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悪魔姫は世界征服より昼寝がしたい!  作者: みずほたる
古の悪魔姫は仕事量が多い
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姫様、豊漁祭りに招待される

「ハーモニカじゃと? お主自分で言ってる事がわかっておるのか?」


私はつい立ち上がってしまった。


「ハイ。ハーモニカは農業が栄えた国。世界で唯一、米が作れることでも有名です」


「それは知っておる。妾もそこから輸入しているからのぅ」


私は米の味を思い出す。正直言って生前に食べていた米に比べたら粒が細く、水気も少ない。粘りも甘みも足りない。


しかも足元を見るかのように値段が高いので需要があまりなかった。


「でも正直マズイですよね。食えたもんじゃないです」


「なら駄目じゃろう。どうせ作るなら安くて美味い米が食べたい。民もその方が喜ぶしな」


「俺がやればコシヒカリ作れます」


「コシヒカリじゃと!? 何故お主が作らぬのじゃ!」


「勇者扱いされてきたので農業をさせてもらえませんでした」


「適材適所を間違っとるではないか。よし、西村よ。ミナエモン産コシヒカリを作るのじゃ!」


私が西村に指をさすと、


「姫様。ハーモニカを我が領土にしないと始まらない問題です」


オカリナが釘をさしてきた。


「そうじゃったな。米は最強の主食じゃからな。つい興奮してしまって足元が見えておらんかったわ」


「米を作りたいから領土をよこせと書状を出さしますか?」


「まるで弥生時代じゃな」


「弥生時代! 漫画で読んだ事があります! 埴輪戦士ヤマタイコク面白かったです!」


「第4話のヒミコマンが九州に国を作るか近畿に国を作るかで悩むシーンは感動したのじゃ」


「わかります! あの『国造りは米造りから!』って名言、熱いですよね!」


私とオカリナで話を脱線してしまった時、クラリが現れた。


「姫様、お話中失礼します。ピアニカにて豊漁祭りを行いたいと民衆から申し入れがありました」


「これまでオークの圧政に苦しんでいたのじゃ。その分楽しむが良いと伝えよ」


「はい。そして、もし姫様が承諾した場合、姫様も招待したいとも申し入れもございました」


「フッ、妾がいては民も気も使うであろう。気持ちだけ受け取っておくと伝えよ」


「かしこまりました。喜んで行くと伝えます」


「お主、人の話を聞いていたか?」


「姫様。私は行きたいんです! 姫様が行かないと私が行きにくいじゃないですか!」


「知らぬわ! というか何ちゃっかりついて行って妾に奢らせようと――」


そう言いかけて、私は思う。


まあ、民の笑顔を見るのも悪くはないかもしれない、と。


「ま、折角の頼みだし妾も行くとしよう。西村よ。そなたも国に一旦戻り、祭に参加したい者がいたら誘ってもかまわんそ。祭りは数が多いほど楽しいからのぅ」


「ありがたきお言葉。ハーモニカの民も楽しみがあると聞けば喜ぶでしょう!」


一ヶ月後。漁業都市ピアニカ。


オークの圧政に苦しみ、荒廃していた都市は見違えるほど発展していた。


街道には炊き出しの香りが漂い、子供たちが魚の旗を振っていた。


「飛んでいけば楽なんじゃがな。これでは見せ物ではないか」


馬車に乗せられ、私はチラリと外を見る。


「姫様がお顔を見せられた!」

「姫様万歳!」


街道の両脇に種族問わず私を一目見ようとごった返しになっている。


「姫様。この日のために『民に手を振る皇族の修練』をしてきたではありませんか」


「恥ずかしいわ! まったく。市長め。歓迎式典などやらなくて良いと言ったのにな。その金を民に使えば良いのに」


私は一人でブツブツ文句を言っていた。


「それにしても本当人の数がすごいですね。こんなに人いましたっけ?」


クラリはキョトンとして聞いてきたので、


「10倍はおるな」


「そんなにどこから?」


「ミナエモン村周辺からもおるが、西村の奴、ハーモニカで豊漁祭りの話をしたら、話が広がりみんなここに来てしまったらしい」


「みんなとは? 村中とか? 街中とか?」


「国中じゃ」


「ほへ?」


「つまり今、ハーモニカには国王と側近しかおらぬということじゃ」


「ハーモニカ国民の大移動じゃないですか」


現在ピアニカには城がない。跡地には、大きな公園ができている。


「姫様。来ていただきありがとうございます!」


到着した私を迎えいれたのはピアニカ市長とボンゴ。ドワーフのオッサンである。


「ボンゴよ。お主までわざわざ出迎える必要はなかったのだぞ。祭りに専念せよ」


馬車から降りて、輝いた彼の笑顔を見て諦める私。


「姫様がいるからこその祭りでございますゆえ。それにぜひ味見をしていただきたい物がございます」


そう言いながらボンゴは黒い液体を見せる。


「ドワーフなら鍛冶じゃろう? 液体の研究をしてどうする」


「街外れで小さな鍛冶屋を営んでいたら、釣竿を作れだの網をあめだの、しまいにはボートという物を作らせたのは姫様です」


「ある意味鍛冶屋ではないか」


「しかし、結果、魚に会わせたのも姫様です。そして俺はいかに魚をうまく食えるかを研究し、今回姫様に試飲していただきたいのは、姫様が以前つぶやかれた醤油でございます」


「なに!? 醤油を作ったのか!」


「ハイ」


皿にたらした液体を一口なめてみる。


「どちらかというと寿司醤油じゃな。まぁ魚にあう醤油を研究してきたのじゃから当然か」


「どうですか?」


「ウム。これはこれでアリじゃ。さらなる研究に励むと良い」


「ありがたき幸せ!」


そして私は市長に目を向ける。


「祭りに呼んでくれたことに感謝する。それにしてもよく市民をまとめているな。妾が見込んだだけのことはある」


「とんでもございません! 姫様のお力添えがあるからです!」


「そう謙遜するな」


私は彼女の肩をポンとたたいて、


「豊漁祭り、楽しみにしておるぞ」


私はそう言ってその場を去った。


「姫様。今の市長ご存知なのですか?」


クラリが聞いてきたので小さく頷いた。


「帝王の圧政に苦しんでいた獣人なのじゃが、ヴィオラが炊き出しをした時でも子供を優先に食べさせていたらしい。妾が帝王から国を解放した際、ヴィオラからの推薦で市長にした。名前はソプラノじゃったか」


私はクラリにそう言って後ろを振り返る。


市長ソプラノは、民の声を聞きながら忙しなく走り回っていた。


その後ろ姿を見て、そっと呟く。


「うむ、国は良き者に任せるのが一番じゃな……」

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