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逆鱗のハルトⅡ  作者:
207/308

再会はそのあとで。④

******


トレージャーハンター協会本部で報告をした俺たちは、もう協会が動いていたことを知ったんだけど。


ユーグルたちのところに向かうのに、次期会長候補っていうサーディアスを同行させてほしいってお願いされたんだ。


まあ、トレージャーハンター協会からしたら、飛龍タイラントを倒したなんていっても、よくは知らない冒険者っていうのが不安だったかもだしねー。

勿論いいよって答えたけどさ。


で、首都から平原をしばらく行って、山を越えた先にユーグルがいるらしくて、道中はいろんな話を……俺たち白薔薇の物語もね、した。


でも途中で、ちょっと気になることがあったんだ。

フェンが、サーディアスと距離をとってるんだよー。

山裾に広がる森に入ってからは、ふらっといなくなることも増えちゃって。


俺、気になってフェンに声かけたの。

そしたら、フェンが「ついてこい」って言うみたいにするから、グランに話して俺とティアで付いていったんだ。


そしたらさ、いたんだよ。

ユーグルが!

びっくりしたよね。


彼らはフェンのことを「賢い賢い」ってめちゃくちゃ褒めてから「ロディウルが言うには、サーディアスはきな臭い。だから見張っていた。気を付けろ」って教えてくれた。


しかも、すぐには判断できないってのはわかってたみたいで、しばらくは気付かれない距離を保って様子を見るって言ってくれてさー。

なにかあればフェンが伝達役になることで話がまとまって。


グランとファルーアにも話して……俺たちは先に進むことを決めたわけ。


そんで深い谷に辿り着いて、大きな吊り橋があるところで……サーディアスが動いた。


まあ、聞いての通りなんだけどさ、橋を落とされたんだよね……あいつ、自分は橋を見張るからって言って、俺たちが真ん中にいるあたりで血結晶使って爆破したんだよ!

怪しいとは思ってたから、フェンを先行させてたんだけどさ。


さすがにそれはやりすぎだろって思うくらい大きな爆発と、土煙が上がった。


橋は一気に落下して、俺たちは谷底へ……落ちるはずだった。


でも、サーディアスは詰めが甘かったんだ。


落ちる途中、俺たちは待機してたユーグルに助けられて、そのまま谷の途中に突き出した大きな岩の下に隠れたんだよね。


でも、俺たちが谷底へ『確実に』落ちたことを確認しなかったんだよあいつ。


そんなわけで、サーディアスをやり過ごすことは簡単だった。

俺たちは一旦ユーグルの里へと招かれたところで、災厄の毒霧が動き出したことを知ったんだ。


災厄はカサンドラ首都を狙っていること、ただし、地下を通っていて位置が掴めないことを聞いて、俺たちは考えた。


さっきも言ったけど、トレージャーハンター協会本部がサーディアスと関わっているかもしれない。

だからハルトをどこかで見つけないとならないし、同時に、災厄の毒霧と戦うのに、ハルトがいてくれないとってなってさ。


最終的に俺たちはハルト捜しと首都防衛を一度に行うことにして、分かれて動いたってわけ。


******


そこまで話したボーザックが、歩みを止める。

俺もグランも、重心を落として、武器を構えた。


「ちょうど話も終わったし、いい感じのご登場だね」

にやり、と笑みを浮かべるボーザック。


ひび割れた壁の家屋、その向こうから、なにかがやって来る。

うっすらと立ち込めた煙で、視界は悪かった。


「……」

俺たちはそいつが煙の中からゆっくりと這いだしてくるのを、じっと待ち構える。


……大きい。


ずし、ずし、と重たい足音。

丸々した腹と、その上に鎮座するつるりとした大きな頭。少しだけ先の尖った耳。

俺が戦った赤ん坊のような容姿の黒い魔物を、そのまま大きくしたような奴が、真っ赤な眼を光らせながら出てきた。


――相手は、既に俺たちのことを獲物と認識しているようだ。

こちらを捉えた表情は、まるで笑っているかのように口元を歪ませている。


「……こりゃあ、なかなかでかいな」

厳つい巨躯のグランが見上げる大きさ。

腹回りは俺とボーザックが両腕を広げても囲みきれないかもしれない。


魔物は両腕を広げると、牙を剥き……。


『キシャアアァ――ッ!』


「うぅっ……肉体強化、肉体強化、肉体硬化!」

五感を上げていた俺たちの耳に、魔物の雄叫びが突き刺さった。

慌ててバフをかけ直したけど、耳の奥がじーんと熱を帯びる。

「……っ、悪い、大丈夫か!?」

「おうよ!」

「大丈夫、聞こえるよハルト!」

ふたりの頼もしい返事に、思わず笑みがこぼれる。


久しぶりの感覚に、正直、めちゃくちゃ気持ちが昂ぶっていた。


「行くぞハルト、ボーザック!」

「任せといてー!」

「おう!」

グランの大声に、負けじと返し、俺たちは踏み切る。


「うおおおぉっ!」


ガイィィンッ!


魔物の右爪とグランの白薔薇の大盾がぶつかり合う。

ぎりぎりと拮抗したかに見えたが、そのまま、魔物は左の腕を振り上げた。


瞬間。


「……ふっ!」

グランが大きく身を引いて躱す。


振り切られた爪が空を裂き、勢い余った体を戻そうと上半身を引いた魔物の懐に、ボーザックが飛び込んだ。

その体の左側に大剣が構えられていて、柄はしっかりと両手で握り締められている。


「やああぁぁっ!」


ザンッ……!


気合一閃、横薙ぎに白い刃が振り抜かれた。


『キイイイイィィッ!』

腹を裂いたその一撃に、魔物が絶叫する。


俺はボーザックが下がるのと同時に前に飛び出し、傷を押さえて体を丸める魔物へと双剣を振り上げた。


「うおおぉぉっ! とどめだああぁーッ!」


ドンッ……!


俺は、魔物の眉間に――剣を突き立てた。



本日……ちょっと過ぎましたが!……投稿です。

いつもありがとうございます!

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