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シングルアクションリボルバー

「シャムちゃん!例のやって!」 


 リアナがカメラを構えながら叫ぶ。それに応えるように親指で帽子の縁をはじいたシャムが手にした銃を軽く胸の前にかざした。


「行くよ!」 


 手にした銃を構えつつ振り向くシャム。思わず誠はのけぞった。

 

 周りの視線を感じてそう叫ぶとシャムは銃を振り上げる。鉄紺色の銃身の短いリボルバーは人差し指を軸に、くるくると彼女の手の中で回転していた。思わず拍手をする整備員達の様子を知るとさらにその回転は加速していく。


「ほう……」 


 感心しているのか呆れているのか。カウラはまったくどちらとも付かない表情を浮かべていた。シャムはそれを見るとすばやく右腰にあるホルスターに銃を叩き込んだ。警備部員や運行部の女性士官もそれには一斉に感心したと言うような拍手を送った。


「なんだ?ウェスタン公園にでも就職するのかよ」 


 一方かなめは明らかに呆れていた。それを見るとアイシャはつかつかとシャムの横まで歩いていく。


「ちょっと見せて」 


 アイシャの言葉にうなづいたシャムが銃を手渡す。先日見た青みを帯びた黒い銃が冬の日差しに輝いて見える。しばらく手にとって眺めた後、アイシャはキムに振り返った。


「ジュン君。これ全部ブラックパウダー弾?」 


「違いますよ。さっきのでおしまいですから」 


 そう言うとしばらくシリンダーを見つめていたアイシャが大きくため息をついた。彼女の手は普通のリボルバーのようにシリンダーを引き抜こうとするがまったく動く様子が無い。


「これって……どうやって装填するの?と言うか撃った薬莢を取り出そうって言ったって……」 


 全弾撃ちつくしているらしくアイシャはしばらくじっと短い銃を眺めていた。それを見たシャムが満面の笑みを浮かべている。


「ああ、ちょっと貸してね……ジュン君、これ借りてもいい?」 


 シャムはそう言うとテーブルの上にあったドライバーを手にして銃の劇鉄を少し押し下げる。そのままシリンダーの後ろのブロックが開く。そしてそこに開いている穴にドライバーを突き刺して薬莢を取り出した。


「面倒だな」 


「使い物にならねえじゃねえか」 


 カウラとかなめの意見ももっともだった。シャムはようやく二発の薬莢を取り出すことに成功して次の薬莢を取り出すべくドライバーを持ち直す。


「そりゃあ映画の西部劇みたいに六発以上撃ちまくるわけには行かないですからね、現実問題」 


 キムの一言にシャムはムッとしたように顔を上げる。不器用にドライバーで自分の銃と格闘しているシャムを見ながらキムは必死になって笑いをこらえていた。


「だから二挺拳銃なんですよ。二挺あれば計十二発。下手なオートピストルより弾は多い」 


「キム。そりゃわかってるんだけどさあ。相手が多弾数のオートで襲ってきたらどうするんだ?」 


 かなめの問いにキムは意味がわからないと言うように首をひねる。だが、すぐにかなめは彼の考えを理解してキムの肩に手を乗せる。


「そうだな。あいつの拳銃はただの錘だからな」 


「ひどいんだ!そんなこと言うと撃たせてあげないぞ!」 


「おもちゃじゃねえんだ!誰が触るか!」 


 かなめはそう言ってへそを曲げるが、シャムの隣に立っているアイシャはキムの前に置かれた弾薬の箱に手を伸ばしていた。


「これってここに弾を入れればいいの?」 


 アイシャはうれしそうにシャムから渡されたリボルバーピストル、ピースメーカーを手に弾をこめようとする。


「うん、そこから一発一発シリンダーを回しながら入れるんだよ」 


 シャムの言葉を聞くとアイシャは45口径の弾丸を一発づつシリンダーに差し込んでいく。その表情は楽しいともめんどくさいとも取れる複雑なものだった。


「結構炸薬の量が多いんだな。フレームの強度は大丈夫なのか?」 


 カウラは心配そうにシャム達を見つめる。その手には箱から取り出した一発の弾丸が握られている。


「ああ、大丈夫ですよ。元々こいつはアメリカとかの時代祭りの為に有るような銃ですから。威力はかなり抑えた弾しか手に入りません。まあ炸薬を増やせば威力は上がりますけど……どうせシャムが使うんでしょ?意味ないですよ」 


 そうキムが説明している間にアイシャは弾をこめ終わるとそのままターゲットを狙う。


「親指でハンマー起こせよ!シングルアクションだからな!」 


「わかってるわよ!」 


 かなめにやじられてアイシャは叫ぶように言い返す。そしてそのまま右手の親指でゆっくりハンマーを起こすとすばやく引き金を引いた。


 一瞬置いて轟音が響く。


 アイシャの手の中で滑ったように銃がはねて銃口が天井を向いているのが見える。


 それを見てかなめは大笑いする。しばらく何が起きたかわからないと言うようにアイシャは立ち尽くす。


「ああ、ああなるのは仕方ないんですよ。グリップがなで肩ですし、こういうグリップのシェリブズは丸くて握りづらいですから。どうしてもオートに慣れた人が初めて撃つと反動が上に逃げて銃口が天井向くんですよ」 


 キムの言葉に思うところがあったのか、カウラが立ち上がるとアイシャの後ろに立つ。


「私にも撃たせろ」 


 カウラのその言葉にしばらくアイシャは目が点になっている。隣で笑っていたシャムの表情も驚いたように変わる。


「ええ、別にいいけど……」 


 そう言ってアイシャはカウラに銃を手渡した。そしてそのままカウラは受け取った銃で30メートル先の標的に狙いをつけた。


「馬鹿やるなよ!」 


 そう言うかなめはいつの間にかタバコを吸い始めていた。野次馬達も展開がどうなるのか楽しみで仕方がないと言うようにカウラを見つめている。カウラは静かにハンマーを起こす。その様子に場はあっという間に静まり返っていた。冬の北風だけが枯れ草を揺らして音を立てている。


 カウラが引き金を引く。そしてハンマーが落ちる。そして火薬の点火による轟音。最新式の炸薬とは言え、短い銃身では燃焼し切れなかった炸薬が銃口の先に炎の球を作って見せる。


「派手だねえ……こりゃ」 


 タバコを咥えているかなめの一言。誠が銃口の先を見ればマンターゲットの頭に大穴が開いている。


「結構当たるもんだな」 


 そう言うとカウラは満足したように銃をシャムに返した。


「まあレプリカですからバレルの精度なんかは今のレベルですよ。それにしてもさすがですね、反動をほとんど殺していたじゃないですか」 


 キムに褒められてカウラは少し満足げに微笑んでいた。次は私だと言うようにかなめが跳ね上がるように立ち上がった。



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