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プロローグ~スーリヤ~

 小さいときから疑問に思っていたことがある。

 なんで人は他に生きる生物達を退けるのかと。

 竜もしかり、人と外見が違うからといって、あそこまで差別するのはなんだか可哀相だった。

 それに、俺達だっていつしか子供を作るし、争ったりする。 人間だってやっていることは動物と同じだ。ただ、言葉と道徳を覚えた猿は、何故道を外したのだろう。

 この世すべてが一つに生きることが出来れば良いのに。

 そういえば俺はこれまでに恋と言うものを知らなかった。

 皆の話を聞く限りでは、相手の事を忘れられないほどに思うと、それはもう恋をしていると言うことらしい。

 まぁ、そんなことは一度も無かったが……

 さてと、まずは俺の事を言いましょう。

 王宮の竜騎士団を束ねる位置に座している、いわば総長という場所だ。

 あ、ちなみにまだ王宮の竜騎士団は設立されたばかりだから最初の呼び名は騎士団っていう名前だったんだが、竜を討伐するために、騎士団の中から選りすぐりの人物を総長、兵長、兵士という分け方をされている。 総長を任されている身でありながら、俺は竜騎士の在り方に疑問を抱いていた。

 いや、竜騎士じゃないな、この世界の竜に対しての在り方が疑問しかなかった。

 なんでそうやって思っているのかというと。

「クルルル?」

 自分より二倍の高さを誇る生物を見上げながら俺の身体に頭角をこすりつける。

 俺は頬を撫でながら名前を呼ぶ。

「おいおい、じゃれつくなってソーマ」

 彼女の名前はソーマ。

 俺が王宮の任務での事だった。



 ある一つの村が竜に襲われている、という連絡が入り、竜騎士団を率いて竜を倒しに行った。

 あまり、乗り気では無かったが、これも任務だと、嫌々ながら任務に着いていた。

 これまでに何度も竜を撲滅している俺だが、一度も馴れた事はない。

 竜は雄と雌の二匹の竜で、珍しかった。

 本来、雄の竜は俺達人間に見つかる訳がない場所に隠れているのだという。

 雌よりも二、三倍の大きさで存在しているらしく、人間の手には負えないくらい、雌よりも強い。

 何より驚いたのは雌の竜にはもう一つの生命が身篭っていたのだ。

 多分、村の人間が二匹に威嚇をして、雄竜に焼きつくされたと推測をし、俺は雄竜を討ち取った。

 可哀相だが、雌竜も殺さなければならない。

 森の中で竜は他の竜騎士達にやられ、体中がボロボロだ。

 それでも、必死に子供を守ろうとしたのだろう。竜の周りは血の海になっており、引き連れてきた竜騎士が全滅していたのだ。

 一撃が必殺であるためか、殆どが無惨な肉塊に変貌していたが、雌竜を瀕死まで追いやっているところはさすが竜騎士と言った所か。

 俺が近づくと雌竜は激しく身をよじってこちらに向き直る。 双眸が殺意に満ちて、肌で感じ取れるほどの強さを雌竜はたたき付けるが、四肢には力が入っていない為に迫力が俄然低下していた。

 俺は剣をしまい、竜の顔と同じ目線に座り真っ直ぐに見続け、頭を下げる。

「済まなかった……」

 額を地面に付けるほどに深々と謝礼をする。

 この動作が竜に分かるのかは知らない。でも、彼女の夫を殺したのは間違いない。

 それに、確認したいことがあった。

「君のお腹には子供がいるのか?」

 俺はその場から動かずに、竜へ問い掛けた。

 弱々しい声で泣いた竜は自分のお腹を見た後、俺に目配せをする。

 視線は俺の剣から腹。多分、力が入らないのだろう。

 その剣で私の腹を斬れ。そう言っているように思えた。

「わかった……」

 鞘から剣を抜いて、竜のお腹を撫でる。

 医学書を見たことをあるが、やったことはない。

 まさか自分が、しかも人間ではなく、竜の腹を開く事になるとは思ってもいなかった。

 死に体の竜は子供を出したら死んでしまうだろう。

 深く息を吐いて、集中力を高める。

「むんっ!!」

 横凪一線、お腹の中にいる子供を傷つかせないように、ギリギリの所になったと思う。

 竜のお腹は外皮よりも柔らかく出来ているが、それでも普通の剣を突き入れるには容易ではない。

「痛いかもしれないが、御免よ!」

 切断された竜の断面を両手でこじ開ける。

 苦痛に呻く鳴き声が心に突き刺さりながら胎盤の中に一つの命を見つけた。

「卵じゃない?」

 本来の竜は卵からかえる筈だ。だが、この竜は既にお腹の中で生まれていたのだ。

 瞬間、俺はこの竜を殺さないと駄目だと、本能が警告の鐘を鳴らしていた。

 昔からの言い伝えだ。

 竜、身篭りし命は卵からかえる。して、この理から外れた命は混沌たる竜になるであろう。 世界を滅ぼす竜は即刻廃除するべし。

「……なん……で?」

 それは、誰に問いただしたかったのだろう。

 目の前にいる竜は産声を上げて鳴いている。

 新しい命を、此処で断たなければ駄目なのか?

 卵から産まれなかっただけで、こいつは生まれてきては駄目な存在なのか?

 それは否。だんじて否である。

 何処を探しても生まれてきては駄目な存在なんていないに決まっている。

 俺は子供を引っ張り出して雌竜の頭まで子竜を抱っこしながら連れて来る。

 雌竜は、子供を舐め、安心しきったのか、力無く体を横たえた。

「安心しろ、お前の子は、俺がしっかりと守ってやるから。天国から見守ってくれ」

 雌竜を供養しながら俺は子供を見つめる。

 子供はいま燃え上がっているモノがなんなのかは、わかっていないだろう。赤い炎に心を奪われたようにじっと見つめていたが。

 俺はこいつの名前をどうしようかと考えねばならない。

 ずっとちびって言うのも心許ないし、名前はこの世との繋がりにもなる。

 天を仰ぐ。いつの間にか辺りは暗くなっており、月の光だけが灯かりとして機能している。 赤ん坊に月光が掛かる。

「決めた、お前の名前はソーマだ」



 とまあ、こんな感じて俺は人類初、竜と仲良くしている人間になった。

 竜騎士のくせに竜を保護しているなんて、と、周りに色々言われたが、押し切って黙らせた。

 竜の成長速度は早く、この一年間で見上げる程にでかくなり、今の通行手段としてはソーマを使って飛び回り、任務をこなしていく。

 どれもこれも竜を討伐する任務ばかりだ。

 同族を自分で殺すのも辛いだろうに。

 だけど、俺は信じる。

 いつか、俺と同じように、世界のみんなが竜と過ごしている事になっていると。


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