表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルトⅡ  作者:
174/308

先手必勝です。①

******


俺たちがここまで乗ってきた黒い馬。一頭は家族に引き渡したから、残りは三頭だ。


シエリアたちはふたりで一頭に乗り、草原を横切って北……自由国家カサンドラを目指すことになった。

体力のある大きな馬は、背にラウジャとダンテを同時に乗せても速度を落とさずに走れるらしい。……さすが強靱である。


ただ、少しでも軽くするために、シエリアとシュレイス、ラウジャとラミュース、ダンテとテールという組み合わせにするようだ。


考えてみたら、帝国兵は甲冑だったからな。

重い奴等を乗せて颯爽と駆けるだけの強さを馬に求めたのかもしれない。


俺はシエリアに自由国家カサンドラで『白薔薇』を探すように言って、飛龍タイラントの鱗で作ったディティアのナイフを取り出した。

「……俺を守るようにって、仲間と……ディティアと交換したナイフなんだ。これを見せれば、信じてくれるはずだから。……伝えてくれるか? 他に渡せるものがなかったから、ごめんって」

俺が笑うと、シエリアは困った顔をする。

「その言い方でしたら、これ、大切なんでしょう? 僕に託さなくても……」

「はは。平気だよ、ディティアはそんな心が狭い人じゃないから。小動物みたいで可愛いからさ、きっとはにかんでくれるよ」

「……僕は今、壮絶な惚気を聞かされていますよねハルト君」

「惚気? いや、そうじゃなくて。いつも言ってることだしな。見たらわかると思うよ」

「そういうのを……えっ、ハルト君、いつも言ってるって、本人にですか?」

「えっ、そうだけど」

「……それは……いえ、お目にかかったら聞きます」

シエリアは思いっ切り苦笑して、鱗のナイフを大切そうにしまった。

……なんだよ、それ?


◇◇◇


すぐに発つと決めて、食糧を分配し、俺たちは動く。

燃えた家の魔物は、ラウジャが仕留めてくれた。

『気持ちのいいもんじゃあないからね、逆鱗のハルト、あんたが背負わなくってもいいさ』

なんて、豪快に笑う彼女は、やはり雄姿という2つ名がぴったりだ。


村人にも燃えた家の中の様子を伝え、やって来るであろうトレージャーハンターたちに話すよう言って、村を出る。


広がる草原に、昼を過ぎて傾いた陽が降り注いでいた。頬を撫でる風は柔らかく、何処かから花の香りを運んできた。

悠長なこと言ってる場合じゃないけど、長閑で気持ちいい空気だ。


そんな中、シエリアが俺を呼ぶ。


「……ハルト君」

「うん?」

「ありがとうございます、僕の進む道を示してくれて」

「いや、俺は別になにもしてないけど……」

「ううん。……僕には、ハルト君が眩しくて。楽しかったです、物騒な旅だったかもしれませんが」

「はは、眩しいとか初めて言われた! ……俺も楽しかったよ、またカサンドラでな! だから白薔薇の皆に会ったら、すぐ行くって伝えてくれ」

「はい!」

シエリアは蒼い眼を輝かせ、笑う。

その後ろ、ラウジャが胸を張って大きく頷いた。

「シエリアはあたしに任せときな! ……それじゃあ爆風のガイルディア、そろそろ」

「うん、気を付けて行くといい。……すぐに追い掛けるさ」

「ええ。……じゃあ行くよあんたら!」

「はーい」

彼女の号令に、シュレイスが黒い馬の上で呑気に答える。

シエリアは彼女の後ろに颯爽と跨がって、白いマントを揺らした。


……おお、こう見ると王子様って感じだな。


「シュレイスさん、お姫様みたいだねぇ」

「へあっ? テール、なに言ってくれてんのよ。そんなこと言われたらちょっと……」

「シュレイスさん、あまり動くと支えきれませんよ」

「わっ! あんまりくっつかないでよね王子様!」

「ええ……僕のせいですか……?」


俺は賑やかな一行に笑って、シエリアに拳を突き出した。

「……気を付けて」

「え……えっと?」

「馬鹿ね王子様、こうすんのよ!」


ガツッ!


何故かシュレイスが俺の拳に自分の拳を叩きつけてくる。

かなり痛かったけど、シュレイスがけろっとしているのが癪で意地でも顔には出さないと決めた。


「あ、は、はい! ハルト君も、気を付けて」

そろそろと出された拳に、こつんと拳をぶつける。

シエリアは三白眼を見開いてぱちぱちすると、口元を緩ませた。

……うん、安定の恐さだな。


六人は馬に乗って街道を逸れていく。

俺と爆風も踵を返し、街道に沿って歩き出した。


あと二日か三日もすれば、山脈の麓、トレイユに辿り着けるはずである。

調べ物が終われば、自由国家カサンドラへ向かうことになる。


……皆に会えるのだ。


「よし、気合い入れてこうぜ爆風!」

「はは、急に威勢がよくなったな」


不安もあれば懸念もあるけど。

それでも、やっぱり白薔薇の皆に会えると思うと、心が躍るような気持ちになるらしい。


俺は爆風ににやりと笑ってみせると、バフを広げた。

「持久力アップ、速度アップ、五感アップ!」

「……張り切るのはかまわんが、バテるなよ?」

「任せとけ!」


爆風は俺の応えに歯を見せて笑うと、荷物を背負い直し、歩き出した。



本日分の投稿です!

逆鱗のハルトのポイントもじわじわ増えており、ありがたいばかりです。

いつもありがとうございます。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ