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逆鱗のハルトⅡ  作者:
267/308

虫けらを屠るには。②

◇◇◇


「おおおっらああぁッ!」


グランの強烈な一撃が、メイジらしき甲冑を捕らえた。

杖から放たれかけていた炎が、飛龍タイラントの角でできた大盾越しに、至近距離で弾ける。


炎が散り果てたあと、大盾に身を隠していたグランがにやりと笑った。

「……ッ、は、さすが龍の角だな! 炎くらいじゃなんともねぇか!」


そのとき、グランの横、ファルーアの放った炎の玉がすり抜けるようにして、甲冑の手元に炸裂。


ダァンッ!


派手な音がして、甲冑の手から杖が弾き飛ぶ。


「うおぉ!? ファルーア! 危ねぇだろ!」

「あら、炎くらいなんともないんでしょう?」


余裕そうなのは構わないけど……気が散るなぁ。


俺はふたりの会話を聞きながら、目の前の甲冑と組するボーザックを援護していた。


相手も大剣で、その斬り合いは恐ろしく迫力がある。

……甲冑を着込んでいるってのに、その動きは、やっぱり異常だ。


肉体強化しても拮抗する力に、改めて血結晶の効果を実感する。


「やあぁッ!」


ボーザックの一撃が、右下から左上へ白い線を描く。


甲冑は、大剣を振り下ろすことでこれに対抗。

鈍い音と共に刃がぶつかり、ふたりともが剣を弾かれ……いや。


ボーザックは、弾かれる前提だ。


瞬時に大剣の柄を逆手に持ち替えると、右回りにぐるりと体を回して、左から右へと剣を振り抜いた!


ガアァァンッ!


甲冑の右の脇腹に、強烈な一撃。


「ハルト!」

「任せとけ!」


蹌踉めく甲冑の、その隙を……逃すわけがない!

俺は体を低くして一気に距離を詰め、左手にバフを練り上げた。


「五感アップ! 五感アップ! はあぁッ!」


グワアァァンッ!


右の剣で繰り出す、兜への一撃。

聴覚も痛覚も上がった状態で、それは相当な衝撃となる。


甲冑が、ぐらりと傾いで……倒れた。

息を詰め、そいつが動かないことを確認すると、ボーザックは大剣をゆるりと下ろす。


「ふうー。よし、次行こう。逆鱗のハルト!」

「ああ。さっさと災厄まで行かないとな。不屈のボーザック!」


ガツンとお互いの右腕を交差させ、俺たちは次の目標へと走る。


……俺たち白薔薇は、甲冑の処理を受け持つことにしたんだ。

甲冑と対峙していた部隊を災厄へと向かわせ、予定通り配置に付いてもらうのだ。


落とし穴を囲むような配置は、すでに形になりつつある。

何度も爆発音はこだましているが、災厄は穴から這い上がれないのだろう。


アルバニアスフィーリアは結局見付けることができなかったんで、そっちの指揮はカムイたちユーグルに任せてある。


あの短時間だ、そんなに遠くには行っていないはずなのに……どこに行ったのか。

もしかしたら、俺とディティアに向けて矢を放っていたのはアルバスではなく、甲冑のうちのひとりで……本人はさっさと逃げたのかもしれないけど。


そう思いながらも、深く考えるだけの余裕はない。


ボーザックとふたりで次の甲冑を地面に叩きつけ、俺はぐるっとあたりを見回した。

少し離れた場所、吹き荒れる風が目に入る。


「……ふっ、は!」

ディティアはフェンと一緒に、甲冑相手に飛ぶように舞っていた。

連携は十分。

疾風のごとく双剣が閃いたと思ったら、背後から銀の風……フェンの体当たりが襲い掛かるのだ。


このふたりは本当に速い。

相手は長剣を持っていたが、一向に捉えきれなかった。


「あっちは大丈夫そうだねー」

ボーザックが苦笑いをこぼす。


「そうみたいだな。……甲冑はあらかた片付いたみたいだ」

応えて、俺は肩を竦めてみせる。


グランとファルーアの相手する甲冑と、ディティアの相手する甲冑……残りはそのふたり。


甲冑なんて着ていなかったら、実はもっと速かったりするんじゃないか? とは思うけど、脱ぐ余裕は相手にもなかったんだろうな。


「俺は災厄のほうに行ってバフかけてくる。あっちは頼んだ」

俺が言うと、ボーザックは大きく頷いて、グランのほうを見た。


「わかった。……気を付けてね、ハルト」

「おう」


踵を返し、地面を蹴って駆け出す。


見上げれば、上空にはユーグルたちがヤールウインドに乗ってくるくると飛び交い、様子を見てくれているのが見える。


冒険者とトレージャーハンターたちは数組に分かれ、災厄の爆弾が届かない距離に、ほぼ等間隔で並んでいた。

怪我人も十人ほどいたけど、ヒーラーたちのお陰でなんとか戦闘不能者は出さずに済んだ。

あれだけの強さの甲冑と対峙してこれなら、上々だろう。


そのなか、金色の髪に白いマント、青い鎧を纏った男を見付けて、俺は彼の名前を口にする。


「シエリア!」

「ハルト君! よかった、怪我はないですか?」

「ああ、大丈夫!」


振り返った三白眼のシエリアは、その隣にいた大きな女性とともにこっちにやって来た。

その大柄な女性は勿論、雄姿のラウジャだ。

「そっちは上手くいったようだね」

豪快に笑う歴戦の猛者は、小さめの戦斧をぐるんと回して言う。


俺はしっかりと頷きを返し、言葉を紡いだ。


「ああ、勿論。……それじゃあ、こっちも災厄の討伐といこうか!」


言いながら、手の上にバフを広げていく。

この作戦で重要な位置を任せるのは、メイジたちである。


……だから、必要なのは……。


「いくぞ! 威力アップ、持久力アップ!」


月曜分の更新です!

いつもありがとうございます。

よろしくおねがいします!

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