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逆鱗のハルトⅡ  作者:
11/308

まずは情報です。③

雲行きが怪しくなって、グランが髭を擦った。


「なぁ、ナチ、ヤチ」

「何でしょう?」

「俺達白薔薇を屈強な戦士と勘違いしてたよな?」

「あっ……まあ、はい、すみません」

「謝るこたぁねぇんだが、その屈強な戦士向けに選んだんだろ?その依頼」

「……そうですね。けど、万が一があっても困るので、そこまで難易度が高いものではありませんよ」

ナチは、手元の資料をぺらりと俺達に掲げた。

頭を突き合わせて内容を確認しようとすると、ナチは見かねたのか説明を始めてくれる。


「この仕事は、ライバッハの西にある樹海の、遺跡調査を行うための下処理です。……つまり、遺跡付近の魔物の排除。……遺跡自体は古くから知られているので、樹海で迷うことはまずありません。……定期的に大規模な調査をしているんですが、次の調査が近いので、空いた期間に繁殖した魔物を討伐するものです」

「定期的にって、どれくらいー?」

「半年に1度くらいですね」

「半年でどれくらい魔物は増えるんですか?」

「まちまちです。けれど、魔物が確認されなかったことは1度もありません」

ボーザックとディティアの質問にも淀みなく答えるナチ。

……つまり、この依頼では必ず戦闘になるということだ。


ナチの目配せに、ヤチはその横で頷いて、丸めてある資料を広げた。


それは、地図だった。

港町であるライバッハよりもはるかに広い樹海が描かれ、その向こうが山脈になっている。

樹海はライバッハを囲むように横たわっていて、迷ったら2度とライバッハには帰れなさそうだ。


地図はライバッハ付近の拡大図らしく、紙には山脈より先を描き足す程の余白は無いため、紙面の殆どが樹海という有様。


……使いどころが無さそうな地図だなぁ。


「うわぁ、樹海って……本当に海みたい」

「近くに街も無さそうね」

「これで迷わないってことは道でもあるのか?」


ボーザックとファルーアも呆れたような声でそう言って、グランが質問を返す。


ナチはその質問に、満足そうに頷いた。

それだけじゃなく、大きな爆弾も投下してくれた。


「道はありませんが、大丈夫ですよ。何たって、僕達が同行しますから。……ただ、僕達は戦えませんので、護衛をよろしくお願いしますね!」


******


その夜。

小さな個室で、紅い髪と切れ長の紅い眼の、線の細い青年が向かい合っていた。

2人は、鏡に映ったかのように瓜二つ。

ただし、ひとりは楽しそうに口元をほころばせ、ひとりは少し困ったような表情をしている。


目当ての『冒険者』を見つけて仕事を斡旋し、通常業務を終えてさっき帰ってきたところだ。


揺らめくランプの灯りの中、色濃い影に潜む何かを警戒するように、彼等は囁くような音で会話を紡いでいた。


「どう思う?」

「……まだ、わからない」

「そうだよね。ただ、思いのほか弱そうだったな!」

「けど、飛龍や災厄の黒龍を仕留めているのは間違いないらしいよ」

「そこなんだよなあ。本当かどうか疑うよね……まあ、お手並み拝見といきますか」

「まずは、どうする?」

「戦い方を見ればそれなりにわかると思うけど…1番よくわからないのは『逆鱗』だよね」

「……うまく、切り離してみよう」

「じゃあ、これ渡しておくね」


ころん。


楽しそうな青年の手から、紅い欠片が転がった。

ゆらゆらと、石の中で光が踊っている。


「ふふ、まずは情報からだ。……楽しみだねヤチ」

「うん……期待外れじゃないといいな、ナチ」



******



「俺……肉が食べたい」


ボーザックのひと言に、俺達全員が頷いた。


船での生活では基本的に乾肉、魚、穀類、芋……なんて感じだったから、ボーザックの言う肉、つまりは乾してないジューシーな肉を思い浮かべてよだれが出そうになる。



俺達は、トレージャーハンター協会ライバッハ支部で依頼を受けた。

……こっちでは仕事って言うみたいだな。


その後、トールシャの魔物はアイシャより強いらしいこと、探索専門のトレージャーハンター達は、戦えるけど戦力に数えるには不安なことを教えられた。


アイシャでは街道だったらそんなに強い魔物は出ないけど、トールシャではそれなりに強い魔物が現れることもあるらしい。


物騒な大陸である。


そして、今回同行してくれるらしい双子は、探索専門です!と言い切っていた。


正直、不安だらけだ。


あと聞いて驚いたのは、魔力結晶……俺達がこんな所まで来ることになった原因のひとつが、生活の一部に使用されていたことだった。


確かに、魔力結晶を組み込む器具で、その魔力を取り出して使うことが出来る物が遺跡から見付かってるなんて話は聞いてたんだけど、実はライバッハの外れにある灯台には、その器具を使っているらしい。


ただ、やっぱり造り方はわかっていないようだ。


とりあえず、何をするにも、まずは準備が必要。

どんな装備が必要なのか聞いたけど、ここで説明は難しいって言われたんで、明日また双子にレクチャーしてもらうことにして今日は解散したのだった。


……今は、宿を取って食事のために出てきたところである。


「宿で聞いてくればよかったわね」

「そうだね。……でも、本当に賑やか~」

ファルーアとディティアが話している間に、どうやらメインストリートらしい通りに出たようだ。


左右に並ぶ店からは、どこもいい香りがしている。


とりあえず、まずは肉。

何はともあれ肉!


俺達は、賑やかな街を歩いた。


本日分の投稿です。

また龍退治からか!?と思ってくださった皆様すみません笑


ジャンバックはまたの機会です。


21時から24時を目安に毎日更新しています!


評価、ブックマーク、うれしいです。

よろしければ是非お願いします!


いつもありがとうございます!

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