。


災厄が大きく振りかぶり、三本の剣をそれぞれ振り下ろしたところで、『彼女』は声を上げた。

「ボーザック! お願い!」


そして、そのまま。

たん、と。


彼女が踊るような足取りで、災厄の後ろ……つまり俺たちのほうへと回り込む。


「任せといて! たあぁっ!」

同時に、向こう側で白い大剣が振り下ろされたのが見えた。


「大丈夫!? ハルトく……、んん?」

ひらりとこっちに来た彼女が、俺を振り返り……この状況に気付く。


「やあ、疾風の。こんなところで会うとは奇遇だね」

剣を降ろし、にこりと笑う優男。

そのきらきらした仕草がやたら目に付いて、俺はふんと鼻を鳴らした。


「…………シュヴァリエ? えっ? が、ガイルディアさんも!」


俺は、これでもかというほど見開かれている彼女のエメラルドグリーンの双眸に、思わず笑ってしまった。


「俺は、見ての通りげんなりしてるところ」

俺が言うと、彼女……疾風のディティアは、後ろの災厄とこっちへと何度か視線を往復させて、呻いた。


「ど、どういう状況……なのかな」


******


とにかく、災厄の後ろからやって来たのは勿論、白薔薇の皆だった。

どうやら八つの道がある部屋が、災厄が俺を追って移動したことにより、また通れるようになったらしい。


合流した皆はフェンに匂いを辿らせて、俺を追いかけてくれたのだ。


ところが、拠点に向かうと思いきや、俺が途中で道を間違ったもんだから、なにかあったんじゃないかと考えたようで。

それはもう、全力で来てくれたという。


どうしてシュヴァリエたちグロリアスがいるのかは俺もよくわからなかったんで、説明は後回し。


災厄の向こう側にいるグランたちにも指示を出して、俺とディティア、爆風、グロリアスが災厄の前を。

グラン、ボーザック、ファルーア、フェンが後ろを。


俺たちはこの陣形を保ちながら、拠点に向かうことになった。




どう見ても金曜日分が更新できていなかったので、これが金曜日分です。

すみません。


よろしくお願いします!

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