第 四・五章~予感~
王宮の玉座の間。
一人の男が王様と話していた。
「いやぁ、よくやってくれたよ。ありがとう」
王は袋に詰まった大量の金貨を男に渡す。
「いえいえ、ですが、さすが竜騎士を束ねる総長の実力といいますか、あれには感服いたすほど・・・」
しかし王は男の賛美の声を唸り声で否定する。
「最近総長がわしに反抗的でな?あんたにあれをどうにかして欲しいんじゃが・・・あんたもあの戦いで一応死んだことになってしまったしのぉ・・・」
男は紳士的に頭を下げて王に言う。
「ご安心を、この三年間で竜が人になつくようになってしまったのは私にはどうすることもできませぬが、総長殿をどうにかする方法は、三通り出来ているので・・・」
王は男の作戦に目を輝かせるように玉座から身を乗り出して男にその話を聞いた。
「ひとつは暗殺、ですが、これは無理に等しいですね。あの人は気配に敏感すぎますので、暗殺者を雇ったところで、返り討ちに会うのが関の山です。次に二つ目」
男は指を二つに立てながら話を続ける。
「一体一は分が悪いので集団で襲うという話です。ですがこれを実行するには、彼を最底辺までに陥れなければなりません。そして、この二つ目を混合しての作戦が三つ目ですが、わが王よこの話はご存知ですか?」
男の口が開いた内容はこうだ。
たしかにこの三年で世界は急に変貌を遂げた。竜は憎むべきものだとあれほど憎悪していた人たちが手のひらを返すように竜と仲良くなっている。ですが、私はこの話はどうでもいいと思っています。私には関係のないことだし、私の作戦にも死傷をきたす訳でもないのでね。
ですが、妙な話を聞きましてね。
竜の翼、だがその姿はまるっきり人と変わらない外見でいる生命体がいると。
人の言語を理解し、なおかつ竜の戦闘能力を上回る化け物がいるのです。これを私はこう呼ぶことにしました。
”竜人”とね。
「ふむ、だが竜人がどこに出没するかわからないのじゃろ?それに何体いるかわかったもんではないじゃろうに」
「それがですね、王。竜人の数は私の情報網を駆使したところ、世界には五人いるのですよ。しかも、なんとその竜人が実は既に近場にいるというわけなのです」
「ほう?」
「王都の郊外に。禁止区域に指定されている森林公園に竜人の一人がいるのです」
男は口角を吊り上げて、さも邪悪そうに笑い、玉座から出ていく。
男には野望があった。
世界で一番に強い人間になることをずっと夢に掲げた物だった。王宮の騎士団に入団することを決定した時も泣いて喜ぶ程だった。
だが、騎士団から竜騎士団に変わるとき、誰が全員を束ねる事ができる総長になるのかと話し合いになり、自分より年下の若者が総長に選ばれた事に不満しか覚えなかった。
たかだか青二才の分際で、自分を出し抜いた総長が今でも憎かった。
三年前の大戦で私は竜を怒らせるきっかけを作り、影武者を雇ってまで自分の死を工作したまでは、計画は順調だった。だが、許せなかったのはやつが殆ど無傷で戦争から帰ってきた事だ。
子供の時から一番しか満足出来なかった。人気も、知力も、力、地位もだ。
だのに、奴が何故自分よりも優位に立っているのか。私には理解できなかった。
そんなある日のことだ。
自分は死んだことになっているので王都には居づらく、世界を旅をしていた時だ。一つの村が燃え盛っていた。
その時はいつものように、竜と一悶着があったのだろうと思っていた。これでも竜騎士の端くれだから救助くらいはやってやろうと村に行った時だ。
「ったく、自分達が偉いって思っている内は早死にするって相場は決まってるんだよ」
燃え盛る炎の海から歩いて出てきたのは女だ。ただその姿は異業と思える服装だ。
サラシとボロホロになった腰布だけで着飾れていて、殆ど裸に近い。しかし、その体には火傷の跡は一つもなく、むしろケロッとしている。
女は俺に気づく。
「んっ?あんた生き残りか?……違うな」 女は隣を素通りする。
話し掛けなければよかったのに、何故私はこの時に話し掛けたのだろう。
「待て!」
私の静止の声に女は留まり、振り返る。
「なに?」
「貴様は何者だ?炎の中でも火傷の一つとしてついていないなんて、ありえない」
「‥‥‥有り得ないから何?それにさぁ、名乗るときは自分からって、人間達の決まりじゃないの?」
そういう決まりはないが、女の言うことももっともか。
「吾輩は王宮の竜騎士所属。団長だ」
「王宮?あぁ!世界に名前が知れ渡っている団体か。それの団長さん?へぇ?」
女はじろじろと舐め上げるように体を見渡すと。
「強いのか?」
「団長の座は伊達ではない」
吾輩は剣を抜いて構える。この女がどれ程の力を持っているのかは分からないが、奴の武装は素手だ。こちらの方に部があるだろう。
「んじゃあ、ちょいと暇つぶしに」
こちらに向かって直線に走って来る。てんで戦いは素人とみた。
「つえぇぇい!!」
横に剣を払う。狙うのは首元だ。どんな妖術かは分からないがこの剣が届けばこちらの勝ちだと思った瞬間。
ドロリと女の首に当たる前に吾輩の剣は溶解した。
戸惑う吾輩を嘲笑うように、その手を顔に伸ばした。
「なんだ‥‥‥これが二番手なら一番強いのもそれ程かぁ」
女の手が五十センチくらいの距離。だが触れられていないのに分かる。あの手は危険だ。
迫ってくる手の平が硬く握りしめられると、眉間に岩石を投げられたと錯覚する程の威力が顔面を覆った。
焦げる肉の臭い。顔に熱しられた鉄を宛がわれたような熱さと痛みが全身を回る。
「ぐぁぁぁぁ!!?」
顔を覆い隠して激痛に悶える。
「じゃぁな、命は大切にな。団長さん?」
女はそう言い残して、背中から翼を生やして飛び立っていった。
それから吾輩は、田舎町の病院で目を覚ました。顔の皮膚は焼け爛れて一生残る顔になってしまったが、吾輩にとっては丁度よかったとこだった。
あの顔は既に世間に知れ渡りすぎていて、動くには面倒だからだ。
人を超越した能力に吾輩は魅了され、研究するようになり、一つの結論に辿り着けたことに、感極まった事は今でも覚えている。
奴らの存在が竜人という、竜よりも強く、人と同じように喋る生命体を、もっと研究したくなった吾輩は、竜人に対抗するために、竜を一から調べたりもした。
やがてはあの力を自分のものにしたいと考えたが、竜人は世界に五人しかいない。ならば、どれでもいいから捕まえて細胞の一つでも採取してやりたい。
そんな野望を思い秘めて三年間たった後、吾輩に耳寄りな情報を聞いた。
昔から禁止区域に指定されていたあの森に竜人が出没しているとのことだ。
しかも、あの憎たらしい総長と仲がいいという情報もだ。
あまりの喜喜に射精でもしてしまいそうなほどに興奮が収まらず、一人でナイトフィーバーだ。一石二鳥、竜人も手に入れる事も出来て、憎たらしいき総長もこの世から葬る事もできるのならば、吾輩の全思考を張り、計画を進めようと誓った。
「そろそろ王者の交代だぁ・・・総長さん?」




