咎人がもたらすものは。⑦
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五葉広場までは、予定通り四日。順調に歩を進めることが出来た。
道中で、待機するトレージャーハンター達を順番に置いてきているので、今はもうラウジャ、シエリア、俺達の部隊しか残っていない。
湿地では途中で雨は降るし、それでも空は曇ったままだし……と、雨季の足音が聞こえてくるかのような状況だ。
早く片付けたいところである。
草と泥の臭いと、何かの生臭さ。身体に纏わりつくような湿気。
その中で、各部隊ごとにそれぞれの広場で待機し、俺はシエリア部隊でハンナと一緒に爆風を待つことになる。
ハンナはラウジャ部隊だから、シエリア部隊で一体、ラウジャ部隊で一体のアダマスイータを分断させたら、そのまま討伐に入るってわけ。
シエリア部隊まで一緒に来ていた爆風が、シャンッと双剣を抜き放った。
「では行くとするか。逆鱗、頼む」
「……速度アップ、速度アップ、速度アップ、五感アップ! バフの時間もあるから早めに戻って来てくれよ……っと」
「爆風のおじ様! どうか気を付けてくださいませ、ですの」
ハンナが俺を押し退けて前に出てくるのを、俺は半ば呆れて眺めた。
背中から腰にかかる太い三つ編みが揺れている。
これからハンナにやってもらうことを考えると、いつも通りの彼女は肝が据わっていると言うべきか。
「気を付けてください」
「こちらは、任せてもらって大丈夫だ」
シエリアとゴウキにも見送られ、爆風はにっと歯を見せて笑うと、文字通り風のように草の間に消えていった。
「……よし、こっちも準備するか。五感アップ!」
俺はまず全員に五感アップを広げ、杖を握り締めて佇んでいるハンナに向き直った。
「ほら、ハンナ。呆けてると爆風の期待に応えられないぞ! ……威力アップ、威力アップ、反応速度アップ」
「う、うるさいですのよ逆鱗! 言われずともやってやりますわ!」
ハンナはびくりと肩を弾ませると、黒いローブの裾を翻してふんっと鼻を鳴らす。
すると、後ろに控えていたシエリアがくすりと笑った。
「……ふふ、ハルト君はハンナをやる気にさせるのが上手ですね」
「うん、シエリア……俺にはどうしてそういう考えに至ったのか全くわからないんだけど?」
「ちょっとシエリア? お前も失礼ですのよ」
「おいハンナ……お前もって……何で俺も入るんだよ」
ハンナの反論に、思わずぼやく。
黒い大きな眼で睨まれたけど、微笑んでいると思われるシエリアの三白眼の方が恐かったりしたのでスルー。
俺はシエリア部隊の前衛四人には反応速度アップ、肉体強化を重ね、後衛四人には反応速度アップと肉体硬化を重ねた。
あとは爆風が来た時点で、全員の五感アップをそれぞれ速度アップに書き換えるつもりだ。
ハンナだけ四重になるけど、道中で一度四重バフを試してあるから抜かりはない。
……ちょっとだるいですわ! とか言ってたけどな。
とにかくアダマスイータは速いから、それに対抗出来るようにしておかないと。そう思って、このバフの組み合わせは爆風とラウジャに確認し、承認をもらっていた。
――そして。
ほんの数分。息を殺すようにして待っていた俺は、気配を感じ取った。
小さな気配と大きな気配が固まって動いているような感じだ。
「……来たぞ! 速度アップ!」
双剣を構え、バフを書き換える。
他のメンバーも武器を構え、臨戦態勢をとった。
ザザザッ……ガサッ!
草の間に通る木道から、爆風が飛び出してくる。
途端、彼は踵を返して俺達を背にし、怒鳴った。
「ハンナ! 一体だけ剥がせ! 俺達の部隊で二体狩るッ!」
――え? 何だ……。
『ギャシャアアアアアッ!』
……思考が追いつく前に。
ドン、と、黒い脚が草の間から突き出して、その延長にある黒い塊が広場へと飛び出してくる。
俺は「そいつら」を見て、凍りついた。
四体……いる!?
「逆鱗ッ!」
「あ、おうっ! 速度アップ、速度アップ、速度アップ、反応速度アップ!」
俺は爆風の怒鳴り声で我に返り、すぐさま彼のバフを書き換え、自分にも同時に広げた。
黒い巨大な蜘蛛型の魔物は、恐るべき速さでガサガサと移動する。
シエリアが爆風の後ろへ回り込もうとしていた一体に応戦し、ゴウキがそれを援護した。
「僕達はこいつをやります! さあ、来いッ」
シエリアが自分の部隊へと指示を飛ばし、俺は爆風の前にいる三体の気を引くために前に出る。
「ハンナッ!」
「は、はいですわ!……凍りなさい!」
繰り出される脚を躱し、双剣を振るう爆風の代わりに俺が怒鳴る。
後ろで、ハンナが声を上げ、冷えた空気が俺達を包む。
爆風が別の脚を避けて一体の懐に飛び込んだところで、俺はハンナの魔法で氷の壁が出来たことを確認した。
壁の向こうで、シエリアが声を上げる。
「こちらは大丈夫です! 行ってください!」
本日分の投稿です。
ぶつ切りになってしまったので、翌0時に明日分を更新します。
よろしくお願いします。




