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悪魔姫、財政難で壁ドン入国

病院が出来て村はさらに活性化した。おそらく村人たちの健康状態の向上、平均寿命はかなり伸びるはずだ。


しかも、|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》に登録している村人(登録料銅貨一枚。月額銀貨一枚という姫様安心価格)は無料。診察医フルートと薬師バスクラは激務だが働けば働くほど給金がもらえると言うと24時間勤務をしはじめた。ワンオペのコンビニかおまえらは。


「寝なくても働ける薬を開発しただよ」


そこはやめさせた。労働基準法をある程度でも形にしないと、そのうち村全体が24時間活動してしまいそうだ。


漫画を書いてくれる作家を募集するよう|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》のマスター、ホルンに頼もうとしていたが、法整備ができそうな人材も募集するよう頼むことにした。


「漫画というものはよくわかりませんが、給金が底をつきかけようとしております。来月には財政破綻します」


今更だが、オカリナって修練の話か城の財政の話しかしてこないように思えるのは気のせいだろうか?


「村人からしもべ料として毎月銀貨1枚徴収してるじゃない」


「村人は今100人ですから、銀貨100枚の収入です。しかし、城や村の役人の人件費だけで1000枚支出がございます」


「むしろ今までよく成り立っていたわね」


「姫様がやっているぬいぐるみ作成の報酬から支払っていましたから」


「それ私の毎月のお小遣いなんだけど」


「姫様にお小遣いは必要ありません。元に今まで買い物してないでしょう?」


「それは毎日面会したり、将来役に立つと思えない姫としての立ち振る舞いの練習ばかりしてるからでしょ。大体昨日の「壁ドンにときめく女子高生」の演技っていつ使えるのよ。てかこの世界に女子高生って概念あるの?」


「備えあれば憂いなしです。姫様」


前の悪代官の練習もそうだったけど、この世界、どこからか“現代の知識”が漏れてる気がするのよね……。


「オカリナ。まさかだけどあなたコッソリ漫画読んでない?」


「さぁ、私には漫画たるものが何かわかりません」


一筋の汗を垂らし、目を閉じるオカリナ。


「あなたの部屋を見せて」


「年頃のレディの部屋は姫様といえども立ち入り禁止でございます」


「見せよと言っておるのじゃ」


つい絶望のオーラを全開にして言ってしまった。テーブルに置いてあった花が一瞬で枯れ果てた。




「やっぱりこの世界、漫画存在してるじゃない。それにしても「転生したら越後屋だった件」「壁ドンのみで世界を征服」って。他にないの?」


「私は悪魔大元帥として常に知識を探求し、使えそうなものを姫様に伝授しているのです」


「まったく。使えないものばかりだったわ。迷惑料として借りて行くわ」


「姫様、最新刊だけはお許しを。まだ未読なんです」


「それにしてもあなた収入ないでしょ。よくお金あったわね」


「それは当然姫様の収入から支払っておりました」


「横領じゃない! それにしてもどこで買ってくるのよ。見た感じ印刷されているじゃない。この世界じゃ高度な技術よ?」


「ナチュラル王国に本屋というものがございます。漫画ができる経緯はわかりかねますが、私はそこで購入しております」


「じゃあ、行ってみるかナチュラル王国に」


確か北に三日ほどかかる位置にあったはず。


おそらくだが作者は私と同じ転生人だ。漫画の内容がそれを物語っている。


例えばこの越後屋の漫画。商人のエプロンのポケットから謎の道具を取り出して悪代官にぼったくりの値段で売りつけている。悪代官は道具を悪用して最後は御家人に捕まるっていうのが毎回のオチなのだが。


どこかの野良猫型ロボットと遠すぎる山の金さんを合わせた漫画なのだ。


一度会ってみたい気持ちが強かった。


「構いませんが、まず財政状況の改善では?」


「そこはちゃんと考えてあるわ」



ナチュラル王国。本来は馬車で三日かかるらしいが、近くまでは高速で飛んで行ったので片道一日かからずですんだ。


「姫様。何度か滅ぼした経緯があるゆえ、変装をした方がよろしいです」


オカリナはそう言うと、髪が水色に。服装は町娘。熊の刺繍がしてあるポーチまで手にしてある姿に変身した。


「どうやって変身するのよ?」


「姫様はできないのでこれをどうぞ」


そう言うとオカリナはポーチから、謎の目出し帽と衣装を取り出した。


着替えてから思った。


なんで銀行泥棒にいそうな格好なのよ。オカリナの装備はかわい熊のポーチ。私の装備は何故か血塗られた牛包丁に大きな風呂敷っておかしいでしょ。


「お似合いです姫様!」


「似合うわけないでしょ!」


通報されたら負けだと思っている私がそこにいた。


こうして二人は城門前にやってきた。


「旅人か? 証明できるものはあるか?」


兵士たちが言ってくる。


「はい。|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》の登録書です」


オカリナがカードを見せる。


「オカリナ=フラット。城で働いているのか。あそこにはあの悪魔姫(デビルプリンセス)」が復活したときく。命は大切にせよ」


「お心遣いありがとうございます」


頭を下げるオカリナ。


「あんたよく我慢できるわね。無礼な奴め。処刑するとか言うかと思ったわ」


私は小声で言うと、


「漫画のために我慢しております」


「次はお前だ。身分証はあるか?」


「はい。こちらに」


ならば私も我慢しよう。素直に身分証を渡す。


「ミナエ。城主。お姫様。まさに神と書いてあるぞ!」


私のは偽造してないんかい!


まぁオカリナも偽造はしていないんだが。


「まさかお前があの悪魔姫! このナチュラル王国を復興するたびに高笑いながら滅ぼしにきたという伝説のとんでもない頭のイかれたやつは!」


「今です姫様! 城の外壁を壁ドンです!」


言われて咄嗟に城壁を叩いてしまった。壁が崩れ、門兵たちが一斉にひれ伏した。砂煙の中、私は包丁を握ったまま立っていた。


「あわわわわ」


「次は顔を狙うぞ。もしくはこの包丁で刺す。嫌なら通せ。妾は国を滅ぼしにきたわけではない。買い物を楽しみにきただけじゃ」


「ははっ。お通り下さい! 命だけはお助け下さい!」


こうして私たちはナチュラル王国に無事入国することができた。


「姫様、見事な壁ドンでした」


ポーチからハンカチを取り出し涙ぐむオカリナ。


「使い方間違ってるからね?」


てか、包丁いつまで握ってたらいいの?


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