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逆鱗のハルトⅡ  作者:
13/308

樹海は未知の領域です。①

******


樹海にある遺跡は、片道5日程の距離にあるという。

ただし、天候や状況によっては2倍の時間が掛かるらしい。


「遺跡は、お話した通り随分前に見付かったものです。大規模な調査を行う際に、崩れそうな場所等、危険な箇所をメンテナンスします」


軽そうな装備に、ロープなどもしっかり持ったナチとヤチ。

ナイフを4本ずつ腰に挿しているものの、成る程、探索専門って感じがした。


「それでは、行きましょう」


広がる樹海は、既に見えている。


…………

……


服を一新した俺達は、その上にしっかりと装備を纏った。

ついでに荷物を入れるバッグも軽くて防水の物に変えて、何となく気分が良い。


ぱっと見は大きな変化は無かったけど、唯一ファルーアだけ、首から下、全身にぴったりと張り付くような黒い服を買って、その上からいつもの水色のローブを着ている。


足や腕の露出が減った感じだ。


樹海には虫なんかもたくさんいるって聞いて、即断即決であった。


「ねぇハルト、虫除けのバフとか無いのかしら……」

すごく憂鬱そうに言われたけど、そんなもんは無いぞ。


……そうして、樹海に足を踏み入れた俺達は、覆い隠された空を見上げた。


枝葉を伸ばす見たこと無い程の巨木達と、そこに絡む蔦。

足元にも下草が生い茂り、その間を根があらゆる方向へと這っている。


足場が悪そうだな……。


加えて、日の光は届かず、時折葉の隙間からちらりと瞬く以外は、樹海の中は薄暗かった。


「……すげぇな」

グランが顎髭を擦る。


「森……って言うには壮大すぎるね」

「うん。……これが樹海」

はぁーっとため息をこぼすボーザックとディティア。


「道はすぐに埋まってしまうので造られていません。基本的には僕達が先導しますね。目印はちゃんとあるので!」

「お願いするわ。こんなところ、慣れてないと歩けないもの」

ナチにファルーアが答える。


……濃い緑の匂い。

少し湿っぽい空気。


樹海の中は静かだけど命に満ちていた。

魔物も、たくさんいるんだろうな。


「おいハルト」

「おう!……五感アップ」


さっとバフを広げる。


とりあえず双子にも投げたけど、2人が息を呑んだので思わず聞いた。

「ん、大丈夫か?ナチ、ヤチ。……五感が上がるから俺達は警戒に使うんだけど……」


「だ、大丈夫」

「大丈夫です。バフって実は初めてで……へぇ、逆鱗さん、やりますね」

飄々とナチが言うので、俺はふんと鼻を鳴らした。


「喧嘩売ってるのかな、ナチ?」

「ははっ、まさかまさか!逆鱗さんに喧嘩売るなんて!」

「おい!お前、性格悪いって言われないか!?」

「言われませんよ~、当たり前です!」


捕まえてやろうにも、ナチはするすると逃げていく。

足場は腐葉土なのか柔らかく、物凄く歩きにくかった。


「ハルト楽しそうで良かった」

「そうね。笑いも必要よね」

「あははっ、ハルト君笑われてる~」

「……とりあえず気ぃ抜くなよハルトー」

「……ふっすぅ」


後ろから飛んでくる野次は、失礼なものばかりだ。


……そんな感じで、とりあえず樹海の奥へと侵入していく。

後ろに見えていた光もすぐに隠れて、暗さが増していった。


******


巨木は、俺が3人いれば囲めるか?ってくらい太い。

その隙間を縫うようにして、双子は、迷わず歩を進めていく。

最初は、俺達が慣れるのを待っていてくれたけど、1時間程してそれなりになったと判断したのか、スピードが上がる。


俺は五感アップバフを常に張って、殿のグランの前を歩いていた。


「……ナチ、ヤチ、止まって」

そこに、ボーザックが声を掛ける。


「はい?」

ナチが振り返り……はっとしたのがわかった。


生命あふれる樹海には、気配が満ちている。

その気配は大抵遠くにいるらしく、もやもやしている感じだ。

けれどひとつ、こちらに近付くもの。


それを、俺達は確かに感じ取っていた。まだ距離はあるけど、間違いなくここに向かっている。

俺達は、既にターゲットにされているらしい。


「……足場が悪ぃな。おい双子、下がってろ」

「えっ、あ、はい」

グランに言われて、ナチとヤチは驚いたように俺達の後ろに移動する。

「どんな魔物か見たらわかるんだろ?危険な奴はこの辺にいたりするのか?」

「はい、わかります。……危険と言えば危険な魔物ばっかりですが……足元さえ気を付ければ対処可能なはずです」

「わかった。……よし、お前ら、やるぞ!」


俺達は迫る気配に、武器を構えた。


「俺が受ける、頼んだぞボーザック、ディティア!」

「任せてよ!ちょっと狭いから、ティア、合わせてもらっていいかな?」

「うん、大丈夫。ファルーア、いつも通りでお願いするね」

「ええ。……ハルト、頼むわよ」

「おう」


応えて、俺はバフを練り上げた。


「肉体強化、肉体強化、肉体硬化!」

まずは受け手のグランに、五感アップバフを上書きして消し、さらに追加。


「速度アップ、速度アップ」

ボーザックとディティア、ナチとヤチ、ついでに自分には五感アップを残して速さを重ねて3重に。


ナチとヤチはそれなりに鍛えてるはずだし、3重までならまず大丈夫だろう。


「威力アップ、持久力アップ、反応速度アップ」

ファルーアには万が一に反応出来るよう、威力と持久力に加えて反応速度アップを投げた。


「フェン、いくぞ!肉体強化、速度アップ、反応速度アップ!」

「がうっ!」


そこで、ボーザックが声を上げた。


「来るよ!!樹の……左側!」


ざふ、ざふっ、ざふっ!!


何かが、草木をかき分けてこちらにやって来る。

巨木の向こうから、巨大な影が飛び出した。



その瞬間。



〈ウルルグアァ――ッ!!!!〉

「おおおおらぁぁぁあーーっ!!」



グランの『白薔薇の大盾』と、嘶く巨大な影が、激しくぶつかった。



本日分の投稿です!

毎日21時から24時を目安に更新中です。


いつもありがとうございます!


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