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drifters

旅人の話

作者: カンコ

 彼に会った時、それはそれは自由奔放で個性的な旅人であると感じた。

 彼は、いわゆるバスガイドであり、私達の誘導者であるにも関わらず、その見知らぬ異国の風を、ただただひとりで一身に抱きしめているようであった。

 彼は、私達よりもずっと速く歩くのだ。ガイドさんのくせに、私達が見失ってしまいそうになる程に。さらに、手に持つ指示棒は、灰色の折り畳み傘。普通は、それっぽい旗とかさ、あるんじゃないでしょうかね。なんとまあ、面白いお方でありますこと。などど思う程に。

 バスの中で彼は、ずっと、本当にずうっと喋っていた。マイクを通しても尚、聞き取れないような口調と声量で、私達の安眠をガイドしてくれた。

 

 だが私は、寝れなかった。不眠症なのだ。異国での緊張もあり、ここ五日間、平均睡眠時間は三時間を切っている。

 だから私は、彼に話しかけてみた。自由奔放な、面白い人であると感じていたからだ。

すると彼は、「これまでの人生に、後悔している」と言った。

 

 私の、彼へのイメージは、こうだ。

好きな場所へ旅をし、何かを思い、そして笑う。

何ら、不満足なことなどありはしないだろうと、そう思っていた。


 「若い頃に、もっと色々な場所に行ってみたかった」 

と、彼曰く。

 一瞬、不自然な言葉に思ったが、なるほど。私なんぞに分かりはしないのだ。

彼の言う、色々な場所とは、何なのか。


彼は最後に、「君も、後悔しないように、生きろよ」と言った。



 彼は、来週にもここでガイドを務めるらしい。

私達は、異国の美しさ、そして故郷の素晴らしさを教えられ、彼との別れを告げた。


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