樹海は未知の領域です。①
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樹海にある遺跡は、片道5日程の距離にあるという。
ただし、天候や状況によっては2倍の時間が掛かるらしい。
「遺跡は、お話した通り随分前に見付かったものです。大規模な調査を行う際に、崩れそうな場所等、危険な箇所をメンテナンスします」
軽そうな装備に、ロープなどもしっかり持ったナチとヤチ。
ナイフを4本ずつ腰に挿しているものの、成る程、探索専門って感じがした。
「それでは、行きましょう」
広がる樹海は、既に見えている。
…………
……
服を一新した俺達は、その上にしっかりと装備を纏った。
ついでに荷物を入れるバッグも軽くて防水の物に変えて、何となく気分が良い。
ぱっと見は大きな変化は無かったけど、唯一ファルーアだけ、首から下、全身にぴったりと張り付くような黒い服を買って、その上からいつもの水色のローブを着ている。
足や腕の露出が減った感じだ。
樹海には虫なんかもたくさんいるって聞いて、即断即決であった。
「ねぇハルト、虫除けのバフとか無いのかしら……」
すごく憂鬱そうに言われたけど、そんなもんは無いぞ。
……そうして、樹海に足を踏み入れた俺達は、覆い隠された空を見上げた。
枝葉を伸ばす見たこと無い程の巨木達と、そこに絡む蔦。
足元にも下草が生い茂り、その間を根があらゆる方向へと這っている。
足場が悪そうだな……。
加えて、日の光は届かず、時折葉の隙間からちらりと瞬く以外は、樹海の中は薄暗かった。
「……すげぇな」
グランが顎髭を擦る。
「森……って言うには壮大すぎるね」
「うん。……これが樹海」
はぁーっとため息をこぼすボーザックとディティア。
「道はすぐに埋まってしまうので造られていません。基本的には僕達が先導しますね。目印はちゃんとあるので!」
「お願いするわ。こんなところ、慣れてないと歩けないもの」
ナチにファルーアが答える。
……濃い緑の匂い。
少し湿っぽい空気。
樹海の中は静かだけど命に満ちていた。
魔物も、たくさんいるんだろうな。
「おいハルト」
「おう!……五感アップ」
さっとバフを広げる。
とりあえず双子にも投げたけど、2人が息を呑んだので思わず聞いた。
「ん、大丈夫か?ナチ、ヤチ。……五感が上がるから俺達は警戒に使うんだけど……」
「だ、大丈夫」
「大丈夫です。バフって実は初めてで……へぇ、逆鱗さん、やりますね」
飄々とナチが言うので、俺はふんと鼻を鳴らした。
「喧嘩売ってるのかな、ナチ?」
「ははっ、まさかまさか!逆鱗さんに喧嘩売るなんて!」
「おい!お前、性格悪いって言われないか!?」
「言われませんよ~、当たり前です!」
捕まえてやろうにも、ナチはするすると逃げていく。
足場は腐葉土なのか柔らかく、物凄く歩きにくかった。
「ハルト楽しそうで良かった」
「そうね。笑いも必要よね」
「あははっ、ハルト君笑われてる~」
「……とりあえず気ぃ抜くなよハルトー」
「……ふっすぅ」
後ろから飛んでくる野次は、失礼なものばかりだ。
……そんな感じで、とりあえず樹海の奥へと侵入していく。
後ろに見えていた光もすぐに隠れて、暗さが増していった。
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巨木は、俺が3人いれば囲めるか?ってくらい太い。
その隙間を縫うようにして、双子は、迷わず歩を進めていく。
最初は、俺達が慣れるのを待っていてくれたけど、1時間程してそれなりになったと判断したのか、スピードが上がる。
俺は五感アップバフを常に張って、殿のグランの前を歩いていた。
「……ナチ、ヤチ、止まって」
そこに、ボーザックが声を掛ける。
「はい?」
ナチが振り返り……はっとしたのがわかった。
生命あふれる樹海には、気配が満ちている。
その気配は大抵遠くにいるらしく、もやもやしている感じだ。
けれどひとつ、こちらに近付くもの。
それを、俺達は確かに感じ取っていた。まだ距離はあるけど、間違いなくここに向かっている。
俺達は、既にターゲットにされているらしい。
「……足場が悪ぃな。おい双子、下がってろ」
「えっ、あ、はい」
グランに言われて、ナチとヤチは驚いたように俺達の後ろに移動する。
「どんな魔物か見たらわかるんだろ?危険な奴はこの辺にいたりするのか?」
「はい、わかります。……危険と言えば危険な魔物ばっかりですが……足元さえ気を付ければ対処可能なはずです」
「わかった。……よし、お前ら、やるぞ!」
俺達は迫る気配に、武器を構えた。
「俺が受ける、頼んだぞボーザック、ディティア!」
「任せてよ!ちょっと狭いから、ティア、合わせてもらっていいかな?」
「うん、大丈夫。ファルーア、いつも通りでお願いするね」
「ええ。……ハルト、頼むわよ」
「おう」
応えて、俺はバフを練り上げた。
「肉体強化、肉体強化、肉体硬化!」
まずは受け手のグランに、五感アップバフを上書きして消し、さらに追加。
「速度アップ、速度アップ」
ボーザックとディティア、ナチとヤチ、ついでに自分には五感アップを残して速さを重ねて3重に。
ナチとヤチはそれなりに鍛えてるはずだし、3重までならまず大丈夫だろう。
「威力アップ、持久力アップ、反応速度アップ」
ファルーアには万が一に反応出来るよう、威力と持久力に加えて反応速度アップを投げた。
「フェン、いくぞ!肉体強化、速度アップ、反応速度アップ!」
「がうっ!」
そこで、ボーザックが声を上げた。
「来るよ!!樹の……左側!」
ざふ、ざふっ、ざふっ!!
何かが、草木をかき分けてこちらにやって来る。
巨木の向こうから、巨大な影が飛び出した。
その瞬間。
〈ウルルグアァ――ッ!!!!〉
「おおおおらぁぁぁあーーっ!!」
グランの『白薔薇の大盾』と、嘶く巨大な影が、激しくぶつかった。
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