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逆鱗のハルトⅡ  作者:
242/308

黒い龍とは友達です。①

******


結局、演説は行った。

治安部隊は二十八人。まだまだ人手は足りていなかったからだ。


トレージャーハンター協会本部前の広場……俺たちが少し前まで殴り合っていた場所に、戦闘専門のトレージャーハンターが中心となり、探索専門の人たちも集められた。


建物の二階、大きな窓を開け、そこからの演説。

宣言通り、俺たちはひとりひとり『災厄』が危険なことを訴え、この討伐がどれほどの被害になるのかわからないことを語ったんだけど。


意外にも多くのトレージャーハンターが参加を表明して、俺たちは困惑を隠せなかった。


自由国家カサンドラ――マルレイユの話した通り、ここが夢追い人の集まる国だということが、はっきりわかる結果だ。


そのあとは、マルレイユとロムンから作戦の説明が行われた。


……トレージャーハンターたちは、ほとんどが砂漠の討伐へと割り当てられることになっており、ユーグルたちの偵察を待ってからの出発が予定されている。

俺たちが行くソードラ王国のトレイユに向かうのは、アイシャ出身……つまり、アルヴィア帝国から差別をされるものたちと、そのパーティーである。


途中から合流するならいざ知らず、最初から帝国兵とアイシャの人間を一緒にさせては混乱を来すかもしれないとの配慮だというけど……ちょっと納得いかないよな。

……そのなかに、シエリアたちの姿もあるのは心強いんだけどさ。


『カサンドラ首都復興は災厄を倒さなければ終わらない……そうですね?』

シエリアはここに集められたときに、そう言った。

俺は、素直に肯定するしかなかった。

そもそも、ここで隠すのはシエリアに失礼だ。


爆風はすでに樹海に向けて発っていて、俺たちもこのあと、輸送龍で一足先に移動を開始することになっている。


「シエリアたちに挨拶してくるな」

俺は皆にそう告げて、シエリアに声をかけることにした。

「おう、行ってこい」

グランが快く頷いてくれて、俺は広場へと移動する。


トレージャーハンターたちは一度解散となったため、広場は疎らに人がいる程度で、すぐに三白眼の強面を見つけることができた。


彼のそばには、女性ではあるが歴戦の猛者たる風貌の雄姿のラウジャ、オレンジ髪に小麦色の肌をしたシュレイス、黒髪を丸く整えたテール、深緑色の髪のラミュース、最後に、巻き込まれ体質なのであろう、短く刈った茶髪に紅眼のダンテが控えている。


「シエリア」

「ハルト君! ……白薔薇の演説、素晴らしかったですね」

「そうか? まあほとんどグランが話してくれたけどな」

言いながら、俺がちょんと右の拳を出すと、シエリアは嬉しそうに自分の右手をコツンとぶつけた。


「慣れてきたじゃないか、シエリア」

一歩後ろに控えていたラウジャが豪快に笑うと、その横で、小麦色の腕を組みながらシュレイスが馬鹿にしたような笑みを浮かべる。


「本当、王子様って世間知らずよね!」

「お恥ずかしながら……。よかったらこれからも教えてください、シュレイス」

シエリアが三白眼を細める。

笑ってる……んだよな、たぶん。

すると、シュレイスは苦虫を噛み潰したような顔をして、そっぽを向いてしまった。


耳が赤い。


「……? シュレイス、熱でもあるのか? 真っ赤だけど」

不思議に思って聞くと、彼女はびくりと肩を跳ねさせて、ギリギリと音が聞こえそうなほど固い動きで、こっちを振り返った。

「な、なな、なに言ってるのハルト。あんた、馬鹿なの? いや、そうか。馬鹿だったわね!」

「はあ? 心配してるんだぞ」

「……発想の方向性が違うんですよねぇ、ハルトさんは~」

微笑ましいものでも見るかのように、テールがほんわりと笑う。


ますますわけがわからないぞ。

首を捻っていると、ラウジャが腰に両手を当て、楽しそうに言った。

「はっは! 逆鱗、やっぱあんた面白いよ!」


……なんだよ、面白いって。不本意なんだけど。


顔を顰めていると、ラウジャの分厚い手のひらが、バシバシと加減を知らない強さで俺の肩に襲いかかった。


彼女は満足したのか二度頷くと、俺の背中側を覗き込むような仕草をする。

「そういえば、爆風のガイルディアはどこにいるんだい?」

「ああ。爆風は、一体目……樹海の災厄に向かった。あっちはユーグルの偵察と一緒に移動することになってるからさ。俺たち白薔薇もこのあと、そっちより先に輸送龍で出発するよ」


「……そうかい、爆風のガイルディアはそっちの組だったのかい。……挨拶くらいしておきたかったんだけどねぇ」


ラウジャは至極残念そうに呟いて、頭にぐるりと巻いた細い紐をぎゅっと縛り直した。


「まあ、なら仕方ないね。……あたしたちでトレージャーハンターたちは纏めて連れていくよ。先に行って、のんびりしてな」


「ああ。助かるよ。……じゃあシエリア、また二カ月後」

「はい。気を付けて」

「そっちも」


――俺たちはもう一度拳を突き合わせて、お互い背を向けた。




昨日更新できませんでしたのでその分です!

よろしくお願いします!

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