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境内に続く数段の階段に座る和輝くんの隣に腰を下ろした。
こんな話をするつもりは無かったのか、頬を掻きながら若干言い淀ませる様子が窺えた。このまま聞いても良いのかな。
「あ、えっと…言いづらいなら」
「いや!大丈夫!」
若干食い気味に言葉を紡がれて驚く。そんな驚く私に何が楽しいのかケラケラと笑い出した。
「これ話すの薫ちゃんが初めてだからちょっと緊張するだけ!さっきも言ったけど陸部辞めるってなった時にさ、今までずっと打ち込んでた部活が無くなって…あれ、俺に何の価値があんの?みたいな自問しちゃって」
はぁと盛大に溜息を吐いてから両手を後ろについて空を見上げる。
「なんか知らんけど、学校の帰り道にいつの間にか橋の上に立ってて……川を眺めちゃってたんだよね。普通に見てても危なすぎだろって今は思うけど、そん時は川の流れが不思議と心地良くて…」
無理に明るい声を出してるのが分かる。きっと私には分からない色んな葛藤がそこにはあるんだ。私は黙ったまま聞くことしか出来なかった。
「川を眺めながら意識が飛びそうになったんだよ」
「え?」
思わず出た言葉にハッとしたような表情をする和輝くんに直ぐさま笑顔を向けられる。
「そこで落ちちゃったとかじゃないから大丈夫。そん時にさ、真横に居た自分より年上のお姉さんに呼び止められたんだ。それだけなら、何も不思議じゃないじゃん?でも、騒ぎを聞きつけて色んな人達が集まってきてその時にはそのお姉さんが居なくなってて……周りにお姉さんの話を聞いても誰も見てないって言うんだ。しかも、俺が独りで踏み止まってたって何人も言ってきて…あれは誰だったんだろうって」
野次馬に紛れて姿を消したならまだ分かる。けれど、この話が不思議だと思う点は和輝くんが独りで居たこと。呼び止めたと言う女性は何処にも居ないと言うこと。
「それは、不思議だね。幻聴でないなら幽霊とかそれに類する何か?」
「そう!その可能性を俺も考えてオカルトに関わってたら、あのお姉さんの何かが分かるかもって思っちゃってさ。近場でオカルト部があるのこの学園だけだったからめちゃくちゃ勉強したんだよ」
私自身、部活重視で県内にある高校の説明会にあちこちに行った。一応愛好会とか同好会はあったけれど、部活としてあったのは此処だけだった。それもあって、何となく親近感が湧いてしまった。
「分かる!私もオカルト部が目的でここに来たから。まぁ、私は和輝くんみたいに何か目的があってじゃなくてオカルトが好きだから、って単純な理由だけど」
「それも立派な理由じゃん」
あははとお互い笑い合う。更に打ち解けるのに時間は掛からなかった。
パンパンとスカートに付いた埃を軽く払いながら立ち上がる。先程まで震えていた膝は元気を取り戻していた。
「そろそろ帰ろうか。見た感じかごめも出来そうなぐらい敷地はあるって分かったから」
その言葉にあぁと頷いて立ち上がる和輝くんは、一瞬キョトンとしていたから最初の目的忘れてたなって思ったけど口には出さなかった。
境内に一度だけお辞儀をして踵を返す。すると何かの呼び声が聞こえた気がして振り返る。でも、誰か居るはずも無く安堵の溜息を吐いた。
「あぁ!!!帰り道もあの階段…」
「頑張ろうな」
悪戯気なニヤニヤとした表情を隠さない和輝くんが恨めしい。
カァカァと寂しげに鳴く鴉の鳴き声を聞きながら昇り同様にぜぇはぁして階段を降りる。もう少し体力は付けておきたいと思ってしまった。




