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逆鱗のハルトⅡ  作者:
127/308

風は自由奔放です。⑤

******


その後、一向に終わらない稽古に、皆が飽きてきた頃。

俺は、デバフをもう一度練ろうと必死だったんだけど上手くいかず、諦めてひと息入れることにした。


……うん、ボーザックの指摘通り、俺の逆鱗とやらに触れないと、使えないらしいって事はわかったな。

それだけでもよしとしよう。


見上げれば日はそこそこ傾いていて、小腹が空く時間だ。

温まった土の香りが、そよそよと流れる風に薄れたり濃くなったりしている。

それが心地良いのか、フェンとそれに埋もれたファルーアは寝息を立てていた。

グラン、ボーザックはそれぞれ筋トレと素振り、ガルニア……も、筋トレだ。

リューンはアーマンとストーと一緒に何か話している。


「……すまないが、爆風のガイルディア。それと疾風のディティアだったね。そろそろ兵の訓練時間だ。……お茶を淹れるくらいはするから、終わりにしてもらえないだろうか?」

動いたのは金髪に蒼い眼で、優しそうな顔立ちの筋肉がしっかり付いた身体をした帝国兵第五隊、隊長のアーマン。


あー、そりゃあ帝国兵だって訓練するよな。


「……おお、それは悪かった」

「す、すみません!夢中になってました!」

すぐに動きを止めた2人は、皆が思い思いに過ごす現状を見回すと、慌てて白いレンガの台から降りてきた。

「おつかれ」

「あっ、は、ハルト君!ごめんなさい、皆待っててくれたんだよね?」

声を掛けると、ディティアが首を竦める。

わたわたと両手を振っている彼女は微笑ましいが、隣にやってきた爆風は苦笑気味だ。

「……うん、もう歳なのでな、中々に疲労困憊だ」

「嘘付くなよ、全っ然息切れしてないくせに」

思わず笑ってしまう。

その間に、他の皆も退散の準備を完了したらしい。

俺は立ち上がって土を払うと、ディティアに言った。

「……ありがとな。デバフも、やり方はわかったから」

「!、えへへ……よかった。ハルト君、私は……ハルト君なら大丈夫だと思ってたよ」 

微笑む彼女に、俺も笑みを返す。


ただただ、彼女の温かさで胸がいっぱいになる。

……俺は、その応援に応えないといけないんだ。


ふと、爆風と眼が合う。

彼は、明るい茶の眼で俺を真っ直ぐ見詰めていて、ゆっくりと、深く、頷いた。

俺の思っていることは筒抜けらしい。


「では、予定通り話をするか。疾風」

「はい。ガイルディアさんのお話も、聞かせてください」


俺達はアーマンに案内されて、会議室のような部屋へと移動した。

長方形のテーブルが中央に置かれ、その長辺にそれぞれ8脚ずつの椅子。

奥側に俺達白薔薇とフェン、手前側にリューン、ガルニア、ストー、ガイルディア、そしてアーマンが座ると、すぐに甲冑兵がお茶を運んできた。


それと一緒に、汗を拭うためのタオルまで持ってきてくれるという親切さである。

グランやボーザックからしたら有り難いだろう。


……思うのは、兜脱げばいいのにってことくらいかな。


お茶は武骨な金属のコップに並々と注がれている。

最初にアーマンを訪ねた時も出してもらった、帝国では馴染み深いお茶ってやつだ。


研究所でも、多少味は違った気がするけどこのお茶だったし、本当に何処にでもあるものなんだろう。

果物らしき甘い香りもして、これがまた旨い。


堪能していると、アーマンが切り出した。

「この眼で爆風のガイルディアの動きを見て力不足を痛感したよ、疾風のディティア……貴女の動きにも度肝を抜かれた。詳しくは聞いていなかったが、やはり白薔薇……貴方達は、冒険者でも相当の地位……と言うことなのだろうか」

「ああ、アーマンは知らないんですか」

そこにのほほんと返したのは、トレージャーハンター協会ヤルヴィ支部の支部長、ストー。

「ストールトレンブリッジ、つまり君は知っているんだな?」

アーマンは言いながら優雅にお茶を口に運んで……。

「はい!彼等、なんとアイシャで飛龍タイラントを屠った冒険者なんですよ!」


「ぶふっ!!ごほっ、がはっ」

ストーの言葉に、盛大にむせ返った。


「な、なん、何だって!?」


******


それからしばし、俺達の話をしたんだけど。

アーマンは途中でテーブルに両肘を突き、手のひらで顔を覆うようにして項垂れてしまった。

「何ということだろう、私は大変失礼な対応を……!」

「どの対応のことか知らねぇが、そんな気にすることじゃねぇさ。まだまだ、俺達白薔薇が有名になってねぇってことだ」

グランが髭を擦りながら、満更でも無さそうに言う。


「はっ、龍を倒してるから偉いってわけでもないだろ?……な、何だよ、わかったよ!黙ってればいいんだろ!」

何故かリューンが腕を組みながら噛み付き、ファルーアに視線で射貫かれた。

こいつ、本当に何でもかんでも噛み付くな……。


そこで爆風のガイルディアがディティアを見る。


彼女は頷いて、唇をお茶で湿らせた。

「ちょっと余談ではあるんですけど、私のお話もさせてもらいますね」


目配せすると、彼女は微笑んでから、ゆっくりと話し始めた。



昨日投稿出来てませんでした……

すみません。


よろしくお願いします!

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