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逆鱗のハルトⅡ  作者:
201/308

閃くのは誰が剣か。④

ダンッ!


着地した俺は、そのまま一直線にサーディアスへと踏み切る。


「あはははっ、逆鱗にでも触れたかい?」

サーディアスは太めの長剣を抜き放ち、かざした。

それを合図に、後ろに控えていた町人風の男が飛び出してくる。


「おおおっ!」


ガキィンッ!


俺の双剣と、男の篭手から伸びた刃が交わる。


びりびりとした感覚に俺はすぐさま身を捻るようにして蹴りを繰り出した。

力比べでもしようもんなら、間違いなく押し負ける。

前のときは肉体強化を三重にしてやっとだったから、今の二重では無理だ。

けれど今はサーディアスもいる。反応速度と速度は残しておきたかった。


蹴りは男の左腕で受け止められ、右腕の刃が振り下ろされる。

「っ、は!」

俺は転じて左の双剣の柄を男の顔目掛けて突き出した。


仰け反るようにしてそれを避けた男の体勢が崩れる。

追い掛けようとして……肌が粟立つような殺気に、俺は飛び離れた。


ざっ……! 


間に飛び込んできたのは、サーディアス。

間髪入れず、流れるように繰り出される剣戟を、俺はなんとか双剣で弾き返す。


こいつ……強い。

血結晶の粉を呑んでいるような雰囲気は全くないのに。

反応速度と速度を上げていなかったら、太刀打ちできないかもしれない。


焦ったら思う壷だってわかっているのに、額に嫌な汗がにじむ。


サーディアスはギラギラとした蒼い眼を細め、余裕たっぷりに言った。

「遅い、遅いな、君は! 逆鱗のハルト!」

「……っ」

「疾風のディティア、彼女はなかなか速かった! バフがあるのに足元にも及ばないとは……君を見て確信したよ。やはり白薔薇は期待外れだ」

「黙れよ!」

怒鳴って、双剣を何度も閃かせる。

サーディアスの長剣が、俺の攻撃を弾き、受け流した。


――こいつの腕の一本、足の一本、なんでもいい。

とにかく傷を穿ち、無力化させて……皆のところへ行かないと。

山だか谷だかは知らないけど、あいつらはそんなことじゃやられない。だから、きっと……。


「まるで枯葉のようだったよ、谷底へと舞い落ちるさまは!」

嘲笑うかのように口元を歪め、サーディアスが踏み込んでくる。

「……このッ」

許せなかった。あいつらを馬鹿にする、その言葉が。


俺は向かってくるサーディアスを真っ向から受け止めようとして……飛び退く。


「……ッ、く」

しかし、少し遅かった。


左から跳んできた町人風の男の刃が、俺の左腕をざっくりと抉る。

鮮血がぱっと散って、思わず呻いてしまった。


「う、ああぁッ……!」

ぼたぼたっ、と、広場の土に俺の血が滴る。 


双剣はなんとか握ったまま堪えてたけど、これじゃ攻撃すらままならない。


治癒活性で時間をかせぐか? どうする……!


剣を握った右手で傷を押さえながら必死に考えたけど、ほかに案なんて考えつかない。指の隙間から、血がどんどん溢れてくる。


……そんな俺の周りを残りの奴らがじわじわと囲み始めた。


まだか、マルレイユ……!


俺は唇を噛んだ。


きりが悪いので短めにしてあります。

昨日分です!


よろしくお願いしますー!

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