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不思議そうにする先輩達を横目にぐんっと腕を思いきり引かれ、弾かれたように引かれた方へと顔を向ける。そうすると嬉々とした笑顔の和輝くんと目が合った。
「じゃあ、俺と薫ちゃんで神社の下見してきまーす!」
「え?!今から?!」
「あらぁ、良いじゃ無い?部室棟を出て直ぐの裏手にフェンスがあって、少し校門側に下ると施錠されてないドアがあるの。そこを出ると昇り階段があるから、割りと直ぐに神社に行けるわよ」
「あざーす!ほら、行こ!」
美郷先輩の説明を聞くな否や直ぐさま荷物を手に和輝くんは歩き出す。その手はしっかり掴まれたままなので、私には拒否権は無いようだ。まぁ、あってもしないけど。
「それじゃあ、先輩方お疲れさまです!行ってきます」
手を振る美郷先輩と本を読み出す部長、鞄から何かを取り出そうとするイチカ先輩、それぞれ好きなことをしだす先輩達に頭を下げて部室を後にした。
「えーと、校門側にだから…こっち?」
「多分?フェンスのドアってこう、テニスコートとかにありそうな勝手なイメージあるね」
「あー分かるかも。あ!あった、これこれ!」
美郷先輩の話の通りにあるドアを押しながら何でこんな所にドアがあるんだろうとも思った。普通なら学校を囲むフェンス、又は塀にはドアなんて侵入しやすい場所を作るんだろうか?これは、敢えて神社に行くために設置されてるようにも見えた。
裏山にある時点で何かしらの結びつきがある気もするけど…と、そこまで考えて私は目の前の状況に眉を顰めた。
「え、待って?今からこれを…登るの?」
「まぁ、軽く200段ぐらいは有りそうだな」
自分から裏山の神社でしましょう!と提案したけれど、まさか結構な段数の石段があるなんて想定外だった。私としては、もう少し少ないイメージだったのに。
「……はぁ、はぁ…私は、根っからの、文化部なんだって…」
ヘトヘトな私を置いて既に1番上に到達している和輝くんを恨めしく見る。その視線を意にも介さずもう少しだーガンバレーとずっと応援してくれている。これを明後日も登るのかと思うと少し諦めの気持ちになった。
「はぁ!!!到着!」
「薫ちゃん、偉いじゃん!やっぱり下見は大事だな」
ヘロヘロする私とは反対に太陽の笑顔を浮かべる和輝くん。この差はなんだろう。
「和輝くんって、まさか中学の時は運動部?」
「え?そうそう、陸上部だったんだよ」
「何でまた、オカルト部なんて来ちゃったのよ」
あははっと軽く笑うと何処か寂しそうに笑う和輝くん。何か変なこと言っちゃったのかなと心配になり口を開こうとした瞬間、和輝くんに先を越された。
「あ!!猫!!」
「え?」
境内を指差して走り出す和輝くんと一瞬後れを取る私。ザァと強めの風が吹いて目を瞑る。
「俺さ、陸部だったんだけど膝壊しちゃって…日常生活は出来る範囲だったんだけど速く走れなくなって部活辞めることにしたんだよ…そん時にちょっと不思議な体験をしたんだ」
ゆっくりと目を開けていくと、境内の階段に座りながら語り出す和輝くんが見えた。
何かに引き寄せられるように震えていた足が勝手に歩き出す。
「不思議な体験?」
「そう。まぁ、普通に考えたら白昼夢だったんだろうとかそんな話なんだけどさ」
「どんな話か教えて?」
自分とは異なったオカルト部へ入部を決めた同期に目を輝かせる。この好奇心は和輝くんにとっては不謹慎かも知れないけれど、知的好奇心はやはり隠せない。




