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逆鱗のハルトⅡ  作者:
139/308

まだ見ぬ流れへと。⑦

資料にはこう書いてあった。


小型の魔物はトカゲのような形の魔物で、名は『アダマンデ』。

普段は平原の草地に群れで生息しているらしいが、この度、四方八方から群れが合流し湿地方面へと移動しているのが確認された。

アダマンデは背中が少し盛り上がっていてそこが非常に硬いため、その名は鉱物のアダマントに例えて付けられたらしい。


そのアダマンデを好物としているのが、大型の魔物『アダマスイータ』。

今回、目撃情報があり、アダマンデを追って移動していると考えられているのはこいつらだ。

……砂漠で遭遇した魔物、ダハルイータと同じ系統……つまり蜘蛛型とのこと。


こいつらは巣を張らずに狩りをするそうで、普段は草の間等で獲物をじっと待っているんだとか。

しかも、移動速度も含めて物凄く俊敏らしく、この上なく厄介である。


――ディティアがいなくて良かったかもしれない。虫型が苦手だもんな。


そう考えて、思わず口元が緩んだ。


「大きさはアダマンデが1メートル前後。アダマスイータは脚まで入れたら2~3メートルにもなるかなり大きな魔物です。もちろん、人も襲いますよ」

ラウジャが言いながら、そのがっしりした肩を竦めた。

「アイシャなら間違いなく大規模討伐依頼案件ですよこんなの。見通しも足場も悪い湿地でなんて以ての外です。本当は魔法なんかで派手に脅して追い出してから叩きたいんですけどね」


俺はその言葉に、首を傾げた。

その方法はとれないってことなのか?


「それが出来ない理由は?」

爆風が聞くと、ラウジャは地図を出してこちらに見せてくれる。

湿地の地図が『二枚』あった。


「乾季と雨季の地図です。珍しい生物も生息しているんで、出来る限り保護しろとアルヴィア帝国からのお達しがありましてね。それが理由の一つ。もう一つは、この通り湿地が広すぎて、追い出すとなると相応の準備が必要になります。……だけど、もうすぐ雨季が来てしまう。そうすると湿地の水場が拡大して、より難易度の高い仕事になっちまう。その前に片を付ける必要があるんですよ」


確かに湿地はかなり広範囲。

そして、どうやら道が枝分かれして敷かれているようだった。

道は木製で、馬車が通れる幅と強度はあるものの、雨季になるとその一部が水没するらしい。

なるほど、だから地図が二枚必要になるんだな。


ここを魔法を使いながら追い立てていくのはかなり骨が折れるだろう。

しかも現在の生態系を崩すなと言われてるとすれば、より厳しいはずだ。


「では早く片付けるためにどうしようと考えている?」

爆風は腕を組み、話を進める。


ラウジャは太い指でトン、と湿地の中程を叩いた。

そこは広場のようになっている丸い場所が5ヶ所、円を描くように連なっている。


彼女はルビー色の眼をぎらりと光らせて、きっぱりと言い切った。

「少数精鋭でアダマスイータを撃破します」


一瞬の間。

爆風はこめかみを右手でグリグリしながら、唸った。


「……うん……ラウジャ、もう一回いいか?」

「少数精鋭でアダマスイータを撃破します」


少数精鋭って……さっき大規模討伐依頼案件だって言ってなかったか?


「……数は?」

「目撃情報は3体ですね」

「……この場所は?」

「湿地の観測を行うのに作られた広場だそうです。足場としては最適かと」

「……少数とはどの程度だ」

「5~10人のパーティーを3つ。足場を考えると限界がその人数ですね。それぞれが1匹相手します」

「どうやって誘き出す?」

「アダマンデを数匹捕まえて、囮にします」


爆風は両手で顔をごしごしすると、ゆっくりと息を吐き出した。


「つまり、どこかにいるアダマスイータをここまで誘き寄せて叩くつもりなんだな?」

「はい!流石爆風のガイルディア。話が早くて助かります!」


……話が早いかどうかはわからなかったけど、俺は爆風に言った。


「五感アップで探すくらいは出来るかもしれないけど」

「そうだな、俺もそう考えていたところだ。地殻変動にも関係していそうだから付き合え、逆鱗」

「そうじゃなくてもやるつもりだけどさ……あと、アダマンデ?そっちは駆除しなくても大丈夫なのか?」

聞いたら、ラウジャが豪快に笑った。

「アダマンデは草食なんだ。とりあえず人を襲うことは無いだろうね。アダマスイータが片付いたらすっきりさせるつもりだよ。こっちは雨季に入ってもなんとか出来る」

「そっか……生態系を考えるなら草が無くならないうちになんとかすればいいってことなんだな」

「そうそう。わかってるね坊主!……で、あんた一体誰なんだい?」

「…………」


……いや、確かに名乗ってないけどさ、それは酷いんじゃないか?

思わず眉を寄せた俺の肩を、爆風がぽんと叩く。

「こういう奴なんだ、気にするな」


「そうそう!こういう奴だから何でも口に出しちまうんだ!あははっ」

何故か当の本人まで笑い出すので、俺は肩を落とした。


もう、変な奴ばっかりだなこの大陸……。


とにかく、変な流れに巻き込まれたことだけははっきりした。

俺と爆風は間違いなく、少数精鋭とやらで参加することになるんだろう。


けどラウジャからの地殻変動の情報は期待出来る。

だから、今は目の前の敵に集中しよう、と思った。



本日分です。

諸事情により2月の更新時間はまちまちですが、基本的に毎日を目指しています(最近は土日が忙しい時がありますすみません)。

よろしくお願いします!

更新状況は活動報告に記載します。


いつもありがとうございます!

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