前編
拙い文章ですが読んで頂けると嬉しいです。
ぽっぽっぽっぽっ、真っ暗な湖の底で、奇妙な声が聞こえてくる。
とても不気味で、恐ろしくて、でも何だか引き寄せられる物がある、綺麗な女の人の声だ。
僕はとても恐ろしくて、本能的にその場から急いで立ち去ろうと思ったけど、やっぱりその声の持ち主が気になって、湖の方に歩いていった。
だって、僕にはその声が、女の子が泣いてるように聞こえたから。
「はやく起きてください!遅刻しますよ!」
寝ぼけた、ていうか寝てた僕の頭に、綺麗な女性の声が鳴り響く。
「もう、毎日毎日寝坊するんだから!」
「ごめんごめんナナコさん、あっ今日も可愛いね。」
声の持ち主は、八尺七子さん、僕の彼女で、幽霊だ。
背は高くてすらっとしている。
といっても八尺はさすがにない。170 センチくらいだ。髪は黒髪ロングのストレートで、腰の高さくらいまである。
顔は、どちらかと言えば美人系で少し地味だけど整っていて、優しそうな印象を受ける顔だ。
もっとも今は少し怒り顔だが。
「もうっ毎朝そうやって誤魔化して!」
そういいながら嬉しそうだ。
「それよりはやくご飯食べてください、もうできてますから。」
「そうだね、今日のメニューは何?」
「今日は奮発して甘鯛の焼き魚がメインです。
高かったんですよ?」
ナナコさんは料理が上手だ。
基本的に和食が得意だけど最近は洋食や中華も作ってくれる。
ちなみにナナコさんは幽霊だけどご飯も食べるし僕意外の人間にも普通に見える。
「ほんとだ美味しそう。あっでも納豆あるじゃん。」
「納豆は体にいいんですからちゃんと食べてくださいね」
「ナナコさん、今日も可愛いね」
「食べなさい」
「はい」
二人で朝食を食べながら、どうでもいい雑談をする。
「そういえば最近、この町で、交通事故が多発してるらしいですよ」
「暖かくなると事故が増えるっていうしね」
ちなみに今は4月の始めごろだ。
「コビト君も気を付けて登校してくださいね?」
僕の名前は大神小人っていう。
実家が陰陽師の家系でこんな大層な名字なのだ。
今は別居していて僕は安アパートでナナコさんと二人暮らししている。
「あ、うん」
「もうっまた適当に聞き流して。」
「ごめんごめん、ありがと心配してくれて」
味噌汁を流し込んで手早く学校に行く支度をする。
「それじゃ行ってくるよ。」
「いってらっしゃいませ。ちゃんと授業は聞くんですよ?」
「はいはい、いってきます」
僕は現在高校二年生で、アパートから歩いて10分くらいのところにある県立高に通っている。
アパートから近いという理由で選んだ。
「なぁなぁコビト聞いてくれよ」
「なんだよ竜二」
昼休み、ナナコさんが作ってくれた弁当を食べながらクラスメイトである虎居竜二と駄弁っていた。
「それがさぁ、今朝チャリで学校にむかってたんだけど、道路を渡ろうとしたとき歩行者側と車側の信号が両方青になったんだよ。」
「おいおい危ないな、大丈夫だったの?」
「たまたま俺はそれにきずいたし、道路渡ろうとしてるの俺だけだったから大丈夫だったんだけどほんと危ないよなぁ」
「信号機が壊れてたのかな?」
「いんやぁ、そのあとは何事もなく動いてたよ」
「そういやナナコさんも最近交通事故が増えてるっていってたなぁ」
「いいなぁ、ナナコさん、ほんとお前が羨ましいよ、今日お前んちいっていい?」
竜二はナナコさんが幽霊なのもしっている。
僕はナナコさんのことはなるべく人に話さないようにしているが、過去のちょっとした事件でナナコさんの事がばれてしまった。
だからといって騒ぎたてるやつじゃないからいいんだけど。
「えー、ぶっちゃけナナコさんお前のことちょっと苦手だぞ。顔が怖いからって」
竜二は背も高くなかなかの男前だがなんせ顔が怖い。
名前もあいまってよくヤクザの息子かなんかと勘違いされる。
ちなみに竜二の父親は居酒屋の店長だ。
「まじで!?、、俺死のうかなぁ、、」
「ごめんごめん、竜二がいいやつなのはナナコさんも知ってるし、ほんのちょっと苦手なだけだよ。」
こいつはこう見えてメンタルの弱いやつなのだ。
「ほんとか?俺嫌われてない?」
「大丈夫大丈夫、学校終わったらうちきなよ、さっきの信号機の話詳しく聞きたいし」
「ん、そんな気になったか?俺のみまちがいかもしれないぞ?」
「なんとなく、最近事故がおおいのって幽霊とかそっち系が関わってる気がするんだよなぁ」
「まじか、ってそれもしかして、、、」
「ナナコさんの仕業じゃないぞ」
竜二の胸ぐらを掴んで睨み付ける、ナナコさんはそんなことしない。
「す、すまんナナコさんを疑ってるわけじゃないんだ」
「ん、じゃ学校終わったらおれんな、ナナコさんにそういう悪さする幽霊とかいないか聞いて見よう」
竜二の胸ぐらから手をはなす。
「お前は普段のほほんとしてるのにナナコさん関係になると性格かわるよなぁ」
「彼女だからな」
ナナコさんの悪口は例え親友でも許せないのだ。
「最近の交通事故が幽霊のせいかも、ですか?」
学校が終わり、竜二と一緒に帰宅した僕達は、ナナコさんと三人でお茶を飲みながら今朝あった竜二の信号機の件について話ていた。
「そうそう、根拠とかはないんだけどね、それこそ信号機の話は竜二のみまちがいかもだし」
「うーん直接その場を見てないですしね、特にここ最近は霊の気配とか感じませんし」
ナナコさんはアゴに人差し指を添えながら考えるそぶりをする、可愛い。
ちなみにナナコさんは一応かなり位の高い霊なので、ある程度近くにほかの霊とかいればわかる。
弱い霊とかだとかなりちかずかないとわからないらしいけど。
「それより竜二さん、
怪我はありませんでしたか?」
「は、はい!どこも異常ないであります!」
竜二は僕んちにきてからずっとこんな感じだ。
緊張しすぎて普段より3割まし顔が怖い。
「ナナコさんにもわからないってなると、低級な霊か竜二のみまちがいかどっちかだよね」
僕は携帯でここ1ヶ月前までのこの町の事故件数を調べる。
2ヶ月前までに比べて約1.5 倍、微妙だなぁ。
ナナコさんが僕の隣にきて携帯を覗きこむ。
「うーん、やっぱり気になるほど事故が増えてるわけじゃないですね、でも竜二さんの件見たいに被害がでてないだけのケースもあるかもしれないですし」
「低級な霊だから、あんまり直接的な被害はだせないのかもね、タイヤをパンクさせたりだとか」
「お、さすが陰陽師の家系ですね、ちょっとそれっぽいです。」
「かっこいい?」
「ちょっとだけ。」
ナナコさんがいたずらっぽく笑う、可愛い。
「おいコビト、」
竜二がこちらを睨む、のけ者にされて寂しかったらしい。
「ごめんごめん、んで竜二、信号機が両方青色に見えた時って、はっきりと見えてたか?周りがぼやけてだとか、やたら信号機の部分だけ眩しくて見えずらかったとかないか?」
「あー、そんときは確かに、なんとなくぼやけて見えてたかも、んでなんとなく光がまぶしかったような、でも注意して見てたわけじゃないし、、なんとなくだぞ?」
ふむふむ。
「竜二、視力はいい方?」
「両方とも2.0だな」
「じゃあやっぱ霊の仕業だな。」
「信号機ってそもそもかなり見間違えがないように作られてるはずなんだよな、それに竜二は目がいいみたいだし、やっぱそれ見間違いじゃないよ。」
「コビト君、かっこいいです」
ナナコさんがキラキラした目で僕を見ている。
「幻覚とか見せたりするタイプの霊っぽいし、退治しにいっても隠れられる可能性があるから、なるべくそいつの強まる深夜にその信号機のとこまで見に行って見よう、そこにいる」
「コビト、俺幽霊とか苦手なんだけど」
「だってさナナコさん」
「え、、、」
ナナコさんが悲しそうな顔をする。
「ナナコさんは特別です!」
「ふふ、わかってますよ、竜二さんがそんなひどいこと言う人じゃないって」
冗談です、と舌をペロッとだして微笑む。
「、、、なぁコビト、幽霊がもし可愛い女の子だったら除霊するのやめようぜ。」
「なんで?」
「俺も可愛い幽霊と同棲したい。」
僕とナナコさんは二人で大笑いした。
竜二は凄い真面目顔で、いやほんとに、と呟いていた。