表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルトⅡ  作者:
223/308

幸運の星が輝くので。⑥

******


各地に封印されているという災厄の討伐を手伝うなら、古代の歴史とことの顛末をちょっとくらい教えてやる……と、ロディウルは言った。


俺たちがアイシャで災厄の黒龍アドラノードを屠った、そのあとのことだ。


それを知ったのは、王国騎士団長バルハルーアから渡された手紙からだったと思う。


……ロディウルは、ゆっくりと……その物語を紡ぎ出した。


◇◇◇


昔。

ずっと、ずっと昔のこと。


古代都市国家と呼ばれる魔法を使わない者たちの国と、魔法都市国家と呼ばれる魔法を使う者たちの国は、戦火の真っ只中にいた。


戦場は、トールシャと、アイシャ。

特にアイシャは古代都市国家の中枢であり、お互いが戦力を投じた総力戦の舞台となった。


魔法都市国家の者は自らの肉体を贄として『災厄』たちを産み落としたが、古代都市国家の者たちはそれすら滅するだけの力があったという。


――ところが。


アイシャで、おかしなことが起こった。

謎の病……本来、人が持っていた魔力がことごとく奪われるものが、一気に広まったのである。


その病は、人の命は勿論のこと、魔力を糧とする災厄たちの理性までも奪ってしまった。


……暴走した災厄は、まさにその名の通り人々に災厄をもたらす欲望の獣と化し、魔法都市国家も、古代都市国家も、暴れ狂う災厄により次々と破壊されていった。

最終的には、魔法都市国家と古代都市国家は手を結ぶこととなり、贄を用いて災厄を倒そうと試みた。


とはいえ、ここまでくるのにも、長い長い時間を要し……全ての災厄を討伐できるだけの力は、既に失われてしまっていたのだ。


彼らは残った災厄を各地に封印し、災厄への魔力供給が途絶え、息絶えるまで長い長い時間、『監視』することを選んだ。


それが、歴史の一端だった。


◇◇◇


「その中心付近に災厄の黒龍アドラノードを眠らせたんが、知っての通りアイシャや。あの災厄が、大きさではおそらく一番やからな」


その監視役に選ばれた四人が、それぞれの国の王と皇帝となったのがアイシャの四国の始まりだ、と……ロディウルはなんでもないことのように言い切る。


……確かに、アイシャの四国には遠い昔の物語が機密事項として伝わっていたしな。

ギルドの始まりも、四国の平和を第三者として守るためだったはずだ。


必要だったんだろう。

いつか、万が一が起きたときのために……国を跨いで戦う存在が。


「災厄が最初に誕生したのはアイシャやった。そして……病を『人の手で作った』のもアイシャでの出来事やろな」


腕組みをするロディウルに、俺は頷きながら返す。

「じゃあ、咎人って呼ばれてるのは……災厄を作り、毒を作ったからなのか?」

ロディウルは眉をひそめる。


「毒やって? はーん、サーディアスの奴やな? ……本当の咎はそれやないで。……忘れたからや、災厄の存在を」

「……長い年月の中で、使命を忘れたことが罪だと?」

隣のファルーアが、長い金の髪を右手で耳にかける。


ロディウルは頷いた。


「俺らユーグルはな、各国が使命を忘れんための監視役……歴史を見守る民なんや。アイシャとはずっと連絡を取り合ってきたんやけど……ここ何代かの王は連絡を忘れ、災厄を忘れ、民たちは全てを『遺物』にしてもうた。……せやから、咎人。……いつの間にかトールシャの一部にも呼び名だけ広まってるみたいやな」


「確かに、語り継がれていたことが断片的すぎて苦労したわね。けれど、それならトールシャの民はどうなのかしら。災厄を覚えている者なんて……あぁ、いるわね」

ファルーアが眉をひそめる。


そのあとは、グランが引き継いだ。


「サーディアスと、アルバスって奴か。……お前たち、ユーグルもだな?」


ロディウルは唇の端をつり上げて、満足そうに答える。

「ええぞ、さすが、この俺が見込んだだけあるわー!」


「えー、その割に、迎えにも来てくれなかったよねー?」

ボーザックが苦笑する。

ロディウルはそれに対して「いやいやいや」と突っ込んで、びっ、と右の人差し指を立てた。


「言うたやろ、手伝うんやったら……って! 既に各地で嫌な動きがあるんやで、その監視役が、来るかわからない冒険者迎えに行かれへんわー!」

「そうか? お前の影……トゥトゥとかが来ればいいじゃねぇか」

グランは顎髭を擦りながら、ロディウルのほうへ上半身を乗り出し、低い声で続ける。


「……本当は、俺たちの助けなんていらねぇくらいには強いんだろう? お前らは」


その一言に、ロディウルは苦虫をかみつぶしたような顔をした。


――部屋に満ちる空気が、ピリッと緊張めいたものに変わっていく。


俺は、トゥトゥたちが災厄の毒霧を屠った魔法を思い出し、ひやりとして右手で左腕を擦る。

……彼らの『血』のことも……『血結晶』のことも、聞かなければならないだろう。


ところが、そんな空気をぶった切った奴がいた。


「……あの。皆さんは、災厄を倒すために動いているんですよね? 聞けば、サーディアスは災厄を起こした張本人。そのサーディアスに……僕はどうして暗殺されかけていたんでしょうか?」


肩にかかりそうな金の髪。つり上がった冷たい蒼色の三白眼。

濃い蒼の鎧に白いマントの、シエリアだった。




ごめんなさい忙しくて飛び飛びに!

平日に二日間以上あくときは活動報告にあげますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ