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オカルト部へ行けるという浮ついた気持ちと、あの先輩と対面するのかという重い足取りで部室棟へと向かった。
校舎から伸びる渡り廊下を真っ直ぐ進むと特別教室棟がある。そのまた向こう側に部室棟は並んでいた。
こうして見てみると神成学園は結構な敷地がある気がする。一時期は生徒の人数も多くマンモス学園などと揶揄されていたようだ。
入学式も終えて体験入部する人間以外は帰宅しても良いと言われていた。そのせいだろうか、一学年校舎の中は何処か静まっているようにも見えた。その静まる中に感じる肌寒さは何なんだろうか。
ぶるりと身震いを一つして特別教室を抜け部室棟を見上げる。
『(確実にあそこだ……)』
ぎゅうぎゅうのすし詰め状態の部室前の廊下。そこに真新しい制服を纏う女子生徒が大勢居た。
確実にオカルト部の部長を見たい、お近づきになりたいと言う人種のそれだ。私が向かう部活への意気込みとは違う。
やっと辿り着いた…と既にヘトヘトになりながら呟く。オカルト部の部室は部室棟の二階の真ん中辺りに位置していた。恐らくこんな事にもならない限り特段苦労もせずに向かえたはずなのだが、階段を上がりきる事さえ困難だった。それ程の人数が詰めかけていた。その女子生徒の間を縫って歩いて行く。時には押し返されたり足を踏まれたりと散々な目に遭いながらもやっとの思いで部室の表札が見えるところまで来た。女子生徒だけではなく、数人男子生徒も居たようだ。やはり、オカルトに興味がある人間も居るんだなと嬉しくなった。その人達も部長目当てとは考えたくなかった。
もっと前に行こうと足を向けショッピングモールでのセール品を買う奥様方よろしく、押し合いに巻き込まれながら勢い良く前につんのめるようにやっとの思いで部室の中へと転けそうになりながら入ると低く唸るような声が響いた。
『さっきからうるせぇ。オカルトに興味がねぇ奴らはさっさと帰れ。お前らの色恋だの何だのに俺を巻き込むな』
明らかに不機嫌MAXの部長と目が合う。私だけに言った訳でないのは明らかだが余りの不機嫌さに気圧されそうになりながらも、私は部活をしに来てる訳だからと踏み止まる。自分以外の黄色い声を上げていた女子生徒らは見た目とのギャップに何処か顔を青ざめさせていた。こう言ったら怒られそうだが、見た目はモデル並みに整っているから対応も優しいものだと勘違いしたのだろう。それとは真逆な上に口調もキツい。期待していた女子生徒らは蜘蛛の子を散らすようにパラパラと散っていく。
『期待外れ!』
『顔が良いからって調子乗ってる』
『もっと優しくしてくれても良いじゃん』
などとあちこちから文句が飛び交う。それを聞きながら私は部室の中で立ち尽くす。勝手に期待してたのはそっちだろって思ってしまった。此処までハッキリとした物言いが出来る先輩格好良いじゃん、としか思えなかった。
散々文句を垂れた女子生徒らが立ち去った後に部室の出入口で立つ生徒は、私を含めてもう一人の男子生徒だけだった。
『いやぁ、ビックリしたっすよ!先輩スッゴい人気なんすね!!あ、自分木ノ下和輝です!朝には入部届出してます』
あはは!と盛大に笑いながら名乗りを挙げる男子生徒は、先程までの状況を気にも留めていない様子だった。
『あ、えっと!私は日野山薫です。私も朝に入部届は出してるのでよろしくお願いします!』
軽く会釈をすると、隣であー!と指を差される。いや、人を指差しちゃ駄目でしょとツッコミかける。
『俺よりも早く入部届出してたせっかちさんって日野山ちゃんか!』
乾いた笑顔を浮かべながら軽く頷く。突然のちゃん付けに驚きながら距離感の近さを感じた。




