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逆鱗のハルトⅡ  作者:
178/308

破壊を司るもの。①

******


洞窟はトレイユから一日山脈を登ったあたりにあった。


道らしきものはなく、鬱蒼と茂る下草の中を慎重に進んだ先、一瞬では見逃してしまうような場所である。

カーテンのように垂れた蔦で入り口の半分が隠れていて、その奥は真っ暗な闇が満ちていた。


「うん、やはりバフを重ねられるのは大きいな」

前を歩いていた爆風が小さくこぼす。


……五感アップと魔力感知をそれぞれ二重にしていたので、洞窟が近くなってきた時点で見付けることは容易かったからだ。

知らないで歩いていたら、中々辿り着けなかっただろう。


ここに来る奴等には、何か目印のようなものがあるのかもしれない。


「入口付近には何もないようだな」

「ああ。もっと奥がありそうだ。……でも、大きな気配は感じないな」

「そのようだ。……洞窟の奥から何人なのか何匹なのかはわからないが、いくつかは感じる程度か」

「……」

え、俺、まだ殆ど気配感じないぞ。

驚いて見ると、爆風は「なんだ?」と聞いてくる。

「いや、やっぱすごいんだな、爆風って」

「うん? 急に誉めてくるのはいいが、俺は慣れてるから変な反応はしてやらないぞ」

「いやいや、誰がそんなののために誉めるんだよ……」

がっくり肩を落とすと、爆風はそっと双剣を抜いて、笑った。

「力が抜けたようで何よりだ。……入るぞ、逆鱗」

「……わかった」

俺も爆風に倣い、双剣を抜く。


――災厄がいるなら、ここで仕留めないと。


******


ひんやりとして湿った空気には苔の臭いが混ざっている。

暗い洞窟の中、有り難いことに足場は平らにならされていて、歩くのにはそこまで神経を尖らせないで済んだ。


驚いたのは、所々に薄く光る苔が生えていること。

それは天井だったり、壁だったり、足下だったりもする。薄緑や黄色っぽい色のぼんやりとした光がぽつぽつと並んでいる。


苔は奥に進むほどに段々と数を増して大きくなっていくんだけど、五感アップのせいか、さすがに眩しくなってきた。


「……隠れるのは難しいな」

「ああ。……気配はまだ先みたいだけど、五感アップ消しておくよ」

爆風が頷くのを確認して、俺はバフを消す。

光はやわらいだけど、あたりを照らし出すには充分すぎる苔の量である。

魔力感知はかけなおして、俺たちはさらに奥へと進んだ。


◇◇◇


進むうちに、苔は足場を残して全てを被ってしまった。

幻想的な景色に、なにもなければみとれていたかもしれない。


けど今はそれどころじゃなかった。

奥の方に道の終わりが見え始め、その向こうから、濃い魔力の流れを感じるのだ。


……たぶんあそこには何かがいる。


「俺が先行する。いいか、無茶はするな逆鱗。危険を感じたら逃げろ」

「……それはわかったけど、爆風が逃げないなら俺は逃げないぞ」

鼻を鳴らすと、前を慎重に歩く爆風から笑ったのを感じた。

「運命共同体か、よし乗った」


……実際、敵わないとわかって逃げたことがある。

逃げろと言われて、グランを、ボーザックを、ファルーアを置いて逃げたことが。

最善だったと思ってる。グランがそう判断したのは、間違いじゃないとわかってる。


結果、皆無事だった。でも……あのときの気持ちは二度と味わうつもりはない。


俺は身を屈めて苔の道を進む爆風の背中を、静かに追いかけた。


――そして。


道の奥、巨大な空間に……俺たちは出た。


道は突然すっぱりと終わりを迎え、そこから下へと梯子が降ろされている。梯子の長さは、俺がふたり分くらいだろうか。

そこまで高いわけではないけど、万が一逃げるときには厄介な高さだ。


繋がっていたのは下にも上にも……もちろん左右にも広がった、半球状の空間。


そしてその真ん中には、奇妙なものが『転がって』いた。


「なんだ、あれは……」

「……さあ。けど……間違いなく危険だろうな」

俺と爆風はぴったりと地面に張り付いて空間を覗き込む。


それは、巨大な巨大な苔玉だった。しかも、他の苔同様、ぼんやりと光っている。


「なにかの体に苔が生えたのか、そもそもあれ自体が苔なのか……」

「どっちにしても物騒だろ……」


苔玉の足下には、ふたりの人影。

彼等はなんと、魔力結晶をその苔玉に埋め込んでいる最中だった。

感じた魔力はあれだろう。


ここからだと見にくいけど、男ふたりのようだ。

腰に剣を提げている。


俺は爆風に囁いた。

「他に人はいなそうだな。彼奴らをどうにかしてからあの苔玉を調べよう。……肉体硬化、肉体硬化、速度アップ、反応速度アップ。……飛び降りたら、肉体硬化をひとつ肉体強化にかけ直すよ」


魔力感知を消しバフをかけなおして、俺は思いきり息を吸って、腹に力を入れる。


「行こう!」


昨日投稿できてなかったので投稿です!

よろしくお願いしますー!

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