まだ見ぬ流れへと。②
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ヤンヌバルシャの素材は合計でなんと80万ジールにもなった。
大金も大金である。
殊勝なことに、アマルス達は流石に貰いすぎだと焦って減額を希望したんだけど、俺達が押し切って約束通り半分の40万ジールを受け取らせた。
彼等はその時ゴクリと喉を震わせていたけど、俺はそれを眺めながらひっそりと考えてしまった。
……そもそもファルーアが爆発させなかったら、この何倍の素材があったはずだからな……。
「……ハルト……あんたその顔で私を見るのやめてくれる?悪かったわ……」
「顔に出過ぎだぞお前」
すると、ファルーアとグランに言われてしまった。
しまった、全然ひっそり出来てなかったらしい。
「はは、ごめん、思わず……」
首を竦めると、二人は笑みを返してくれた。
俺達はリューン、ガルニア、爆風のガイルディアと合わせた8人で、残りの40万ジール(フェンは抜くことになったんだよな)、つまり一人頭5万ジールを貰った。
その内3万ジールを各々の装備品の手入れなどに充て、2万ジールはグランの管理するパーティー用財布に突っ込んでおく。
それとは別に、ストーから情報提供の報酬として白薔薇には一人当たり2万ジールを貰ったんだけど、これはまとめて旅の準備費用に充てることにした。
研究所で話した、樹海の街ライバッハからの提供ってことにした情報のことだな。
グランの提案で、その余りは俺の旅の資金として持たせてくれるそうだ。
そっか、お金も持っておかないとだもんなぁ。
……そんなわけで、翌日。
食糧や消耗品の補充などを一通り済ませた俺達白薔薇は、宿に戻ってパーティーで分担している荷物の再振り分けを行った。
最低限の物は元々それぞれで持っているけど、テントや食器、応急処置用品なんかは担当を決めて管理していたからだ。
そういえばこれ決めたのも大分前だったなぁって、ちょっと懐かしい。
ちなみに俺の担当はポンチョと応急処置用品だったから、薬を少し買い足して、俺が持っていく用と白薔薇分で分けておく。
「テントが無いと雨の日が面倒そうだなー」
床に並べた荷物の確認をしながら俺がぼやくと、隣にいるディティアが笑って応えてくれた。
「ガイルディアさんが持ってるんじゃない?」
「どうだろう、雨でも寝袋ひとつで寝そうだけどなあのオジサマ」
「あはは、流石にそれは……ん、どうかなぁ」
ディティアも半信半疑みたいな返答になったので、思わず笑ってしまう。
何なら立ったままでも平気で眠れそうだよな、爆風は。
彼女は俺が並べた荷物を眺めると、自分の懐から飛龍タイラントの鱗で作ったナイフを出した。
不思議に思って見ていたら、ディティアが意を決したような顔をして俺を見上げる。
「ハルト君、あの」
「うん。どうした?」
「えっと、このナイフ……ハルト君のと、交換してくれないかな」
「交換?」
「う、うん……えっと、持っててほしいなぁ、っていうのと、持ってたいなぁ、っていうのと」
「はは、何だよそれ?」
思わず笑ったら、頬を紅くして話すディティアは、だんだんと俯いて恥ずかしそうにもじもじする。
「ええっと……ね。ハルト君がいない間、私のナイフがハルト君を守って、ハルト君のナイフが、私……達、を、守るの、どうかなって……」
俺は、一生懸命に言葉を紡ぎながら、ちらと俺を見上げた彼女に――やられた。
何だそれ、可愛すぎるだろ。
どうみても小動物だ。
「ディティア、相変わらず可愛いこと言うよな」
理由もすごく気に入ったし、俺は自分のナイフを出して、ディティアの前にぽんと置いた。
ところが、彼女は顔を両手で覆っていて、全く見ていない。
「……?ディティア?」
「あ、あの、あのねハルト君!そういうのは!も~!」
「炸裂したわね」
「本当だね~、俺のナイフをティアに持たせてあげて、ハルトのナイフ没収しちゃおうかなぁ」
「ディティア、よく頑張ったぞお前は」
口々に好き勝手言う皆に、俺は一瞥をくれてやった。
「っていうか、何だよ?俺、変なこと言ってないよな?」
ところが。
「言ってますッ!!はいっ、ナイフ確かに預かりました!はいっ、このナイフを預かってください!ハルト君の馬鹿ー!」
「えぇ……!?」
いきなりディティアに怒られてしまった。
そんな変なこと言ったつもりはないんだけどな……。
とりあえず――膨らんでいた彼女の頬を左右から潰してあげたら、更に怒られたのだった。
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平和パートです。
明日からはガイルディアとの2人旅です。
よろしくお願いします。




