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プロローグ

小説って難しいです。

そして短い……

 暗闇の中で何かが蠢いた。

 

 微かに動いた"それ"は、ひたすらに前進しようとする。

 

 理由はない。

 

 そうするように頭の中にインプットされているのだから、何の疑問も持たなかった。

 

 いつもと同じように前へ進み、いつもと同じように次の指令を待つ。

 

 しかし、今日だけはいつもと様子が違っていた。

 

 どれだけ進もうとも、何の命令も脳内に入って来なかったのだ。

 

 ―――――――

 

 "それ"は僅かに不安になる。

 

 "それ"にとって命令は、この世界で唯一信用出来るものだ。

 

 もし、このまま命令が無いのであれば、"それ"の自我は壊れてしまうだろう。

 

 いや、そもそもそれは自我と呼べるものなのだろうか?

 

 そんなことは解らない。解ろうともしない。

 

 ただ、"それ"にとっては自我さえどうでもよかったのだ。


「………………あっ」

 

 何かが地面に落ちていたのだろうか。

 

 "それ"はゆっくりと、前のめりに倒れた。

 

 倒れることを拒む動作はない。いや、そういう拒絶もインプットされていない。

 

 ずしゃ―――

 

 鈍い音がする。

 

 何故か、もう体に力が入らない。

 

 不安は全身に毒のように“廻り”、思考力と筋肉を鈍らせる。

 

 ―――――――自分は捨てられたのだろうか?

 

 赤く染まっている両手を見つめた。

 

 黒さえも漆黒に染める世界で、その手だけははっきりと確認できる。……気がした。

 

 思わず、唇を噛んだ。

 

 一体、何が悪かったのだろう。

 

 誰よりも命令に従ってきた。誰よりも“敵”と呼ばれるモノを壊してきた。誰よりも、この手を汚してきたというのに。

 

 …………………………………………………………………………この、感情が駄目なのか。


 まだ、躊躇いがあるのだろうか。

 

 まだ、痛いと感じるのだろうか。

 

 この感情さえも、消えてしまえと言うのか。

 

 そんなことを思う自分は、“廃棄”されてしまうのか。

 

 そもそも、これは感情なのだろうか。


 ―――――――ふとっ、全身が震えた。

 

 不安が恐怖に換わる。


 そんなのは嫌だっ。

 

 こんな所で、朽ちていくのは、嫌だっ。


「くっ……、あぎっ、はっ」

 

 死にたくない。

 

 死にたくない。

 

 死にたくない。

 

 死にたくない。

 

 死にたくない!。

 

 死にたくない!。

 

 死にたくない!。

 

 死にたくない!!。

 

 死にたくない!!。

 

 ……生きて、いたい。


 ――――もっと、生きたい。


 ざっ。

 

 と、足音が聞こえた。

 

 足音はすでに、頭のすぐ上にまで来ている。

 

 執行機関の追っ手か、それとも死神がきたのか。

 

 どの道、抵抗する手段はない。

 

 体力的はとうの昔に底をついている。 

 

 “それ”は力が入らない腕を懸命に動かし、体を仰向けにした。

 

 目だけを足音を鳴らしたモノに向ける。

 

 暗闇の中でもはっきりとわかる、銀の長い髪が輝いていた。

感想まってます。

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