第三話
あれから全員集合まであっという間の日々だった。まぁ、二日ぐらいしか無いんだけど。
「ちょっと、説明の前に…息を整えさせて、ください」
現地集合と言う訳で既にあの石段を登ったのは良いものの、やはり息は切れてしまう。いや、和輝くんや篠崎先輩が息を切らさないのは分かるとして、先輩方も息を切らさないとか何事?!
「薫ちゃん、大丈夫?」
「はい、なんとか…」
一人ぜぇはぁしながら中腰で膝に手をつき息を整える私に、心配気に声を掛けてくれる美郷先輩。その言葉に頷きながら立ち上がる。
「……日野山はもう少し体力をつけろ。オカルト部は文化部だが、割りと体力勝負な所があるからな」
「そう言えば、アタシらが一年の時は心霊スポットがあるからって登山させられたね」
息を整え終えた私の耳に恐ろしい話が幾つも入ってきて絶句する。そんな恐ろしい所だったのね、オカルト部。
「ありがとうございます!取り敢えず落ち着きました。それでは説明に入ります」
境内の前の広い空間に六人顔を見合わせる。中々捕まらない篠崎先輩もちゃんと居てくれるのは有り難い。
まぁ、本所属なのはオカルト部なんだけど。
「えーでは、かごめかごめの説明を軽く省きながら進めますね。皆さんが小さい頃から知ってるだろうかごめかごめの派生版です」
説明を始めると先輩方全員が驚いた顔をする。どうやら、この間言ってた実行しようとして辞めたと言うかごめかごめとは別の物だったらしい。
「本来真ん中に入って目を伏せてる人の後ろに誰かが立ってそこに立った人物を当てる遊戯ですが、今回のは真ん中の人の背後には人は立ちません!背後に来るのは繋いだ手です。なのでメンバーの誰かの名前を当てるのでは無く、一人の名前を言い続けます…“さとしくん”と」
私の最後の言葉に呼応するようにザァと勢い良く風が吹いた。その風は何処か生暖かく湿った空気を纏っていた。
「さとしくんを言い当てると耳元で当たりとか正解とか言われるらしいです。そして、言われた人は願い事を何でも一つ叶えて貰えるという話です」
「……なんか、一気に胡散臭くなったな」
「何でも叶えてくれるって、本当かしら」
「無理難題でも叶えてくれるのかね」
「スケールがデッカいっすね?!」
「……試すだけ試すか」
矢継ぎ早に交わされる会話に耳を傾けつつ最後の部長の一言に全員頷いた。
高校生になってからかごめかごめをするとは思わなかったと、誰かからの零れた言葉を聞いたけれどオカルトなんてそんなものだよなとも思った。
まぁ、篠崎先輩とか部長辺りが言ったんだろうけども。
「でも、学園の裏に神社があってよかったです。これを行う際最良は神社とあったので」
その言葉に何か引っ掛かりを覚えたのか、部長は一瞬動きを止めて首を傾げる。傾げた首を戻してから大丈夫かとぼやく。
「では、日が暮れる前に始めちゃいましょう」
既に日が傾き夕陽が赤く染まる中、かごめかごめを始める。円陣を組み両隣の人と手を繫ぐために両手を出す。
「誰から行きますか?」
「俺から行こう」
部長が一番初めにと名乗りを上げてくれた。それに続いて次は誰、その次は誰かと順番を決めていく。順番も決まった事だしと部長を真ん中に入れて、再び円陣を組む。
こうして、儀式は始まった__。




