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逆鱗のハルトⅡ  作者:
265/308

進む先に見えるもの。⑥

******


進む先に見えるものは、赤い旗と鈍色の鎧たち。そして、入り乱れる冒険者と、トレージャーハンター。

明らかに、甲冑の奴らがほかの人を襲っている。


俺の予想は、確信へと変わった。


『――!』


後方からは、歓喜に満ち溢れた嘶きを発する、災厄の破壊獣ナディルアーダ。


「嘘……」

ディティアの呟きが、流れる空気に辛うじて耳に届く。


「ディティア、落とし穴に災厄を落として、皆の援護に行くぞ。敵はアルバスだ」

言うと、彼女は唇を噛んで、真剣な表情で頷きを返す。


晴れ渡った空とは反対に、禍々しい空気が溢れているようだった。


もうすぐ旗の場所に辿り着く。

俺と輸送龍は大きく旋回し、ディティアだけを残すことになる。


なら、俺は『アルバス』をなんとかしなければならない。


「ハルト、ディティア!」

頭上に影が落ち、セシリウルの呼び声がしたのはそのときだ。

「皆が……戦って……どうしてっ」

焦った声に、俺はさらに冷静になった。


グランの嫌な予感ってのを聞いていたから、落ち着いていられるのかもしれない。

……きっと、皆も戦っているはずだ。


そんなことを思い、セシリウルに告げる。

「わかってる。……とにかく、俺たちは災厄を穴に落とすのが優先だ。セシリウル、皆を援護しながらアルバニアスフィーリアを探してくれ! あいつが……アルバスだ」


「……! アル、バニア……スフィーリア様? ……く、そういうことなのですね……!」

セシリウルは、すぐに理解してくれたようだ。


「ああ。……五感アップ! 音や光には気を付けてくれ!」

「わかりました! もし見付けたら、矢を妨害します!」

広げたバフは、俺とセシリウルを包む。

彼女はヤールウインドを操って、ばさり、と大きな羽音を残し、すさまじい速さで前方へと飛んでいった。


……俺も爆弾には気を付けないと。


後方の強大な気配に気を取られずに、前方のアルバスの気配を見付けなければならない。


そのとき、迫る赤い旗を見て、ディティアが体勢を変えた。

『跳ぶ』のだ。


「ハルト君!」

「わかった。気を付けろよ!」


俺が伸ばした左手には、光るエメラルド。

彼女は右手を伸ばし、俺の拳を打つ。


「……行きます!」


タンッ……


跳んだディティアが、一気に後方に消える。

俺は輸送龍を右に旋回させ、彼女の気配を感じながら、前方に目を凝らす。


思えば、アルバニアスフィーリア……アルは、自身がアルバスだってことを隠してなどいなかったのかもしれない。


名前も、弓の腕前も、顔すら堂々と晒していたのだから。


「くそ……絶対に捕まえてやる!」


矢の攻撃は止んでいるが、ディティアから遠く離れるわけにはいかない。

輸送龍たちの速度を落としてざっと見回し、アルバスがいないのを確認した俺は、落とし穴の先にグランたちを見付けた。


甲冑たちを落とし穴に近付けないよう、立ち回っているのだ。

なんとか持ちこたえているように見えるけど、甲冑が増えれば危なくなってしまう。


さすがにバフは届かない。

せめて誰かを援護に回すとか……なにかできることはないか……!?


『キュルルッ』


必死に考えていると、首を軽く捻って、輸送龍がちらと俺を見た。

「行くか?」と聞かれているような気がして、驚いた俺は思わず話しかける。


「……グランたちがわかるのか?」

『ピュイッ』


輸送龍は首を上下に振り、それを合図に、前の四頭が加速した。


「おぉ……」

黒い龍が、まるでうねる波のようにグランたちの元へと突っ込んでいく。


統率がとれた動きに、場違いだけど感心してしまうほどだ。


彼らが甲冑をなぎ倒すのを見て、俺は意識を引き戻した。


ディティアが、災厄の正面で双剣を構えている……その後ろは、落とし穴だ。

彼女の重さでは落ちない網が渡された穴は、草を敷くことで隠されていた。


ドンッ……


災厄から、爆弾が放たれる。

俺は自分の五感アップをかき消して、速度アップと脚力アップをそれぞれ二重にした。


いざとなったら、俺が飛び出して彼女を守るんだ……!


「はっ!」

しかし、疾風のディティアの双剣が閃いて、腹の部分で爆弾を難なく弾き返し……って、おいおい!


爆弾は災厄のほうへと再び飛んで、弾けた。

ズドンと衝撃が走って、土煙が立ち上る。


「き、気を付けるよう言ったのに!」

彼女のあまりの大胆さに、肝が冷えた。


確かに爆弾は黄色っぽく光っていて、紅くはなかったけど……衝撃で爆発する可能性は十分にあるはずだ。


『――――!』

災厄が大きく咆え、ディティアに向かって突進する。


ディティアはするりと踵を返すと、災厄を『その場所』に誘導して、思い切り前方へと跳んだ。


彼女を追う災厄の体が、頭のほうからずるりと沈んだかのように見え――。


ず、どどどぉぉぉっ!


一気に見えなくなると同時に、再び土煙。


「やった、か……!?」

声に出しつつ、俺は輸送龍をディティアのほうに向けた。



本日分です!

よろしくお願いします!

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