三話
更新が遅くなりました。
次はもっと早くかきたいなぁ~
学校が終わった三人は、そのままゲームセンターへ直行していた。
「あぁ、もう!全然取れないじゃない!」
夜架はクレーンゲームの台をドンと叩き、その振動で景品を落とそうと試みる。
「止めなさいよ。みっともない」
「あの、夜架さん。店員さんが見ていますから……」
雫は今にもため息をしそうな顔で、有紀は意心地が悪そうに夜架に話しかけた。しかし、夜架は二人を気にも止めず、またしても五百円玉を犠牲にしている。どうやら、19回目に突入したみたいだ。
学校が終わった三人は、そのまま最寄のゲームセンターへ直行していた。
「っていうか、部活はどうしたのよ?」
「んっ?今日はゆっきーがいないからお休みだってさ。部長もいないし」
「『だってさ』って、夜架は副部長でしょ?休みにしたのはアンタじゃないの」
「はっはっは。そうとも言う……とあぁぁー!」
軽く笑った夜架は、ゲーム台の降下ボタンを押した。狙いを定めたクレーンが、目標の景品へゆっくりと降りていく。
「いけっ、いけっ!」
彼女は拳を握り、一心不乱に声援を送る。クレーンが景品をがっちりと掴み、景品がゆっくりと持ち上がった。
「いよっしゃー!」
夜架は腕を振り上げ、大きく勝利の雄叫びを上げる。その瞬間――――
ガコンッ。
「あっ」
「へ?」
数センチほど上昇した景品はあっけなくクレーンの束縛から離れ、元の位置に落ちていった。
「……」
嫌な沈黙が周囲を漂う。
夜架の腕が、力なく下がっていった。
「落ちちゃいましたね……」
有紀が気まずそうな表情で、ぼそりと事実を告げる。
「くあぁぁぁーーー!!」
夜架が吠えた。
「ちょっと店員、これクレーンの力弱すぎでしょ!詐欺よ詐欺!こんなもん取れるわけないわ!!」
「はいはい、お店の人に突っかからない」
店員に向かって行こうとした夜架を、雫は襟首を掴んで止めさせる。
「ぐえっ――――ちょ、ちょっと邪魔しないで!男には引けない時があるのよ!!」
「貴女は女でしょ。ほら、大人しくしなさい」
「え、ストップストップ!首が絞まってる、か……ら…………」
「あの、雫さん。そろそろ離した方が……」
「そう?」
有紀がおずおずと言った感じで言うと、あっさりと手を離した。顔を青白くした夜架は、クレーンゲームに手をついて呼吸を整える。
「がはっ……なんじゃこりゃぁ!」
「そんなオーバーリアクションは期待してない。有紀、やっぱりもう一度絞めていいかしら?」
「えーっと……ほどほどに」
「ちょ、そこは庇ってよ!」
両手を夜架の白い首に伸ばすが、彼女はそれを華麗にかわして有紀にゾンビの様にすがりついた。さすがはバスケ部の副キャプテン。
すがりつかれた有紀は、本当のゾンビを振り払うように体を揺らす。それと共に二つの膨らみも大きく揺れている……。
「は、離してください!」
「ひどっ!?そこまで嫌がらなくてもいいじゃん!!」
有紀の家はお金持ちだが、彼女はノリが良く分かっていると思う。現に、騒いでいる目の前の二人は楽しそうだ。
「……まったく」
雫は軽く息を吐くと、クレーンの操作盤の前に移動した。夜架が五百円玉を入れて一回しかしていないので、まだ回数が残っている。雫は手慣れた様子でボタンを押し始めた。後ろでは、有紀が笑顔で夜架から逃げており、夜架も笑いながらそれを追っている。ガラス越しにその光景は瞳に映した雫は、思わず微笑んだ。
操作されたクレーンは、流れるような動作で景品を掴んだ。そして、なんの危なげもなく持ち上げ、受取口に続く穴へ落とした。
ガコンと少し鈍い音と共に、その姿が受取口に現れる。
景品を手にし、有紀に後ろから抱き付いている夜架に向きなおった。
「ほら」
夜架に向かって景品を無造作に投げる。
「えっ?わ、ちょっと!?」
唐突な行動だったが、夜架は少し動揺しながらも片手で取った。本当に器用な女の子だ。
彼女は手に収まった景品を見て、目を見開いた状態で雫に視線を移す。
「……取ってくれたの?」
「貴女はそのシリーズ好きだからね。取らないと、いつまでも粘ってそうだし」
無感情そうに言い放った雫だが、その両頬は微かに紅く染まっていた。
「うぅ~、ありがとうぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「だ、抱きつかなでよ!こんな所で……」
「愛してるよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「貴女には彼氏がいるでしょうがっ!」
「あらあら、私はお邪魔ですからこれで」
「ちょっと待ちなさい、有紀!」
三人が店員に注意されるまで、そう時間はかからなかったのは言うまでもない。
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