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逆鱗のハルトⅡ  作者:
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破壊を司るもの。③

放たれた矢の如く、爆風は『硬いほう』の男へと走る。


まだだ、まだ引き付けろ!

……効果時間が『短い』ことはわかっている。俺が狙うのは、爆風が双剣を振るう、その瞬間だ。


体中を巡る熱い血に促されるように、自分への不甲斐なさが、手のひらに形となって練り上げられていく。


今なら、わかる。……これは、たとえひとりで戦うことになっても、俺がまた皆に会うために必要な力だ。

皆を守るためであり、弱い自分を守るために、使わなくてはならない。


爆風は勢いを殺すことなく、男へと肉迫した。

閃く白と黒の双剣。


――今だ!


「おおお! 肉 体 軟 化ッ!」

「ハアァッ!」


気合一閃。

爆風の一撃が、男の長剣にぶつかる……かに見えた。

しかし身を捻った爆風は、男の急所……顎へと、柄で強烈な一撃を叩き込んだ。


「がっ……は……」

ぐらり、と男が蹌踉めく。

眼を凝らすと、デバフが薄くなるのがわかった。

……やっぱり、効果時間が短い。


爆風はもう一歩踏み込み、伸び上がるようにして跳ぶと……。


「……肉体軟化ッ!」

「いい反応だ、逆鱗!」


ドゴオォッ!


派手な音を立てて、男を地面へ叩きつけた。


「ぐ、う……」

……沈黙。


「硬くなければたいしたことはないな」

吐き捨てるように呟いて、ゆらり、と爆風が向き直る。


『跳ぶほう』の男が、後退った。


「合わせられるな?」

「当たり前だろ」

爆風の言葉にひと言返して、俺は唇の端を持ち上げてみせる。


『跳ぶほう』の男は、じりじりと後退。

その後ろで、小さな苔玉が紅く光っているのが見えた。

……いつの間にかあんな色になってたのか。


嫌な感じだった。まるで、ファルーアの作る炎の玉のような色。

男はその横まで下がると、ちら、と小さな苔玉を確認する。


「行くぞ!」

爆風が再び駆け出す。

『跳ぶ』男は、その瞬間、足元の苔玉を蹴った。

凄まじい脚力で放たれた苔玉は、真っ直ぐに爆風へと向かう。


「……む!」

双剣でそれを受け止めようと構えた爆風は、なにか感じたのか、突然回避を選択する。


ぞわり、と肌が粟立った。


ドッ…………ゴバアァッ!


避けた爆風のすぐ横で、苔玉が爆発。

かなりの威力に見えたそれは、炎と煙と一緒に、眼に刺さるような光と熱を噴き上げた。


視界が霞む。


「爆風!……うぉあぁっ!」

俺は咄嗟に駆け出して……吹っ飛ばされた。


俺がいたあたりに男が蹴り出した、別の苔玉が弾けたのだ。


爆音に、キィン、と耳鳴りがする。

何度か地面を転がって、俺は土と血の混ざった味に顔をしかめた。

ただでさえ痛む頬が再度打ち付けられて、涙が滲む。


「う、くそ……」


もうもうと立ち込める煙は、ツンとする臭いを含んでいる。

……あまり嗅がないほうがいいかもしれない。


なにも見えない中、追撃を警戒したけど……それはなかった。

どうやら、男は逃げたようだ。


「爆風……!」

薄れていく煙の中、声をあげる。

……返事がない。


「おい、爆風? 聞こえて……」

あたりを見回し、俺は……少し先に蹲る人影を見付けた。

全身が、冷や水を浴びせられたように冷たくなる。


「……っ! おい!」

駆け寄ると、右肩から腕にかけてひどい火傷を負っているのがわかった。咄嗟に顔を庇ったのかもしれない。

至近距離での爆発の威力から考えれば、これだけで済んだなら奇跡だろう。


「治癒活性、治癒活性!」

すぐさまバフを上書きし正面に回り込むと、爆風は何度か瞬きをして、やたらはきはきと言葉を紡いだ。

「耳と眼がやられた、少しすれば、治るはずだ。……まさか爆弾とはな」

「……よかった、火傷は大丈夫、俺でもなんとか出来そうだ。ひとりは捕まえたし、いったんここを離れよう」

ゆっくりと治っていく火傷を確認しながら、ほっとして声をかけると、爆風は苦笑を返して肩を竦めた。


……あーそうか。今はたぶん、耳鳴りがして聞こえないんだな。やたらはきはき話したのはそのせいだろう。


気が付いて、出口を指差す。

爆風は理解したのか頷くと、立ち上がった。


眼はそれなりに見えているようだ。


俺はとりあえず昏倒させた奴の手足を応急処置用の包帯できつく縛って、担ぎ上げる。

肉体強化の二重をかけ直せば、ひとりくらいは楽に運べそうだ。


……歩を進めた先には、紅くなった小さな苔玉が三つ転がっていた。


「衝撃を、加えると、爆発するのかもしれんな」

爆風がはきはきと言うから、俺は大袈裟に頷いてみせる。


ちらと確認すると、大きな苔玉に埋め込まれた魔力結晶は、既に消え去っていた。

……苔が『食べた』のだろうか……。


この大きな苔玉は、まだうすぼんやりした緑色だけど……もしも足元の小さな苔玉と同じ力があるとすれば、これは『爆弾』だ。

しかも、この大きさである。

こんなのが街中で爆発でもしたら、大変なことになってしまう。


そうなる前に、こいつを倒すなりして、なにか手を打たないと……。


……鍵を握るのは、俺が背負ったこの男かもしれない。


「治癒活性」

俺は痛む頬にバフをひとつかけて、転がる麻袋から血結晶をひとつ掴み、洞窟を後にした。


まずはトレージャーハンター協会トレイユ支部長に、報告を入れないとならないだろう。



本日1個目の投稿です!

昨日できませんでしたので、今日の更新は2本立てです。


夜中あたりにまたもう1話いきます!


よろしくお願いします。

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